第30話 手がかり
倉庫にいたゴーストになりかけた残留思念を浄化した俺たちは、倉庫を出た後リースの案内のもと教えてもらった拠点に向かっているのだった。
「......リョウお兄ちゃん。ここだと思う」
そう言ったリースが案内してくれたのは焼け跡が残る家の残骸だった。
「まじかよ」
焼け跡を見て俺はつぶやいた。
「焼けちゃっているわね」
そう言いながらティアは焼け跡の中心の方まで向かっていった。そしてきょろきょろとすると
「ちょっとリョウ。こっちに来て」
と、俺を呼んだ。
「何かあったか?」
俺はティアの方に向かいながらそう問いかける。
「ここをめくってもらえないかしら」
そう言ってティアが指をさしたのは他のがれきに比べて比較的大きながれきだった。俺はティアに言われたとおりにがれきをどける。その下には焼けた死体が出てきたのだった。
「これは......どういうことだ?」
その死体はただの焼死体ではなく、首がなかったのだ。
「この人昨日私たちがあの倉庫で闘った男ね」
ティアが断言するように言う。
「どうしてそう思うんだ?」
「少しだけ残っている魔力が昨日のあの男のものと同じだもの。それに昨日言ったでしょう。覚えたって」
ティアはそんなことまでわかるのか。俺は関心と納得の表情を浮かべてティアを見た。そのあとほかに何か手がかりがないか探していく。
「何もないなぁ」
俺達は手がかりが他にないか調べるために焼け跡を調べ始めたのだった。
しばらく俺たちは焼け跡を調べた後、ひとまず王城に報告に行くことにした。
「結局、あの男が死んでいること以外わからなかったな」
俺は王城に向かう道すがらティアに話しかけた。リースは俺がおんぶして寝ている。
「そうね。まあ、このことをこの国の国王に話して細かい調査は国に任せたらいいんじゃない?」
ティアはこちらに向いてそう答える。
「それよりもいっそのこと人族の始祖が作った国......帝国だったかしら? を先につぶして来たらいいんじゃない?」
「なんでティアはそんなに物騒なんだ?」
俺はティアの言った解決策というかごり押し策を聞いてあきれた声を出す。
「だってそろそろ面倒なんですもの」
気持ちはわかるし、それもそうなんだが。
「ま、その辺の判断も含めて国に任せよう。ひとまず拠点にしていた場所はわかったんだ......焼けてなくなってたけど。だから近隣に聞き込みでもしてくれたら他に何かわかるかもしれないしな」
俺は努めて楽観的な声を出して言ったのだった。
しばらく会話しながら歩いて王城まであと十分くらいで到着しそうな距離に着いた頃、知っているような気配が近づいてきているように感じた。
「ん?」
俺は近づいている気配の方を振り向いた。そこにはいつかの......確かアリスといたメイドさんがいたのだった。
「確かカノンさんだっけ? アリスのメイドさんがこんなところにどうした?」
俺はこちらの目の前まで来たメイドさんに声をかけた。
「ここにいましたか。アリス様に言われてあなた方を探していたんです。私は嫌でしたが」
「さいですか......」
ほんと俺はこの人に嫌われているな。
「で、何の用なんだ?」
「アリス様と王女殿下が相談したいことがあるそうなのでお時間をいただきたいのです。よろしいですか? よろしですよね? よろしいって言いなさい」
徐々に語調が強くなっていくメイドさん。おい。
「これから国王に用事なんだけど、それでもよろしいって言った方がいい?」
俺はその結果どうなっても知らないけどね。
「てか、ルシルがいるんだったら俺が今何してるか知らないはずはないんだけど......」
俺はふと疑問に思いメイドさんに聞いた。
「はい。もちろん王女殿下はリョウ様に相談するのは遠慮なさろうとしてましたよ」
じゃあ、なんでだよ。
「大方、アリスが探せって独断で言ったのでしょう?」
ティアが横合いからそう言った。あー、その可能性はありそう。
「まあいいや。王城の用事が終わったらでいいか?」
俺は妥協案をメイドさんに提示する。
「結構でございます。場所はどうされますか?」
「どこでもいいが?」
「では、リョウ様の家に伺わせていただきます」
そう言ってメイドさんはその場から立ち去ったのだった。
「なんだったんだ?」
「さあ?」
俺とティアはそろって顔を見合わせた。
そんなことがありながらも王城に着いた俺たちは王城の門のところで門番さんに身分証を見せ中に入った。
「さーて、国王はどこかな?」
そう言えば俺なんも聞かされてねぇ。どうしましょ。俺は助けを求めるようにティアを見る。
「私に聞かれても知らないわよ。国王の魔力は覚えてないの?」
「そんな真似はティアにしかできねぇよ」
仕方ない。その辺のやつに聞こうかな? そう思いながら俺はティアと共に長い廊下を歩いている。もちろんリースを背負ってだが。
数分人を探しながら歩いていると前方からやってくる人が見えた。
「あ、おーい。ちょっといいですか?」
俺は手前で曲がろうとした人に声をかけた。
「ん? どうしt......リョウ様じゃないですか」
俺が声をかけたのは綺麗な青い髪をしてドレスを着ている少女だったが何故俺のことを知っているのだろう?
「あれ、知り合いでしたっけ?」
俺は疑問に思ってそう聞く。
「ひどくないですか?」
相手の少女は傷ついたように不満そうになりこちらを見る。はて? 知り合いに蒼い髪の人ってクレアぐらいだが、こんなにきれいに着飾ったりしてないし雰囲気も違うはずだしなぁ。
「私は本気で忘れらてるのか? ちょっと真剣にへこんでくる......」
「いや、俺が青髪で知ってるのはクレアくらいなんだが雰囲気があなたと全然違うので知らないと思いますよ」
俺がそう言うと相手はきょとんとして目を丸くした。
「ははは。私がクレアであってるよ」
相手はそう言いながら笑い、肩をバシバシと叩かれる。痛いです。そして雰囲気が一変して俺の知っている少女のものになった。
「ちょ、おま、クレアか!? 雰囲気変わりすぎだろ」
俺は驚きと共にクレアを見た。
「そうしないといけない場面ってのもあるんだ。最初に会った時もそうしてただろ? それより何の用だ?」
俺はクレアに国王に会いたい旨を伝えた。
「それならもうちょっと奥だな。案内するよ」
クレアはそう言いながらこちらを先導するように行こうとする。
「いいのか?」
「ああ、私の別にやることは終わっているからな」
そう言うことならばと、俺達はクレアについていき国王の下に向かったのだった。
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