第23話 地下③

「やべぇ」


 俺は思わず呟いた。話を聞ける状態の者が一人もいない。


「仕方ねぇ。起こすか」


 俺は一番近くの足元に倒れている男に近づいて行った。


「おい。起きろ」


 俺はそう言いながら気絶している男を軽く蹴る。しかし、男は唸っただけで起きる気配はなかった。そこで俺は魔法で水の塊を出すと男の顔にぶつけてみる。水の塊は「ばしゃっ」と言う音をと共に男の顔に当たってあたりに飛び散った。


「うぅ、ごほっ。な、なんだ!?」


 水の塊をぶつけられた男は咳き込みながら目を覚ます。元気そうで何よりである。


「よお。元気か?」


 俺は男の顔を覗き込みながらそう言った。


「て、てめぇ!!」


 男は俺たちに気が付いたのかこちらを見て怒鳴り声をあげた。


「うるせぇよ」


「ぐぅっ!」


 そう言いながら俺は男を蹴り上げる。後ろで俺の行いを見ている騎士やティアたちが呆れた顔をしているが気にしない。


「まぁ。落ち着けよ。聞きたいことがあるだけだ。それにほら、お仲間も殺してない」


 俺はさっきとは打って変わって声音を変えて話しかける。


「何も話すことはない」


 俺の言葉を聞いた男はそこで少し冷静になったのか周りを見て仲間の状態を見てほっとした表情を見せた。その後にそう言ってこちらをにらみつけた。


「いや、お前は話したくなるはずだ。じゃないと死んじゃうもんな? それに質問も難しいもんじゃない。お前たちがここで何をしているのか言って欲しいだけなんだが」


 俺はそう言って男にピンポイントで殺気と魔力をたたきつける。


「がっ、うっ!」


 俺の殺気と魔力を当てられた男は間近に見える死の恐怖で歯をカチカチと鳴らし、ガタガタと震えている。


「し、知らないんだ! 俺は何も知らねぇ!」


 男が恐怖に負けて叫んだところで俺は殺気を抑えて聞き返す。


「知らない? じゃあここでは何をしていたのかな?」


「つ、連れてこられたガキの監視だ! どこから連れてこられたのかも理由も知らない! 手も出しちゃいねぇ!」


 必死に叫んで訴える男の様子に嘘はなさそうだ。それに最悪の展開もなさそうだ。それじゃあ、仕方ない。


「そうか。じゃあ、もう寝てろ」


「がぁっ!!」


 俺はそう言って男に電撃を当てて気絶させる。こいつは外れだな。


「何もわからんかった」


 俺はそう言ってティアたちの方を見た。そこには俺のやっていることを見て顔を引きつらせている騎士達と呆れているティアたちがいた。


「ど、どうした?」


 俺はティアたちの視線を受けて若干たじろいだ。


「別に」


「そ、そうか」


 ティアがジト目を向けてこちらに向けて一言そう言う。じゃあ、その眼は何なんだよ。聞いても教えてくれなさそうだな。


「さて、もう何人かに話を聞くかな」


 そう言って俺は別の男にも先ほどと同じようにOHANASHIをするべく向かって行くのだった。なお、その光景を見た騎士はさらに顔を引きつらせるのだった。











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「こんなもんか」


 そう言って俺は話を聞いた男を再度気絶させて立ち上がった。これで合計五人ほどに話を聞いたのだがあまり大した情報は得られなかった。唯一男たちをまとめていたっぽい奴からはこの先の情報やほかに子供たちを閉じ込めている部屋についての情報を得ることができたがその程度だ。


「さて、話をまとめるか」


 俺はそう言って引きつった顔を継続中の騎士たちの方に向かう。おい、誰だ「ひっ!」って短く悲鳴を上げた奴は。俺はそんな怖がられるようなことはしてないぞ。


「まあいいや。とりあえずわかったことは、こいつらの作業ごとに細かく人が割り振られていて、全体がわからなくなるようにうまく考えられているってことだな。これを考えた奴はよっぽどやろうとしていることが外に漏れるのが怖いらしい」


「そうね。こうなったらこの地下にいるのを片っ端から片付けていくしかないんじゃないかしら?」


「それでもいいんだがちょっと脳筋過ぎねぇか?」


 なんで最初にごり押しの案しか出ないんだ。頭を使って行こうぜ。


「あら、失礼ね。今日はもう考えたくないだけよ」


「さいですか」


 俺はため息交じりに返事を返す。そうか、ティアはもう飽きてきてるな。これは早いとこ終わらせないと強引にことを進めかねないぞ。


「じゃあ、基本はこのまま進んで全部を片っ端から制圧するか。そのあとにまとめ役っぽいのだけ起こして話を聞けばいいだろ?」


「それでいいわ」


 俺はティアの返事を聞いて頷くと入って来たのとは反対にある出口に進み次の部屋を目指して行った。しかし次の部屋にはそこまでの時間をかけることなく到着する。加えて俺もティアほどじゃないにしても、結構この地下道に飽きてきていたため五分もかけずにそこにいた男たちを制圧した。


 このような感じでどんどん進んでいき、俺たちはこの地下道を攻略していくのだった。

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