第6話 作製
ルシルとのお茶会を終えて王城を出た俺は、転移して商業国のウカのところに戻る。
「戻ったぞ」
俺はウカのいる部屋に入ってそう声をかける。
「あ、リョウさん。おかえりなさい。どうでした?」
俺に気付いたウカは少し疲れたような様子を見せながらも、嬉しそうに近寄ってきてそう言った。俺はウカに国王さんたちから聞いた、アデオナ王国の話を聞かせる。
「そうですか。やっぱり噂の通り、ろくでもない国の様ですね」
ウカは難しい顔をしながらそう言った。それからウカの部下であるキコを呼んで追加情報を持ってこさせる。そっちでも情報を集めていたようだ。
そうしてウカ達の情報と俺が聞いてきた情報のすり合わせを行う。内容はお互いに調べた限り、大きく差は内容だった。
「じゃあ、商人たちの噂の中でもそんな話ばっかりだったんだな」
俺は呆れを込めたため息を吐く。それに続いてウカとキコもため息を吐いた。
「酷いものですね」
「ほんとですよ。リョウさんはほかに聞いてませんか?」
キコが感想をつぶやき、ウカは話が尽きたのかそう聞いてきた。
「ないと思う。アデオナ王国はディール王国とはそれほど付き合いが内容だったしな」
俺はほかに情報がないか、思い出しながらそう答えた。俺の返事を聞いたウカが仕事に戻りながらもこちらを見た。
「そうですか。そう言えばリョウさん」
「ん? なんだ?」
「私、しばらくここで仕事を片付けますので一週間後に迎えに来てくれませんか?」
「つまり、準備も含めて一週間ここで過ごすのか?」
「はい」
「わかった」
俺はウカにそう返事をすると、立ち上がる。
「じゃあ、一週間後にな。ああ、俺の拠点の家は来てくれてもいいぞ? 俺もちょくちょく用事で来るしな」
「わかりました」
俺の言葉に少しうれしそうな反応をするウカ。そんなウカに見送られて俺はウカのところを後にするのだった。
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翌日。俺はまた一人で商業国の拠点の家に来ていた。
「さて、はじめるか」
俺はそう言って独りでに作業を始める。収納の魔法の中から魔力をため込むことのできる鉱石や素材を取り出し、次々と魔法を込めて思いついたものを作っていく。
今回作り出そうとしているのは、ディール王国の拠点の家と商業国の拠点を行き来しやすいように転移できるような魔道具を作ろうと考えていた。それに加えて連絡を取りやすいようにと、スマホもどきも量産する予定である。
そうして、まず簡単に転移の魔法を発動できるようにしたものを作る。しかし、とりあえずで作ったために魔力の消費が大きく、俺とティアくらいしか使えなさそうなものができた。
「これじゃ、だめだなぁ」
俺はそう呟いて改良の余地がないかを実験し、試していく。大型化してみたり、魔力の通りをよくしてみたり、ほかにも自然の魔力を集められるようにしたりもして、実験を繰り返した。
最終的にできたのが、自然の魔力をバッテリーのように貯める仕組みと、それを使って転移の魔法を使う魔道具だった。その魔道具も、転移する場所を一か所に制限し、さらに魔力消費を抑えたものが完成した。
「これだったらウルラ達でも使えるだろう」
俺はそう独り言をつぶやいた。しかし、直後俺以外の声が聞こえる。
「何を作っているんです?」
「!?」
俺は作業に集中しており、周りの気配に全く気を配っていなかったため、驚いて固まる。これが敵意や殺意を持った相手なら気付く自身もあったのだが、そのような感情を一切持たない相手だったために気付くのが遅れたのだ。
「ふふっ、リョウさんでもそんな顔するんですねえ」
そんな風に悪戯っぽく笑って言ったのはウカだった。しかし先ほどまで仕事をしていたのか少し疲れた様子だ。
「来てたのか」
「はい、少し休憩です。それで、いるとは思ってなかったんですけど、覗いてみたら作業してたので、興味本位で覗いてみたんです」
ウカはそう言って笑う。
「そうだな。説明してやるから少し休んだらどうだ? もしかしなくても徹夜だろう?」
俺はウカにそう言って休憩するように促す。目に見えてわかる疲労度だ。
「そうですね。少し休んでおきます。そのあとで教えてくださいね」
ウカはそう言ってウカ用に割り当てた部屋に戻っていった。俺はそこでここに来てからはじめて外を見ておおよその時間を知る。もうお昼近くであった。
俺はキッチンに向かい自分とウカ用に昼食を作ると、ウカにわかるようにダイニングに当たる部屋のテーブルに並べておく。
「ウカは……寝てるな」
俺は気配を探り、ウカが身じろぎもせずに寝ているのを確認すると、そのまま自分の分だけ先に食べ作業していた部屋に戻った。再びウカが作業している部屋を訪れたのは数時間後だった。
「よく眠れたか?」
俺はまだ少し眠そうに眼をこすってやってきたウカにそう声をかけた。
「はい。少しまだ眠いですけど」
ウカは苦笑しながらそう言った。
「ダイニングにウカの飯を準備しているけど食べるか?」
「いいんですか?」
「ああ、もちろん」
俺の言葉にウカの尻尾が嬉しそうにパタパタと振られている。わかりやすいものだ。俺はそんな様子のウカに微笑ましいものを見るような感覚を覚え、和むのだった。
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