第2話 挨拶回り②
王城を出た俺は、その足でそのままアリスが王都で過ごしている屋敷に向かった。
「お待たせしました、リョウ様」
俺はアリスの屋敷に着き、客間で少し待っていると少し急いだ様子でアリスが入ってきてそう言った。
「いや、全然待ってないから大丈夫だよ。それに急に来たのは俺だしね」
俺はアリスを落ち着かせるようにそう言った。
「それで本日はどうされたのですか?」
少し落ち着いてきたアリスが俺の方を見てそう言う。
「ああ。そろそろ旅に出ようと思ってね」
「王都からいなくなっちゃうんですか?」
俺が話し始めると、アリスは驚いたように目を見開く。
「お、おう。まあ、転移でいつでも戻ってこれるしね」
「そうでしたね」
アリスは先ほど驚いたのが恥ずかしくなったのか、頬を少し染めてそう言った。
「ああ、あとついでにこれも渡しておこうと思ってね」
俺はそう言ってルシルにも渡したスマホもどきをアリスに渡す。
「これは?」
「これは魔力を込めたら俺に連絡できるようになってる道具だよ。もし、緊急事態とかになったらそれで連絡してくれれば転移で駆けつけるから」
「ありがとうございます」
俺の説明を聞いたアリスは嬉しそうにそう言った。
「まあ、今日の用事はそんな感じかな。とりあえず王都を離れるのと、それを渡そうと思ってね」
「わかりました。わざわざ来ていただいてありがとうございます」
「俺がしたかっただけだしね。気にしないで」
俺はアリスに笑いかけてそう言った。
「じゃあ、俺はこの辺で帰るね」
「はい。また会いに来てくださいね」
「ああ」
俺はこうしてアリスの屋敷から出たのだった。
アリスの屋敷から出た俺はそのまま冒険者ギルドに向かう。
「さって。ギルドマスターさんはいるかね」
俺はそう呟きながら受付に向かう。
「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか?」
受付の人が笑顔でそう聞いてくる。
「えっと、ギルドマスターさんっているかな?」
俺はそう質問するが受付の人は困ったような表情をする。
「すみませんが、どんなご用件でしょうか?」
そりゃそうだよな。いきなり来てここのトップに会わせろって言ってたら怪しいよな。
「んー。王都を出るから挨拶に来ただけなんだけどな。あ、これ身分証とギルドカード」
俺はそう言って国王にもらった身分証と冒険者ギルドのカードを見せる。
「!?」
受付の人は驚いたような表情をする。
「王城の方が何の御用ですか?」
警戒されちゃった。要件はさっき言ったんだけどなぁ。めんどくさくなってきた。
「あー、直接話すからギルドマスターに聞いてみてくれないかな? 多分リョウが来たって言ってくれればわかると思うから」
俺がそう言うと受付の人は渋々であるが奥の方に向かっていった。しかし俺の周りにはいつの間にかギャラリーが集まっていて注目されているようだった。
「お前みたいなのがギルドマスターに会えるわけないだろう!」
俺が後ろを見渡しているとそんな野次が飛んできた。
「はぁ」
俺はそれを聞いてため息をついた。
「別に用事があっただけですけど何か問題がありましたかね?」
俺は無視せずにそう聞いていく。
「ああ?」
野次を飛ばした男は俺が返事をするとは思っていなかったらしくわかりやすい威圧をしてくる。うわぁ、いるよなこういうやつ。めっちゃめんどくさい。
「お前みたいなひょろい奴がギルドマスターに会えるわけないだろうって言ったんだ。文句あるか?」
「別にギルドマスターに会うのが冒険者だけとは限らないだろう? だったらひょろさとか関係ないと思うが?」
俺はめんどくさくなってそう答える。
「口答えすんなよ」
そう言いながら男は殴り掛かってくる。沸点低いなぁ。あと、ワンパターン。どっかでこの流れ見たぞ。
「はぁ」
俺は再度ため息をついて殴り掛かって来た男を避けてから電撃を放つ。すると一瞬痙攣したのち、男はそのまま気絶した。
「弱すぎるんだよなぁ。なんで避けられることを想定して動かないんだ?」
俺はそう呟いた。
「で? 他に文句がある方はいますか?」
俺はギャラリーにそう問いかける。すると、さっきの男の仲間なのか似たような格好の男たちが三人ほど出てきた。
「おい、お前。何をした!」
「しかも見えてないのかよ」
俺は男の質問に力が抜ける思いだった。
「何を黙ってる!」
俺に問い詰める男がいい加減面倒になって来たな。そんなことを考えていると奥から人が出てくる気配がした。
「何をしている!!」
やっとギルドマスターさん登場か。遅いんだよなぁ。どうしてこうなった。
「ぎ、ギルドマスター」
絡んできていた男たちはギルドマスターの登場にうろたえている。
「絡まれたから気絶させたんですよ。殺してませんし問題ないですよね?」
俺はギルドマスターのミリエラに端的に説明した。
「リョウに絡んだだと? そんな命知らずがいたのか?」
そんなこと言わないでくれよ。俺はティアと違うんだ。
「俺をティアと勘違いしてないか? そんなすぐに殺したりしないぞ? 平和主義者だ」
俺は不名誉な言様に抗議する。しかしミリエラからはすさまじいジト目を頂戴した。解せぬ。
「まあ、いい。用事があったんだろう? ついて来い。あ、そこで伸びてる奴と絡んだ奴は反省しとけよ?」
ミリエラはそう言い残してさっさと奥の部屋に戻ろうとした。俺はそれに何も言わずについていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます