第17話 家宅捜査 ~リョウの場合①
<リョウ視点>
ティアたちがディール王国王都にあるデルマ侯爵邸を家宅捜査に向かったのと同時刻。リョウも騎士二十人を連れてデルマ侯爵領にある領主の邸宅、つまりはデルマ侯爵がいるであろう屋敷に歩いて向かっていた。
「そう言えばウォリック。侯爵体にはどういう建前で家宅捜査するんだ?」
「建前とかいうなよ。……まぁ、国王に対する反逆の容疑だな。一応事実だしな」
「なるほどね」
リョウの質問に苦笑いして答えるウォリック。まあ、日本と違って細かい手続きはいらないだろうし何とかなるかな。
「どれくらいでつくっけ?」
「もうすぐだ」
デルマ侯爵領についてから歩くこと三十分。寂れているくせにやたらと土地を広く活用しているせいで思ったよりも時間がかかる。時間は夕方を少し過ぎたくらいなためまだ人通りもちらほらあり、騎士二十人の集団は少し目立ってしまっていた。
「結構目立ってしまっているなぁ」
「この人数だ。仕方ないだろう」
俺のボヤキに律儀に答えてくれるウォリック。それに対して苦笑いを返して歩くこと五分強。ようやくデルマ侯爵の屋敷の前に着いた。門の前には門番が二人立っていてこちらを見て驚いている。
「デルマ侯爵に会いたいのだが?」
ウォリックが単刀直入に門番に要件を伝える。
「申し訳ございません。国王様の騎士がどのような御用でいらしたのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「それは侯爵に直接伝えるように国王陛下から仰せつかっている。お前に言うことはできない」
「しかし……。デルマ侯爵様より許可のあるものか要件のはっきりしているもの以外通すなとのご命令がありまして……」
ウォリックがいくら言っても門番は頑なに入れるのを拒む。職業意識しっかりしてんのな。
「わかった、もういい。こちらは国王陛下から賜ったご命令を果たさなければならないのでな。無理やり通させてもらう」
「「なっ!?」」
ウォリックが武力行使で入る決定を下したことに門番の二人は驚きの声を上げる。ここまでの間、俺はウォリック達のやり取りを少し離れてボーっと見守っていた。しかし、そろそろいいだろう。
「やり取りが長い」
バンッ!! という音と共に光の柱が空から降りてきて門番二人に当たる。音は派手だが威力をかなり落として気絶する程度にした雷を門番の二人に落とした。二人はそのまま崩れ落ちた。
「リョウ! 驚くから急に攻撃を始めるのはやめてくれ!」
「悪い悪い。長かったから飽きちゃって」
「おいおい」
ウォリックからの非難の声を俺は軽く流して門の前に立つ。
「まて、何する気だ?」
門の前で立ち止まった俺にウォリック達騎士はそろって顔を引きつらせる。俺の手のひらには普段魔力が感じられない人でもわかるほどの魔力が集められていた。
「伏せとけよ」
俺はそう言ってにやりと笑う。さて、お邪魔するとしよう。
ズドンッ!! という音と共に爆風が門を吹き飛ばした後、屋敷の上に飛び屋根に穴をあける。偶然にもティアが王都にある侯爵の屋敷の門を吹き飛ばしたのと同じタイミングだった。
「派手に行き過ぎだ」
呆れたようにつぶやくウォリックをさっくり無視して侯爵邸の敷地内に入る俺。侯爵邸の中からわらわらと剣を抜いた人たちが出てきて騒いでいる。
「何者だ!」
侯爵の私兵だろう男がこちらに気付いてそう問うてきた。
「国王さんからのご連絡です。侯爵には国王さんに対する反逆の容疑がかかっているから出てきて欲しいんだけど連れてきてくれない?」
俺は軽い調子でそう答えた。
「何を言ってやがる? お前ら!! 侵入者だ! 片付けるぞ!!」
「「「「「おう!!!」」」」
おうおう、士気が高くてめんどくさそうだな。金払いでもいいのか?
「ウォリック。全部殺すか? それとも聞きたいことはあるか?」
俺は先ほどから俺のやっていることに驚いて唖然としているウォリックに尋ねる。
「あ、ああ。何か知ってるかもしれないから数人は残してくれ」
「了解」
ウォリックの返事を聞いた俺は短く返事を返して侯爵の私兵の中に突っ込んでいった。まずは敵のリーダーっぽい指示を出していた男とその左右にいる男たちに電撃を浴びせて気絶させる。気絶した男たちはその馬肉連れ落ちて侯爵の私兵たちに動揺が走った。
「お頭ぁ!」
敵の中からそんな声が聞こえてきた。お頭って。盗賊かよ。
「てめぇ!!」
敵の一人が剣を大きく上に振り上げた状態で突っ込んできた。俺はそれを避けながらカウンターで首に剣を差し込んだ。相手の勢いのままに力が加わり首が切断されて地面に転がる。そのままの勢いで首から下が向かってきたため敵の方に蹴り返してやる。
「返すぞ」
俺がそう言って蹴り返した先には敵が五人ほど固まっていて突然に仲間の死体が飛んできたため避けれずにぶつかって倒れたのだった。俺は蹴り返した死体と共に五人ほどがまとまっているのをいいことに、そこに魔法を使って炎を落とす。以前ティアが使ったと言ってた蒼い炎だ。実に七千℃を超える炎によって私兵たちは跡形もなく溶けていき、そこには高温でガラス化した地面と溶けた鎧や剣に使われていた金属だけが残っていた。
「あ、ああ」
「化け物だ!」
侯爵の私兵たちは俺の起こした光景を見て戦意を喪失したのかそんなことを言いながら固まっていた。
「さて、闘う気がないんだったら武装を解除して投降してくれたらうれしいんだが?」
俺はにっこりと笑いかけながら侯爵の私兵たちにそう声をかけた。私兵たちはガタガタと震えながら剣をその場に落としていく。その光景を見て俺は頷くとウォリックの方を向いて声をかけた。
「ウォリック! 終わったぞ」
声をかけられたウォリックは恐怖なのか呆れなのかわからないような表情でこちらを見て
「お前とんでもないのな」
と、引きつった声で呟いたのだった。
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