第15話 家宅捜査 ~ティアの場合①
訓練場に着いた俺たちは騎士たちが集まっているところに近づいていった。
「お前さんがリョウか?」
そこで騎士の一人に声をかけられた。ふむ。なかなか強そうな見た目だ。
「そうだ。よろしくな」
俺はそれに簡潔に答える。俺の返答を聞いた騎士はこちらを見てにやりと笑い握手のためか手を差し出してきた。それに答えるように俺も手を差し出してにやりと笑った。
「よろしくな。一応俺がこの集団の隊長をしているウォリックだ」
声をかけてきた騎士が自己紹介をしてくれる。なるほど、隊長さんだったか。じゃあ、さっそく話を詰めるか。
「国王さんに二十人ほど連れてけって言われてんだけどそろってるか?」
俺はウォリックの後ろにそろっている騎士たちを見ながらそう聞いた。
「おう。準備は完了してるぜ。王都の方はあの嬢ちゃんたちに任せればいいのか?」
ウォリックも快活に答えながら先に来ていたティアたちを見ながらそう聞いてきた。
「ああ。どちらかと言えば王都が壊されないかの心配をした方がいいくらいには大丈夫だ」
「それは大丈夫って言わねぇよ」
俺の答えに苦笑いをしながら返事をするウォリック。諦めろ。
「ティア、そっちは任せるぞ」
「わかったわ」
「あと、暴れてもいいけどやりすぎるなよ?」
「……わかったわ?」
「なんで疑問形なんだよ……」
あとその間が怖いよ。そのやり取りを見ていたウォリックも苦笑いだ。
「じゃ、行くか。ウォリック、俺についてくる予定の騎士たちを集めてくれ」
「了解した」
返事をしてからのウォリックの行動はさすがというべきか早かった。ウォリックを含めての二十人は素早く俺のそばに集まる。訓練された者たちって感じである種のカッコよさがあった。
「じゃあ、飛ぶぞ」
俺はそう宣言してから転移を使って商業国に向かう途中にあった寂れた街に向かったのであった。
______________________________________________________________
<ティア視点>
リョウたちが訓練場から転移してそこにはティアとリース、加えて十人の騎士たちが残っていた。
「さて、あなたたちは私たちと一緒に王都の……誰だっけ?」
興味ないから忘れちゃったわ。
「何とか侯爵!」
「そう、それ。その何とか侯爵の家に向かう人たちでいいのよね?」
リースのおかげで思い出せたわ。
「はい……」
騎士の人の歯切れが悪い気がする。何故かしら。
「場所は分かる?」
「もちろんです」
「そ、じゃあ、案内お願いね」
「わかりました」
どこか淡々とした騎士の返事を聞き、十人の騎士達に続いて行く。訓練場を出て、しばらくついていくと結構な大きさの屋敷の前に着いた。今はそれが見えるそこから離れたところから様子をうかがっている。
「ここ?」
「はい、ここがデルマ侯爵の屋敷になります」
ふーん。どうしようかしら。リースに見てきてもらおうかしら。
「リース。中にいる人に見つからないように入って様子を見てきてもらえる?」
「わかったの!」
リースは私のお願いに元気に答えると姿を消した。最近のリースは私でも頑張らないとわからないくらい姿や気配を消すのがうまくなった。リースの動きを見ていた騎士たちが驚いている。
「ティア殿、リース殿はどちらに?」
騎士の一人がそう聞いてくる。
「屋敷の中の偵察をお願いしたわ」
「な、なるほど」
何がそんなに疑問なのかしら。
「見てきたのー!」
「「「!?」」」
リースが戻ってきて騎士の後ろから元気に声を出した。思ってもいなかったところから声がかかったみたいに騎士たちが驚いている。
「中はどうだった?」
「えっとねー、メイドさんと執事さんがたくさんいたの! あと、剣を持ったおじさんたちがたくさんいたの。あと金ぴかのお兄ちゃんがいたの」
リースの報告を聞いて考える。
「メイドと執事は考えなくてもいいかしらね。剣を持ったおじさんは護衛とか警備っぽいわね。金ぴかのお兄ちゃんがわからないわ」
「おそらくデルマ侯爵家の嫡男かと」
私が呟いていると騎士がそう捕捉してくれた。なるほど。
「その金ぴかも捕まえる予定に入ってるかしら?」
「はい、入ってます」
「わかったわ」
私は簡潔に返事をして屋敷の門の方に近づいていく。
「ティア殿? なにを?」
私の動きの意味が分からないのか騎士の一人が聞いてくる。
「何ようだ?」
門のところにいた門番の人が誰何してくる。そして私の後ろについてきている騎士を見て訝しんだ表情をする。そして態度を改めて再度問い直してきた。
「国王様の騎士様たちがおそろいで何の御用でしょうか?」
「デルマ侯爵家には王家に対する反逆の疑いがかけられている。捜査に応じてもらいたい」
「なっ!?」
騎士がそう答えると門番は驚いたような声を上げた。こういうのって回りくどくて面倒だわ。リョウに許可をもらってるしさっさと終わらせてもいいかしら。
「何事だ?」
奥の方から警備をしていた男達がが様子を見に来たようだ。警備の男は騎士たちを見ると状況を見て理解したのか剣を抜いた。
「何のつもりだ?」
剣を向けられた騎士がそう問いかける。
「なに、侵入しようとしている賊に対処しようとしているだけだが?」
「侯爵には反逆の疑いがかかっている。それでもか?」
「俺たちは侯爵の許可がないものを入れるなと言われているんでね」
「そうか」
その会話をきっかけに騎士たちも剣を抜いた。何なのかしらこの人たちは。めんどくさくて仕方がないわ。
「あら? もう、攻撃してもいいのかしら?」
私はそう言って警備の男の一人の頭を魔法を使って吹き飛ばした。
「「「なっ!!??」」」
警備の男たちと騎士たちがそろって驚きの声を上げた。
「さて、入りましょうか」
「お邪魔しまーす!」
私とリースはそう言ってついでに門を吹き飛ばし中に入ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます