第11話 ギルドマスターとの会話

「じゃあ、そこのソファーにでも座ってくれんかの?」


「では、失礼して」


 すすめに従って俺たちはソファーに座った。それからダニエルは俺たちが持ってきた紹介状をこちらに見せて言った。


「ここに書かれていることは本当かの? 実力に関しては先ほどの件を見る限り信じれるんじゃが魔法や神話の時代の吸血鬼、異世界の方はちょっとのう.......」


 あー、なるほどね。その紹介状には俺たちがアリスを助けた件や俺たちが使う魔法について、つまりは俺たちのことが書かれていた。


「異世界というか俺の世界については証明のしようがないが.......。ティア、魔法とかの証明ってどうしたらできる?」


 俺は証明方法が何も思いつかず、隣にちょこんと座っている銀髪の吸血鬼に助けを求めた。


「こうすればいいわ」


 ティアはそう言いながら魔力を高めたのを感じた。


「ちょっ、おい!」


「大丈夫よ」


 俺は慌てて止めようとするがまったく気にもせずティアは魔法を使った。そこには魔法を使い姿を先ほどの少女の姿から俺と同じくらいの年齢まで大きくしたような銀髪の美女がいた。


「魔術でこんなことってできるかしら?」


 そう少し自慢げに言うティア。俺はこの部屋を破壊して見せるんじゃないかと思ってひやひやしたよ。


「自分の姿だけでなく服も含めての変成、しかも無詠唱で......。なるほど、信じてもいいようじゃな」


 そう言いながら安心ともほっとしたような表情を見せるダニエル。ティアが魔力高めてた時、表情引きつっていたもんね。わかるよ。


「普段からその格好でいればいいじゃないか?」


 俺は可愛らしい少女から少し大人な雰囲気の美女に変化したティアにそう言う。


「いやよ。疲れるもの」


 そう言いながらいつもの少女姿に戻るティア。残念。


「まあ、なんにせよ君たちのことは理解したのじゃ。なるべく魔法は隠すことをお勧めするがな」


「その辺はまあ、わかっているよ」


 俺はあまり目立ちたくない。そのうえでそこそこ不自由なく自由に旅をしたいと考えている。ティアはどうか知らないが。


「では、話は終わりじゃ。登録は終わっているはずじゃから受付でギルドカードをもらっとくれ。何かほかに聞きたいことはあるかの?」


「あ、じゃあ一つだけ。魔獣の素材はどこに出せばいい?」


 俺は目的の一つだった資金確保のために必要なことを聞いた。


「それは受付の奥にあるカウンターに居る者に言ってくれればよい。そこで対応しておる」


「わかった。ありがとう」


 そう言ってから俺たちはギルドマスターの部屋を後にした。










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「なんだったのじゃ、あの者たちの魔力......」


 リョウとティアの二人が部屋を出て行ったあと一人自分の部屋にいたダニエルはそう呟く。


「おおよそ普通の魔力量じゃないのじゃ。魔術メインの戦闘職のものでもあそこまではないのじゃ......」


(それにティアという吸血鬼の少女が魔法を使おうとしたときに止めようとしたリョウの高めた魔力もおかしかったのじゃ......)


 先ほどのことを思い出したのか小さく身震いをしたダニエルは


「敵にならないことだけを祈ろう」


 そう呟いてから仕事に戻ったのであった。












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「とりあえずギルドカードもらってから魔獣素材売るか。それに小腹がすいた。なあ、ティア」


 ギルドマスターの部屋を出た俺たちは受付に向かいながら話す。


「そうね。お腹がすいたわ。早く終わらせてご飯を食べましょう。あなたの血でもいいわよ」


「それはまたこんどな」


 血をねだってきたティアを軽くあしらいながら受付につく。ティアが「むぅ」っとむくれているが気にしない。


「ミーナさん。ギルドカードって出来てるか?」


「はい。できてますよ。こちらです。それに血を一滴たらしてください。あと細かい説明とか聞かれていきます?」


 ミーナがこちらにカードと針を渡しながらそう聞いてきた。


「もちろん。聞かないやつっているのか?」


 カードを受け取りそう聞き返す俺。


「結構、乱暴な方や適当な方が多いですからね」


 苦笑しながらそういうミーナ。苦労してたりもするんだろうなぁ。


「こほん。では説明しますね。そちらのカードに血をたらしてもらうことによって、そのカードはあなたの血に含まれている魔力を読み取り登録してあなた方固有のものになります。とりあえずカードについてはそんな感じですかね」


「なるほど。ところでカードに書かれているランクがBになっているんだが間違いか?」


 俺はカードに血をたらし浮かび上がってきた文字を読んでそう聞いた。


「いえ、間違いではないですよ。まずランクにはEから始まり最上位はSとなります。あなたは先ほどCランクの方を軽くあしらっておりますし、何より紹介状にいろいろ書かれていたらしいですからね。各支部のギルドマスターの権力で上げれる最上位のランクがBなんですよ。それでBランクなのです」


「なるほど......」


 俺はいきなりBランクになっていることにとりあえずは納得した。どうやらティアもBランクになっているようだし。まあいいか。


「ほかになにかルールってないか?」


「そうですねぇ。基本的には人に迷惑をかけるなってことぐらいですかねぇ。細かく決めてもいちいちそれを読んだり守ったりする方なんてほとんどいませんし」


 そう言いながら苦笑するミーナ。


 適当だなぁ。しかもそれだけすら守れないような奴にしょっぱなから会ってしまったし。それを思い出し俺も苦笑する。


「わかったよ。ありがとう」


「はい。では、登録に関しては以上になります。もし、依頼を受注される場合はあちらにある掲示板に貼ってある依頼書をこちらの受付まで持ってきてください。討伐・採取系依頼達成の報告や魔獣素材、採取した薬草などの買取は奥のカウンターの方までお願いしますね」


 そう言いながらミーナはにっこりと花が咲くような笑顔を見せる。俺はそれを見てほっこりしながら


「じゃあ、さっそく魔獣素材を出してくるよ。じゃあね」


「はい。またよろしくお願いします」


 こうして俺たちは登録を終えて、魔獣素材を買い取ってもらうため奥のカウンターに向かったのだった。

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