第9話 商業国到着
商業国に向けて移動を開始して約二週間がたった。
途中でワイバーンの群れと戦ったり何もない街に寄ったりと、寄り道をしたりしたがそれ以外は何もなく進むことができたと思う。ただ国境を超えるときに国王からもらった身分証を見せると国境管理の人に二度見されたのは何だったのだろう。
そんなこんなでもう目前には商業国の首都まで来ていた。
「なんだかんだで寄り道しすぎたかな?」
俺はティアにそう言った。
「そうね。でもいいんじゃないかしら」
「楽しかったー」
ティアがそう返事を返してきて、その後にリースが元気に言う。
「そっか。じゃあ、あとちょっとだし、着いたらおいしそうな物を探しながら宿を決めようか」
「ええ」
「うん」
ティアとリースが頷くのを見た後、俺は前を向いて商業国の首都に向けて進むのだった。
「またディール王国の王都とはだいぶ違うんだな」
「そうね。活気が違うわね」
「お店がいっぱーい!」
首都の中に入った俺たちはその街並みを見て、そんな感想を言い合う。街並みは商業国と言うだけあって商店街が多く活気がある。また、商店の種類も多岐にわたり扱っているものも豊富だった。
「ほんといろいろあるな」
俺はあたりを見回しながらそう呟く。その中で少し老朽化が目立った建物が俺の視界に入った。中で扱っている物の予想がつかない。
「あれは何の店だ?」
「どれかしら?」
俺の言葉に反応したティアにその店を教える。ティアはその方へ視線を向けて目を細めた。わずかに怒気が漏れている。
「あの店が扱っているものは知らなくてもいいわよ。知りたかったら後で教えてあげる」
そう言って興味をなくした様に視線を変えるティア。なんかあるのか? 今聞いたら怖いから後で落ち着いてから聞くか。
そんなことがありながらもいい時間になって来たのでしばらく宿泊する宿を探す。それから俺たちはあまり時間もかからずに、安すぎず高すぎずのちょうどいい値段設定の宿を見つけたのだった。
「いらしゃいませ!」
宿の中に入ると元気な声が聞こえてきた。見た目は中学生ぐらいの少女だ。
「宿泊ですか?」
「ああ。三人で一週間くらい。いけるか?」
「もちろんです」
俺の質問に少女は元気に答える。料金を支払って部屋に案内してもらう。
「こちらのお部屋になります」
案内してもらった部屋は綺麗なものだった。うん。いいね。
「ありがとう」
「では、何かありましたらお声がけくださいね。あと夕食はどうされますか?」
「いただくよ」
「わかりました。下の食堂に行って下さればお出ししますね」
そう言って少女は去っていった。
俺たちは部屋に入って荷物を置いて、しばらくゆっくりすることにした。
「元気な子だったな」
「そうね」
「楽しそうだった!」
それぞれでそんな感想を言いながらしばらく談笑を続けた俺たちはティアのお腹の音を聞いて食堂に向かうことにしたのだった。
「おいしかったー!」
リースのそんな元気な声を聴きながら夕食を終えた俺たちは部屋に戻って来ていた。
食後を部屋でゆっくりと過ごし落ち着いてきたころ、俺はティアにあのぼろい商店のことを聞くことにした。
「で、あれは何だったんだ?」
「あれ?」
ティアは首をかしげる。うん。俺の質問の仕方が悪かったな。
「ほら、ここに来る途中で見たあのぼろい店のことだよ。あとで教えてくれるって言ってただろ?」
俺がそう言うとティアは顔をしかめた。なんかあるのかな?
「あそこには私の嫌いなものが売っているのよ。気付かなかった? あそこの地下にも弱い気配がたくさんあったのが」
「弱い気配?」
俺はそれに覚えがなくて思い出すように考え込む。
「途中で寄った街に似ていたの!」
ふとリースがそんな声を上げた。
「途中で寄った街ってあの何もない街か?」
俺はリースにそう問いかける。リースはそれに「うん」と返事を返した。
「で、結局なんの店なんだ?」
俺はとりあえず結論を聞こうとした。
「奴隷よ。ほんと人族ってそう言うの好きよね」
ティアはそう言って吐き捨てた。なるほどね。しかも弱い気配ってことは子供か。ティアが嫌うのは納得だな。
「そう言えば奴隷って禁止されてるのか?」
俺はふと思ったことをティアに聞いた。
「知らないわよ。国ごとに違うだろうし。それに時代も違うもの」
ティアはため息を吐きながらそう説明する。これはルシルとかに聞いた方がいいかな。それにディール王国では奴隷とかは見なかった気がする。異世界のお約束なのに。
「こういうのはルシルに聞くか。明日ちょっと転移で行ってくるよ。ついでに途中の街もあの下の気配はそう言うことなんじゃないか?」
俺はそう言ってティアを見た。
「好きにしなさいな」
ティアはもう興味がなくなったように自分の収納から夜食を取り出している。さてはまだ食べる気だな。
「リースはどうする? 明日久しぶりにルシルと会うか?」
「……うーん。ティアお姉ちゃんといる!」
「そうか。わかった。とりあえず明日は別行動だな。ついでにその辺の法律についても聞いてくるわ」
俺はそう言ってリースを撫でた後、寝る準備をしながら談笑をつづけたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます