第39話 保護した少女たち
ベイクが話した内容は以外でもなんでもなく、ただただ胸糞が悪いだけのものだった。手広く、金もうけをしたかった。それだけだった。違法薬物や人身売買など、悪いことをしたら金になる。よくあることではある。それがいいか悪いかは別にして。
そしてティアが保護したラピスだが、どこからか攫ってきた少女らしい。なんでも、、貴族の馬車を襲撃した盗賊が持っていると報復されると思って早く手放したくて売り払った結果、ベイクのところにやってきて、バスクを経由してデルマ侯爵へ、ということらしい。ベイクもバスクも巻き込まれたくなく、早く手放そうとしたためにそのままデルマ侯爵へと流れたそうだ。ラピスが記憶を失っていた理由は知らないらしい。大方、攫われた時のショックだろう。
そしてバスクやベイクがそんなことをしても今まで生き延びてきた理由だが、この国のトップに近い奴の庇護下にいたからだそうだ。この国は大きな力を持つ10の商会のトップが国の方向性を決めているそうだ。その中の一人らしい。
「それで全部か?」
俺は脅すようにベイクにそう問いかける。
「あ、ああ。そうだ。これで全部だ」
片足を失い怯えているベイクは震えた声でそう言った。
「じゃあ、少し寝てろ」
俺はそう言ってベイクを気絶させ、魔法で起きれないようにしてベイクを放置する。そして地下室に向い、閉じ込められている少女たちのもとへと進む。
「お前たちはここから解放されたら行く当てはあるのか?」
俺がそう言うと、少女たちは生気のない目をしながらも不思議そうな顔をする。反応があるのは助かる。しかし、返事はなかった。
「じゃあ、とりあえずここから出して保護するから何も言わずについてきてくれるか?」
俺がそう問いかけると、少女たちは黙って頷いた。俺は少女たちの反応を見てから、鉄格子についてる錠を無理やり壊すと扉を開けてついてくるように促す。そしてある程度まとまらせるとティアがいる自宅に転移した。
「ティア」
俺がティアにそう呼びかける。俺が声をかけるとティアはゆっくり振り返った。
「あら、ずいぶんと団体さんを連れてきたのね」
ティアは俺が連れてきた少女たちを見て冗談めかしてそう言った。
「デルマ侯爵と取引していた商人のところに行ってきたんだ」
「そう。それでそんなに血の匂いをさせているのね」
ティアは俺の説明に納得した様に返事をして後ろの少女たちを見る。それにつられるようにして俺も視線を少女たちに向けた。少女たちは急に景色が変わり、知らない場所に連れてこられている状態を不安に思ったのかそわそわとしていた。
「とりあえずくつろいでくれ」
俺は少女たちにそう言いながら座るように促し、簡単に食べれるお菓子屋、飲み物を用意していく。
「そういえばリースとマリーは?」
「リースは子供たちを見てくれているわ。マリーは――
「あら、呼びました?」
と、後ろから急に気配を感じた。
「急に来るなよ……」
俺は国王さんや王子たちに聞かれたら「お前が言うな」と言われそうな言葉をマリーに投げかける。
「呼ばれた気がしたもので」
マリーはいたずらっ子のような笑みを浮かべながらそう言った。
「はぁ。まあいいや。ところでマリー。子供たちの追加だ」
俺はそう言って渡したお菓子を食べている少女たちをマリーに紹介する。紹介するほど知らないけど。そして少女たちを見たマリーが「あら?」と、声を発する。
「どうした?」
「あなた、名前は?」
マリーは連れてきた少女のうちの一人にそう言って尋ねた。
「ウルラ……です」
少女は弱弱しくそう答える。
「ウルラ、あなた吸血鬼ですね?」
ウルラはマリーの質問に怯えたように頷いた。
「ああ、心配するな。この場に吸血鬼はお前だけじゃない」
怯えたウルラを見かねた俺は、吸血鬼の少女に安心させるようにそう言った。
「え?」
吸血鬼の少女は今度は驚いたような顔をする。そりゃそうか。今までは怖がられてきたのだろう。
「これとこれは吸血鬼だぞ。それも年代物の」
俺は吸血鬼の少女にティアとマリーをビンテージワインのように説明した。その刹那に魔法が二人から飛んでくる。
「うおっ! 危ねぇ」
俺は家の中を壊さないように二つの魔法を相殺すると犯人たちに視線を向けた。
「危ないだろう?」
「リョウ(様)が悪い(です)」
姉妹そろってそう答える。
「悪かったよ」
俺は苦笑しながら謝る。連れてきた少女たちは、俺たちのやり取りをポカンとしながら見ているのだった。
俺はヒートアップしているティアとマリーを落ち着かせた後、自己紹介をした後に少女たちに名前を聞いて行った。先ほどの吸血鬼の少女、ウルラ。犬耳の姉妹でマイアとエレクトラ。猫耳の少女、スピカ。エルフの少女でリグリア。それぞれが先行きに不安を覚えているようだった。
「さて、お前たちはこれからどうしたい?」
「え?」
俺は少女たちにそう問いかける。少女たちは一瞬何を問われているかわからないといった表情をしてこちらを見た。そのため、俺は質問の意図を説明していく。
正直、少女という年齢であってもデルマ侯爵のところで保護した子供たちほど小さくはない。十代の後半くらい、この世界では大人として扱われる。俺としては連れてきた以上、面倒は見るつもりだし犯罪以外は何をしてくれてもどうしてくれてもいいと考えている。
俺の質問を理解した少女たちは、それぞれでしばらく考え込み相談を始めた。やがて相談が終わったのか少女たちは決意に満ちた目でこちらを見るのだった。
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