第33話 行動開始
アデオナ王国で立て続けに起こった面倒ごとに嫌気がさし、ディール王国の家に戻ってからちょうど二日目の朝。ウカ達がアデオナ王国の王家と話し合いをする予定の日になっていた。
俺たちがディール王国に戻った次の日は休みにあて、しっかりと休養を取り疲れが残らないように過ごしていた。そんな中でも俺は休養を取りつつも思いついた物を作ったり、ウルラ達の買い物に付き合ったりもして動いたりもしていた。まぁ、総じていい休暇だったと言えるだろう。
俺とウカは朝起きてリビングで朝食をとりながら軽く会話し、時間を潰しているところだった。そこで俺はウカに今日の動きの再確認のため口を開く。
「今日の何時頃に王城に向かうんだ?」
「そうですね。お昼ごろでいいんじゃないでしょうか?」
「なんかきっちり決まっているわけじゃないんだな」
俺とウカがそんな会話をしながら朝食を食べ終わった頃、寝ぼけた様子で起きてきたティアが俺たちのいるリビングに入ってくる。見たところまだ半分寝ている、と言ったところか。俺はティアに視線を向け声をかける。
「おはようティア。どうかしたか?」
「いえ、今日って何かあったかしら?」
「寝ぼけてるな。今日はアデオナ王国で俺とウカが王城に向かう予定の日だぞ。ティアにも宿で警戒しといてくれって頼んだじゃないか」
「そう言えばそうだったわね」
寝ぼけ眼を擦りながらティアはそう言えばという風に答える。それから少しは目を覚ましたのかティアの視線に力が篭る。
「思い出してくれて何よりだよ」
俺はそんなティアに安心し、肩をすくめる。まぁ、起きてくれたのなら問題はないだろう。
それから間もなくしてリースも起きてきて、問題なく向こうへと行く準備をすすめてから、俺たちは再度アデオナ王国の王都に取っている宿へと転移するのだった。
宿に転移した俺たちはそれぞれの今日の動きを確認しあう。俺はティアとリースが緊張感なくじゃれているのを見ながら口を開いた。
「それじゃあ予定通りティアはここで待機で、リースも一緒にいるってことでいいな?」
「ええ」
「うんっ!」
俺に声をかけられたティアとリースは先ほどの緊張感がないじゃれあいをやめ、やる気をみなぎらせる。そんな二人の返事を聞いて、俺は一つ頷くと今度はウカ達の方へと視線を向ける。俺の目見るとウカもやる気十分と言ったように気合を入れているように見える。
「ウカとキコとヨウは王城に向かう。会談中の護衛は俺がいるから何とかなるとして俺が別行動になってからは大丈夫か?」
「はい。ある程度は私たちでも何とかできますし、よっぽどやばかったらリョウさんかティアさんに連絡しますよ」
ウカの返事にキコとヨウも黙って頷く。俺もその返事に対して頷いてから立ち上がる。
「よし。じゃあ、そう言うわけで何事もなく終わることを期待して動きますか」
「そうね」
「うんっ!」
「「「はい」」」
俺の言葉に皆が別々の返事を返す。相変わらずまとまりがないが俺達ならばこれでもいいだろう。俺はそんな思いと共に行動を開始するのだった。
キコはウカと俺が乗る馬車を操り、その後ろにヨウがもう一台の商品が乗った馬車をウカが乗る馬車に続けるようにして進めて宿を出る。ここから王城まではそこまで時間はかからないため、そこまで警戒をする必要はないかもしれないが、俺は何かあった時に対処できるように周囲に魔力を溶け込ませていた。
「あー」
俺は溶け込ませた魔力から感じる気配を知覚し呆れた声を出した。俺のそんな反応をウカが不思議そうに見ながら尋ねてくる。
「どうしたんですか?」
「いや、ほら。前に宰相の手の者が俺たちを監視しているって話をしただろ?」
「あー、言ってましたね。でもそれはリョウさんが返り討ちにしたんじゃなかったでしたっけ?」
「それはそうなんだが、俺の感知に複数前回と似たような気配が引っかかっていて飽きないなって思ってさ」
「また命知らずな。もしかしてティアさんたちにも向かっているんじゃないですか?」
「そうだな。向こうにも何人かついてるな。間違いなくティアも気付いてるぞ」
「可哀そうに」
俺とウカはティアの方面を監視している者の未来を思うと同情したくなる気分になり顔を顰める。
「ま、これがまともな奴が相手だったらティアも何もしないだろう。変に手を出そうとしないことを祈ってるよ」
「そうですね。ティアさんにはリョウさんが遠慮なく暴れていいって言ってましたしティアさんの機嫌がいいことを祈るしかないんじゃないですか?」
「おいおい。俺のせいか?」
「そりゃ、そうでしょう。現状ティアさんにストップをかけられるのはリョウさんしかいないですし」
ボンッ! ボンッ! ボンッ!
俺とウカがティアについて会話していると宿の方面から破裂音が何度か聞こえてくる。その音を聞いた俺たちは顔を見合わせ、お互い困ったような笑みを浮かべる。
「ティアのやつ、さっそくやってるな。早くないか?」
「そうですね。大方、監視されるのが鬱陶しいとかそんな理由じゃないですか?」
「そんなとこだろう。これ、騒ぎになると思うか?」
「間違いなく騒ぎになるでしょう」
俺とウカはそろってため息を吐く。しかしこうしていても始まらない。
「じゃあ、さっさと王城の中に入るとしましょうか」
「そうですね」
そんな会話をして間もなく、俺たちは王城の門の前にたどり着くのだった。
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