第13話 ティアの説明

「!?」


 王城の中庭に転移した俺達はその場にたまたまいた庭師の人に驚かれてしまった。


「あ、驚かせちゃいますいたね。ごめんなさい」


「い、いえ。リョウ様ですよね?」


 向こうは俺のこと知ってるらしい。よかった。警備の人呼ばれそうにならなくて。


「はい。そうですよ」


「それにしても、驚きましたよ。何もないところから急に現れるなんて」


「国王さんには秘密にしといてね」


「かしこまりました」


 庭師の人が頷いたのを見た俺は、ティアとリースを連れて国王さんたちがいる部屋に向かったのだった。


 国王さんたちのいる部屋に着いた俺たちは扉をノックして返事を待つ。


「入れ」


 国王さんの返事を聞いて俺たちは部屋に入った。


「戻ったぞ」


「おお、リョウか」


「おかえりなさい、リョウ様」


 国王さんはこちらを見てそう言った。ルシルもいたようだ。


「言われたとおりに戻ったぞ」


「そのようだな。ティアとリースも久しぶりだな?」


 国王さんは二人にも声をかけた。


「そうみたいね」


 ティアはそっけなく返事した。リースは軽く会釈するだけにとどめていた。


「で、話はなんか進んだのか?」


 俺はティアたちのそっけない態度をごまかすように話を進めた。


「おお、そうだったな。こちらで今できる限りの情報を集めている。今、集まっている情報だけでもデルマ侯爵は黒だな。脱税やその他もいろいろやっているみたいだ」


「なんで今まで気づいてなかったんだよ……」


 俺は呆れた心境でそう言葉を漏らす。


「面目ない」


 国王もその辺は自覚があったのか申し訳なさそうに目をそらしながらそう言った。


「まあ、そこは今はいいや。で、どうするんだ?」


「とりあえず別件で視察に入る。それから芋づる式にいろいろ見つけて行こうと思う」


「なるほどね」


 まずは確保してからゆっくりといろいろ調べていくって感じかな。


「で、俺たちはどうしたらいい?」


「リョウたちにはデルマ侯爵が抵抗した際の対抗要員で騎士たちについていってもらいたい」


「ほーん」


 適当に返事をしてティアを見る。ティアは何かを考えているようだ。


「ティア。なんか気になることでもあったか?」


 俺はティアにそう問いかける。


「少し思ったことがあるんだけど、リョウは優しすぎるから私が言うわね」


「お、おう」


 何を言う気だろう。


「その仕事は騎士たちだけじゃダメなのかしら?」


「そうだな。できないこともない。しかし保険は必要だ」


「そう、じゃあ次の質問ね。私たちを使うことの意味が分かってるのかしら?」


「意味、だと? リョウやティアが強いのは知ってるが?」


「わかってないのね。どうしようかしら」


 何が言いたいのか俺もわからずティアを見る。


「リョウ、ちょっとこっち来なさい。あとそっちの王女」


「私ですか?」


 ティアに呼ばれて俺は近づいていく。ルシルも首をかしげながら近づいてきた。ティアは近づいた俺たちをつかむと転移を使って俺たちの自宅に移動した。


「どうした急に」


 俺はティアにそう質問する。


「王女。あなたは私たちのこと何も国王に言ってないの?」


「はい。転移はティア様やリョウ様がポンポンと使ってらっしゃるので知ってますが詳しいことは何も。と言いますか私も知りませんし」


 そう言えば詳しくは教えてなかったな。特にティアについてとか。


「この際全部説明しちゃうか? いろいろめんどくさいだろ」


 俺はティアにそう提案する。


「そうね。その方がいいかしらね」


 ティアも賛成のようだ。


「じゃあ、もう一回国王のところに戻るぞ」


 俺はそう言って転移を使って国王さんのところに戻る。


「どこに行ってたんだ?」


 戻った早々に国王にそう聞かれる。


「ちょっと自宅まで。それと今から言うことをよく聞いてくれよ?」


「わかった」


「まず、俺がここじゃない世界から来たことは知ってるな?」


「それはギースから聞いておる」


「ティアについては?」


「吸血鬼だということぐらいかの」


「そうか。じゃあ、そっからだな。ティア。自分で説明するか?」


「そうね」


 そう言ってティアはティア自身のことを説明し始める。ティアが始祖の吸血鬼であることや神殺しであること。そして過去の戦争など。ティア自身の出自についての説明をしていった。国王さんは説明を聞いていくうちにだんだんと顔色が悪くなっていく。ルシルは思い当たることがあったのか納得した表情をしていた。


「ふう。こんなところかしら。あら?」


 すべてを説明し終えたティアは満足そうにそう言った。国王さん土下座してるけど。


「数々のご無礼、知らなかったとは言え申し訳ありませんでした」


 国王さんが土下座の状態でそう言った。国王がそんなことしていいのか?


「別に謝る必要はないわよ。私だって説明してなかったし。とりあえず顔をあげたら?」


 ティアはそう国王に言う。国王はびくびくしながらも顔をあげる。


「だから私たちを使う意味が分かってるかってお聞きになったんですね」


 国王と一緒にティアの説明を聞いていたルシルも納得した様にそう言った。


「まあ、今回も一応仕事はやるから。報酬さえしっかりしてくれれば」


 俺はとりなすように国王にそう言った。


「あ、ありがとう。リョウ」


 ほっとした様に国王さんはそう言ってこちらを見た。


「それと態度とかもティアに対しても普段通りでいいと思うぞ。仕事を頼みたいときに気を付けてさえしてくれれば」


 加えて俺はそう言った。


「わかった。ただ、今回は頼む」


「了解」


 国王は落ち着いてきたのかそう言った。俺はそれに了解の返事を返し、詳しく作戦を立てていくのだった。

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