第24話 地下④

 俺たちは地下を順調に進んで行った。途中には盗賊のような男たちがたまっている部屋がいくつもあったが、それをほぼ時間をかけずに潰したこともあって大して時間はかからなかった。また、進んで行くごとに倒した男たちから情報を聞き出していたため少しずつではあるが情報も増えていった。そして今、いよいよ最後と思われる少しはまともに見える扉の前に俺たちは立っていた。


「いかにもな入り口だな」


 その扉はどこからか持ってきたのかしっかりとした造りで備え付けられていた。


「どこから持ってきたのかしらね?」


 ティアもそう言いながら扉の方を調べている。


「どうせどっかから盗んできたんじゃないのか?」


「そうかもね」


 俺が適当に返事をするとティアも少し笑ってそう答えた。そうして扉から少し離れたティアはこちらを見る。


「扉には何も仕掛けはないわ」


「そうか。じゃあ、中に入りますかね。準備はいいか?」


 俺はそう言ってみんなを見る。今現在俺についてきているのはティアとリース、それに新たに追加された騎士五名だ。各々がいつでも行けると言うように頷いたのを確認した俺は、頷き返すと扉の方を見据えた。そして俺はそのまま扉を蹴破った。


ドガン!!


 そんな音と共に扉は吹き飛び固定していた金具ごと大きく形を損傷させて中に吸い込まれるように入っていった。


「な、なんだ!?」


 扉のあった場所の奥からは驚いたような怒号が聞こえてくる。中は結構広そうだ。それを確認した俺は素早く中に入って状況を確認する。中には盗賊の親玉と思われる男が一人とその護衛に見える男たち十数人が見える。


「てめぇ、何のつもりだ!?」


 盗賊の親玉がこちらをにらみつけながら顔を真っ赤にしてそう怒鳴りつける。かなり怒っているようだ。


「侯爵を捕縛した後の家宅捜査かな?」


 俺は親玉の顔を見ながら涼しい顔をしてそう言った。それを聞いた親玉は、額に青筋を浮かべてこちらをにらみつけたまま静かに剣を抜いた。


「なっ、お前はドブルだな!」


 突然、俺の後に入って来た騎士の一人が驚いたようにそう叫んだ。


「有名なのか?」


 俺は相手の名前を騎士が知っているのに驚き、叫んだ騎士にそう聞いた。


「王国内で懸賞金をかけられている大きな盗賊団の親玉だ。こいつがいた場所は大概被害が大きい犯罪が行われてきた」


「なるほどな。それもこの規模なら納得だ」


 俺は騎士の説明を聞いて大いに納得する。確かにこの地下の規模はかなりのものだったし、気絶させて捕縛した男たちも俺たちがやっただけでも百人以上に上っているだろう。


「何ごちゃごちゃ喋ってやがる。俺の前で舐めたマネしやがって。全員殺せ!」


 ドブルは俺たちが目の前で普通に喋っているのが気にくわなかったのか周りにいる配下の男たちにそう怒鳴りつけた。怒鳴りつけられた男たちは素早く剣を抜くとこちらに飛び掛かるように向かってきた。


「じゃあ、生きて捕まえt……おっと?」


 俺は騎士にさらに質問しようとしていたところで切りかかられたため、質問を一時中断して回避した。そのまま一気に数人がなだれ込んできたため混戦状態に入る。周りを見るとティアやリース、騎士たちも応戦しておりティアやリースはともかく騎士たちに余裕はなさそうだった。


「はぁ、仕方ないか」


 俺は切りかかってくる男たちの攻撃を回避しながらため息を吐くと電撃を起こして感電させ気絶させる。俺は男たちが短く悲鳴を上げながらそのまま倒れていき、完全に動かないのを確認してから騎士たちの加勢に向かう。そうして向かってきたドブルの配下の男たちを全員無力化すると、俺はそのままドブルの方を見る。しかしそこにいたドブルは、剣をこちらに向けた状態で恐怖の眼差しで見ていただけだった。


「もう終わりかな?」


 俺はドブルの目を見てそう言いながら笑いかけた。男たちをけしかける前は怒りで真っ赤になっていたのに今は青い顔をしている。まあ、確かに数分とかからず配下を全員無力化されては怖くもなるかな。俺に至っては武器は使ってないし。


「畜生!!」


 しかし予想外だったのは、意外にもドブルはそう叫びながらもこちらに向かってきた。こちらに走りこんで横なぎに剣を振ったドブルを見て俺はそれをバックステップで回避する。そして足元に落ちている無力化した男の剣を拾った俺はさらに向かってくるドブルの剣をはじいて無理やり隙を作らせると、そこに突っ込み剣の腹で手をたたきつけて剣を落とさせた。


「グッ!」


 短く声を上げ剣を落としたドブルの顔に、俺は膝蹴りを食らわせて蹴り飛ばすとゆっくり歩いて近づいて行く。


「ま、まて。待ってくれ」


 近づいてくる俺に命ごいをするように声を絞り出すドブル。


「うるせぇ、寝てろ」


 そして恐怖の表情でこちらを見てくるドブルに短く怒鳴りつけた俺はそのまま電撃を呼び出すとほかの男たちと同様に気絶させたのだった。

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