第2話 次の行き先は
「潰す、ねぇ」
ウカの言葉に俺はそう呟いた。
「なんですか?」
「いや、具体的にはどうやって?」
俺はウカにそう聞いた。
「そうですね……」
そう言って少し考え込むように黙るウカ。その隣では部下のキコさんがニコニコとして立っている。
「とりあえず私の商会からは食料関係を止めます。あそこは私たちからの食糧輸入に頼っているところがありますから。それにアデオナ王国で一番食料の取引をしているのは私たちですし」
ウカはそう説明する。
「なるほど。向こうの食糧自給率は悪いのか?」
「一般的な平民は自給自足ですよ。まあ、税として持っていかれる量が多いので苦しそうですが。貴族や王族は豪遊好きなので食料でも高級品ばかり買う傾向が強いですね。まずはそれを止めます」
「それだけだと向こうで何とかできないか?」
「私たちが卸す農作物は獣人の技術でしか作れないものも多いんですよ」
ウカはそう言って自慢げに笑った。
「なるほどな。まあ、そこらへんは好きにしていいが、俺が付いていく意味はあるのか?」
「前に少し見に行ったことがあるんですが、遺跡みたいなのもあったんですよ。観光にはいいかと思って」
「ほう。遺跡ね」
遺跡には少し惹かれるものがある。観光としては行ってみてもいいかもしれない。それに遺跡だったら貴族に絡まれる可能性も少なくなりそうだ。
「とりあえず俺はいいんだがティアたちがどうしたいかわからないから保留で」
「そうですか」
ウカは少し残念そうにそう言った。
「それにウカもすぐに出るわけじゃないだろ?」
「それはそうですが」
さらにしょぼんとした様子を見せるウカ。
「どれくらいで出れそうなんだ?」
俺はそんなウカの様子に苦笑しながら尋ねる。
「一週間で準備できます」
今度はウカではなくキコから返事が返って来た。
「じゃあ、ティアたちと少し相談してくる。それに王都にいるウルラ達にもお願いしたいことがあったからな。ついでに国王さんたちにも情報がないか聞いてくるよ」
「わかりました。よろしくお願いします」
ウカはそう言って俺を見送った。俺はそのままその場で転移の魔法を使う。その瞬間ちらっと見えたキコが驚いているのが少し面白かった。
王都の拠点である家に転移した俺はティアやリース、それにラピスと保護した少女たちである吸血鬼の少女、ウルラ、犬耳の姉妹でマイアとエレクトラ、猫耳の少女、スピカ、エルフの少女でリグリアを集めた。
「みんな集めてどうしたの?」
ティアがそう聞いてくる。
「ウカからなこんな話を聞いたんだ―――」
俺はウカとした会話をティアたちに話す。
「それで一緒にアデオナ王国に行かないかってウカが言っててな。遺跡があるみたいだし観光がてらどうだ? って話だ」
「それは次の目的地にってことよね?」
「そうだな」
「私は構わないけどみんな連れて行くのかしら?」
ティアがみんなを見ながらそう言った。
「そこは考えてある。移動中とかは全員で移動するのはちょっと人数が多いから、日替わりで俺が転移で迎えに行くよ。遺跡の時は危険がなければみんなくればいい」
「都市部はどうするの?」
「貴族に絡まれたければ来ていいぞ?」
俺はそう言って苦笑気味にウルラ達に視線を向けた。みんな普通に可愛いと思う見た目をしている。貴族に見られたら絡まれるに違いない。俺の視線を受けたウルラ達はそろって首を横に振った。
「まあ、そうだよな」
俺は納得した様に頷いた。
「あ、あとここに残る面子に頼みたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
俺がそう言うとウルラ達は嬉しそうな顔をして返事をした。普段、あんまり便利に使わないようにしてるからか、この子たちは俺が頼ると嬉しそうにする。夕食の準備とかのちょっとしたことでも喜んでやってくれるのだ。
「商業国内にも拠点を作ったからそこの管理も頼みたいんだ。あんまり長居はしたくない国だろうから、楽に移動できるような方法は考えておくよ」
俺がそう言うとウルラ達は頷いてくれた。
「とりあえず一週間ほど準備する時間はある。その間に準備して俺たちは観光を楽しむとしよう。ウカはまあ。仕事だけどな」
俺はそう言って話を締めくくる。それに対してみんなが頷くと俺は立ち上がった。
「ウカのところに行くのかしら?」
「いいや、とりあえず王城。国王さんになんか情報がないか聞いてくる」
俺に続いて立ち上がりかけたティアの質問に俺が答えると「そう」と短く返事をして、興味をなくしたようなそぶりを見せて座った。俺はティアの様子に首をかしげる。
「どうした?」
「なんでもないわ」
ティアはそう言って側にいたラピスを構いだした。構われたラピスは嬉しそうな顔をしてティアに抱き着く。
「何かあるんだったら言ってくれよ?」
「ええ」
そう返事したティアはいつも通りに戻っていた。何だったんだろう。
「王城に行くのでしょう? 私はみんなを見ているわ。行ってらっしゃい」
そう言ったティアやみんなに見送られて、俺は王城に向かって移動するのだった。
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