第31話 アリスたちの相談事

クリスに国王がいる場所に案内してもらいそこで別れた俺たちは現在、国王と初めて会うおじさんに今日あったことを報告していた。このおじさん、宰相って言ったっけ。いわゆる総理大臣だよな。めっちゃ偉い人じゃん。てか、事情知ってんのね。


「なるほど、リョウはその付近に聞き込みなどの捜査をして欲しいと、そう言うことだな」


 俺の報告を聞き終わった国王さんはそう言った。


「ああ、やらないよりは手がかりが手に入る可能性がゼロじゃない。俺たちだけでも限界があるしな。それこそ本気でやっていいなら話は別だが」


「本気でやる? それはどういう意味だ?」


 俺の口ぶりを疑問に思ったのか宰相が口を出してきた。


「地形が変わってもいいなら......と言い換えましょうか?」


 俺がそう言うと宰相は顔を青ざめさせて言った。


「わかった。やるなよ? 絶対本気を出すんじゃないぞ? 絶対だからな」


 フリかな? まあ、やらないんだけど。


「わかってますよ」


 俺はボケたいのを我慢してそう言っておく。


「まあ、今日わかったことと言えばそのくらいかな。昨日闘った男が死んでいたのは痛いが、俺たちもしばらくの間は昼間には外を見まわろうかと思っている。ひとまずこんな感じでどうだ?」


 俺は今後の方針を国王に話し、聞く。


「ああ。いいと思うぞ。その辺は頼んだ」


 国王は宰相がいるからなのか普段よりもまじめな雰囲気で肯定した。


「ま、帝国をつぶしてきてくれって言われた方が楽なんだけどな。じゃ、帰るわ」


「「ちょ、絶対やるなよ!?」」


 俺は最後にそう言い残し、ティアたちを連れて王城を後にしたのだった。





 王城を後にした俺たちは王城から近い場所の人気がないところまだ行きそこから転移で家に戻ったのだった。家の入口の前に転移するとそのそばに見たことのある豪華な馬車が止まっていて、馬車の中から顔を覗かせていた人物と目が合った。


「リョウ様!? いつの間に?」


 驚きに目を見開いてそう言ったのはルシルだった。


「リョウ様がお戻りになられたのですか?」


 そう言いながら後ろからアリスも顔を出す。てか、いつからここにいたんだ?


「待たせたか?」


「いえ、今来たところなんですけど......」


 まるでデートの待ち合わせのようなセリフだがそんな空気ではなく驚きで固まっているルシル。


「まあ、中に入ろう。話はそれからでもいいだろう?」


 俺はそう言いティアやリースと共に中に入っていく。そのあとに続いてアリスとメイドさん、ルシルとその護衛という順で家に入ってきたのだった。


「まあ、ゆっくりしてくれ」


 そう言いながら俺はカップを人数分取り出しお茶を入れて渡していく。その間ティアとリースは何かをもぐもぐと食べていた。お腹減ってたのね。


「それで相談があるんだっけ?」


 俺は食べてる二人を放っておいて話を切り出す。


「はい。お忙しいのはわかっているんですけどひとつ相談に乗ってほしくて」


 ルシルは申し訳なさそうに言う。


「それは構わないけど俺で解決できることかな?」


「はい。リョウ様なら解決できると確信しています」


 俺の質問にアリスが目をキラキラと輝かせながら言ってくる。その信頼はどこから来てるんだろ。


「お、おう。まあ、聞くのは構わないから言ってごらん?」


 そうして二人が話した内容は「フローレス領に短時間で行く方法はないか?」というものであった。理由としては帝国に関する情報収集だそうだ。


「なるほどね」


 てか、転移でいけば何時でもいけるのだが。


「ティア、聞いていたか?」


「ええ、もちろん」


 俺は黙々と何かを食べているティアに声をかける。てか、まだ食ってたのかよ。


「リースと王都は任せてもいいか? リースも俺とちょっと別行動だが大丈夫か?」


「いいわよ」


「......んー、わかった」


 ティアは即答し、リースは少し考えた後しぶしぶという感じではあるが頷いてくれた。


「ありがとな、二人とも」


 俺は二人にお礼を言い相談してきたアリスとルシルの方を向く。


「二人とも俺の移動方法を秘密にできるか? まあ、ギースとか国王とかは気付いてそうなもんだけど。もちろん護衛の面々もだ」


 俺がそう言うと二人はこくんと頷いた。ついでに護衛の人たちや一応メイドさんも了承した。


「じゃあ、明日の朝にフローレス辺境伯領に向かうか。すぐ着くから軽装でいいぞ」


「ありがとうございます。リョウ様」


「リョウ様、ありがとございます」


 アリスとルシルがそう言って微笑む。


「気にするな」


 俺はそう言っ頬をかく。


「ところで気になっていたんですけど......」


 アリスがそう言ってリースの方を見る。そう言えば説明してなかったな。


「ああ。リースのことか? リース、ちょっとおいで?」


 俺はそう言いながらリースを呼ぶ。


「はーい」


 リースは俺に呼ばれたのがうれしかったのか少し元気に返事をしてこちらに浮かんでやってくる。


「「「「!?」」」」


 リースの動きを見て、アリスとメイドさん、ルシルと護衛それぞれがそろって驚いていた。


「その方はいったい......もしかして」


 護衛の人がは何かに気付いたようだ。


「知っているんですの?」


 ルシルがそう問いかける。


「いえ、噂程度だったのですけど、もともとこの家には幽霊か何かが住み着いているというのがありまして、それで誰も買い手がつかなかったんです。もしかするとその噂の正体では? と」


 おい国王。人にそんな家与えるなよ。せめて説明してからにしてくれ。


「私の恩人にそのような家を与えるとは......お父様は後で問い詰めないといけないですね」


 そう言ってすごくいい笑顔で微笑むルシル。目は笑ってなかったが。


「まあ、正解だ。この家で保護したゴーストの少女がリースだよ。実体もあるんだぜ?」


 俺はそう言って笑いながらリースのほっぺたをつまむ。ナニコレやわらけぇ。めっちゃ触り心地いいんですけど。


「きゃー」


 そう言って喜んでじゃれつくリース。ナニコレ可愛い。


「可愛らしい少女ですね」


 そう言ってリースの頭をなでて微笑むアリス。リースも気持ちよさそうにして目を閉じている。


 こうしてアリスたちもそれぞれがリースに自己紹介をして解散するまでの間、しばしリースと戯れていたのだった。


 


 ちなみにティアはその間もなんか食べてました。

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