第25話 地下探索終了
「さて、どうするよ?」
ドブルを気絶させた俺は後ろを振り返りそう問いかける。
「ひとまず証拠集めをしてもいいでしょうか?」
するとついてきていた騎士の一人が俺にそう許可を求めてきた。
「いいじゃないかな。運びきれなかったら手伝うよ」
「ありがとうございます」
俺はそれに快く許可を出し、手伝うことも伝える。そもそも指揮系統が違う俺に許可を求めなくてもいいことだし。
「さて、俺たちも手伝おうか。思ったよりも広くて時間かけちゃってるし」
「そうね」
「わかったー」
俺がティアとリースにそう声をかけると二人ともすぐに返事を返してくれた。それからみんなで手分けして盗賊たちの部屋をあさっていく。
「なっ! これは貴族からの依頼の証拠じゃないか!!」
「こっちもだ!」
「これなんて他国のだぞ!」
しばらくいろいろとあさっていると騎士たちから次々と声が聞こえてくる。なんともまぁ、証拠をいちいち残しておくとは律儀な奴だ。そのおかげで騎士たちも仕事がはかどっているようだし。
「ん? これって……」
俺も手伝いついでに棚の一つをあさってみると商業国の商人からの買取契約の証明書などがまとまった紙の束が出てくる。
「この商人の扱っている商品って……。まさか!」
俺は気になることができてその紙の束をめくる。するとそこには案の定商人が買い取った商品名が書いてあり、そこには人身売買がなされていたことが書かれていた。これは国王さんに相談しないといけない案件かな。国際問題だし。
そんな調子で次々と犯罪の証拠が出そろい、一通り今いる場所をあさり終えてから俺たちは気絶した男たちを連れて転移でデルマ侯爵の屋敷の玄関へと転移した。
「お、リョウ。戻ったのか」
転移で俺たちが現れたのに気付いたのかウォリックが声をかけてくる。
「ウォリックも戻ってたんだな」
「ああ。どのくらいまで進めたんだ? まぁ、俺はとりあえず休憩だ。ここは予想以上に広すぎるからな」
「なるほど。とりあえず親玉っぽいのは捕まえたよ」
俺はそう言いながらウォリックに気絶しているドブルを見せる。
「こいつは……。また大物を捕まえたな」
やっぱりウォリックも知っているのか。よほど悪名高いんだな。最後の方はかなり小物感満載だったが。
「あ、あと結構な数の貴族が関わっている様だぞ。こいつ結構几帳面に証拠になるような書類を残してたから」
俺はそう言いながら騎士たちが持ち切れなかった書類の一つを取り出してウォリックに手渡す。
「なんてことだ」
ウォリックは俺から手渡された書類を見て怒りとも悲しみともつかない表情でつぶやいていた。それから何とも言えない沈黙がこの場に残る。そこで俺は空気を換えるようにウォリックに声をかける。
「とりあえず、俺たちも休憩するよ。明日の昼くらいにここに来ればいいか?」
「あ、ああ。そうだな。また明日来てくれると助かる」
「了解」
俺はウォリックにそう返事を残してティアたちがいる方に向かう。
「あら、話はもういいの?」
俺が近づいてきたのに気付いたのか、リースを構っていたティアがこちらに振り返りそう言った。
「ああ、とりあえず俺たちも休もう。敵になりそうなのは排除してるし騎士たちでもなんとかなるだろう?」
「それもそうね。それにリースも眠そうだわ」
確かにもう深夜もいいところだ。
「そっか。とりあえずティアになついていた女の子の様子も気になるし王城に戻ろう」
「ええ」
そうして俺は眠そうに船をこぎ始めているリースを負ぶって王城に向けて転移したのだった。
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「おお、リョウ。何か問題でもあったのか?」
王城の門のそばに転移した俺たちはそのまま門を門番に咎められることなく通してもらい、国王さんのいる場所に向かっていく。そして国王さんがいる部屋に入ると国王さんはまだ仕事をしているようで、こちらを見てそう声をかけてきた。
「いや、特に問題はないよ。地下にいた親玉は捕まえたし、あとは騎士達でもどうにでもできると思う。とりあえず今日は俺たちも休もうと思ってこっちに戻って来た」
「そうか。ありがとう。何だったらここに泊まるか? 部屋は用意するぞ?」
「そうだな。ティアになついていた子はどうしてる?」
「客間のベッドで寝かすように指示を出したな。その部屋にするか?」
「じゃあ、それで頼む」
「わかった」
国王さんは部屋にいたメイドさんにティアになついていた女の子の部屋まで俺たちを案内するように指示を出した。俺たちはその案内に従って部屋に向かう。
「こちらでございます」
「ありがとう」
「では、失礼します」
部屋に案内された俺たちは代表して俺がお礼を言った後、部屋に入っていく。
「よく寝ているようね」
「そうだな」
部屋に入った俺たちはベッドにすやすやと寝ている少女を見て起こさないように小声で会話をする。
「じゃあ、俺たちも今日はもう寝よう」
「ええ」
「おやすみなの」
こうしてそれぞれがベッドに入り挨拶を交わして長い一日を終えたのだった。
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