第16話 家宅捜査 ~ティアの場合②
<ティア視点>
門を吹き飛ばした私たちを見て騎士と警備の男たちはそろって驚きの声を上げるとともに固まっていた。
「騎士さんたちはボーっとしていると私とリースでみんな殺しちゃうことになるのだけれどいいのかしら?」
「「「!」」」
声をかけたことでやっと目の前の状況を思い出したように各々動き始める騎士たちを見て私はため息を吐いた。
「行きましょうか、リース」
「うん!」
やっと動き始めた騎士たちを見送って固まっている警備の男たちをサクッと気絶させると、私はリースの手を引いてゆっくりと屋敷の中に向かっていく。中に入ると騎士たちが倒したであろう屋敷内の警備の男たちが何人かこと切れて倒れていた。
「殺し方が雑ね」
私は死んでいる男たちを見ながらそう呟いた。もっときれいに殺せないのかしら。そう言えば騎士だったわね。殺すのが仕事じゃないから難しいんだわ、きっと。そう考えた私はそれ以降死んでいる男たちに対する興味がなくなった。
「さて、何からしましょうかね。リース、何か気になることはあるかしら?」
「うーん。ないよ?」
さて、困った。もっと激しく抵抗してくれたら私の仕事も増えるし暇つぶしにもなるのに。早くも仕事がなくなってしまったみたいね。
「じゃあ、騎士が集まっているところに顔を出しに行きましょうか」
「わかったー」
リースの元気な声を聞いて、私たちは騎士がいるところに向かう。騎士のいる方に近づいていくにつれて何やら叫んでいる声が聞こえる。
「騒がしいわね。何に手間取っているのかしら」
「うるさいの」
そう言いながら近づいていくと金ぴかと反射して目に悪そうな格好をした男が騒いでいる。
「お前たちっ! 俺がだれかわかっているのか!?」
「黙れっ! 抵抗をやめて大人しくこっちへ来るんだ! 剣を捨てろ!」
よく見るとあれがリースが言っていた金ぴかの男ね。頭悪そうね。騎士たちは喚いている金ぴかの男を包囲しながらじりじりと近づいていく。なんでこんなにゆっくりで回りくどいのかしら。さっさと気絶させるなりすればいいのに。
「いい加減にしろっ!」
騎士の一人がそう言いながらしびれを切らしたのか前に出る。
「来るなぁ!!」
そう言いながら金ぴかした男は苦し紛れに剣を振り回すが騎士にそれをはじかれて尻もちをついた。
「っ! 確保しろっ!!」
騎士の中で一番上の地位にいるであろう男がそう指示を出した。
こうして王都にあるデルマ侯爵の屋敷は抵抗するものがすべて制圧されたのだった。
制圧された侯爵の屋敷を騎士たちは調べ始めていく。特に汚職の証拠になりそうなものがないかなどが、私室や書斎などをひっくり返す勢いで見られていった。
「ん?」
「あれ?」
騎士たちについていろいろ見ていた私とリースはふと何かの気配を感じた。
「ティア殿、何か気になることでもありましたか?」
私たちが声を上げたのを聞いていたのだろう騎士が顔を上げてこちらに向いている。
「気になる気配を感じたのよ」
私は簡潔にそう答えてきょろきょろとあたりを見渡して気配を探っていく。
「リース、この辺に地下室はないかしら?」
私はそばにいたリースにそう声をかけた。
「んー?」
声をかけられたリースは考えるようなしぐさをして気配を探り始める。
「あ!」
やがてリースは何かに気付いたように声を上げる。
「なにか見つけた?」
私は声を上げたリースの方を見て声をかける。
「ちょっと見てきてもいい?」
「いいわよ」
「行ってくる!」
リースはそう言い残すとスーッと消えるように床の下に入っていった。それからしばらく待つと側にあった本棚からガコンと何かを外すような音がして横にずれる。
「ここから入れるよ!」
ずれた本棚の中からリースが出てきてそう言った。
「中には何かあった?」
「本棚とかあったよ! でもそれ以外はちゃんと調べてないの」
「そう? 分かったわ。一緒に見ていきましょうか。そこの騎士の人、一人でいいから来てくれないかしら?」
「わ、わかりました」
私はそばにいた騎士に声をかけて一人ついてこさせるとリースが見つけた隠し部屋の中に入っていく。中にはベッドと本棚に机、それと金庫が置いてあった。金庫のそばにはさらに下に降りる階段がある。
「これは確実に何かあるわね」
「この下には行ってないからよくわからないの」
「もうちょっと騎士の人を呼んだ方がいいかもしれないわね」
「ではもう二人ほど呼んできます」
「お願いね」
私についてきた騎士は素早く戻ると追加で二人連れて戻って来た。
「一人はこの部屋の中を調べてくれ。もう一人はついて来い」
「「はっ」」
指示に従っててきぱきと動き始める騎士を横目に私は地下へと降りる階段を下りていく。その後ろにリースと騎士二人が続いて行った。やがて見えてきたのは地下牢のような部屋であった。
「これは……」
騎士の一人が中を見て顔をしかめる。地下牢の中には鎖につながれたあざだらけの少女だった。少女は瞳に力がなく、何も考えられないような死んでいるような表情で座っていた。
「これは酷いわね……」
私も思わず呟いた。
「おねーさん……。だれ?」
鎖につながれた少女は光のない瞳でこちらを見るとそう聞いてきたのだった。
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