第7話 商業国に向けての移動②・ワイバーンと遭遇

 翌日。俺たちは早いうちから移動を再開した。


 昨日に引き続き、空を飛んで移動する。道中は特に問題なく進むことができた。途中までは、だが。


「お?」


 俺は前方にきらりと反射する何かが見えて声を上げた。


「どうしたの?」


 俺の声を聴いたティアがそう聞いてくる。


「いや、前方に何かが見えてな」


「どれ?」


「あの方向の」


 俺は見えたもの方向に指をさす。


「あれかしら?」


「そう、あれあれ」


 ティアも反射する何かに気付きそちらを見た。反射する何かは一つじゃないようで、いくつか見える。てか、あれ生き物か?


「あれってワイバーンじゃないかしら」


 ティアがそう言ってくる。おや、不穏な言葉が聞こえてきたな。ワイバーンって竜じゃね?


「わいばーん?」


 リースが不思議そうな顔で復唱していた。


「ええ、そうよ。龍よりも頭が悪いただの魔獣ね」


 ティアがそう説明する。なるほど魔獣ね。


「ただ群れるし、数は多いしで普通の人が出会ったらまず逃げるわね」


 おやおや? またもや不穏な説明。それは大丈夫なんですかねぇ。


「大丈夫よ。大した強さはないわよ」


 そりゃ、ティア基準ならそうだろうよ。


「俺みたいな一般市民は平和を愛してるから平穏に行きたいんだが?」


「どの口が言ってるのよ」


 俺の発言にティアが呆れたような表情をしてこちらを見ながらそう言った。それもそうか。普通の人は国王と気軽に話したり、帝国と戦ったりしなさそうだしな。


「あれってこっち来るかな?」


 俺は知ってそうなティアにそう聞いた。


「もう私たちに気付いていそうだし、来るんじゃないかしら」


「そうかー、来てしまうか......」


 俺は諦めたようにそう返事を返した。しゃーない、戦闘準備をしますか。


「リースはどうする? 隠れとく?」


「たたかうー!」


 俺はリースの元気な返事を聞いて頷くと戦闘準備をした。まあ、することと言っても魔法でいつでも攻撃できるようにして待機するだけなんだが。


「あ、こっち来た」


 俺はワイバーンたちの様子を見てそう言った。


「意外といるわね」


 ティアが余裕の表情でつぶやく。


 先手はワイバーンの方だった。それぞれがばらばらに炎のブレスを放ってくる。俺たちはそれをばらばらになって避けていく。俺はブレスを避けつつワイバーンとすれ違って一体を風の魔法で切り刻んで落とした。


 ティアは正面に来たブレスもろとも風の魔法を使ってワイバーンを押し返していた。リースはブレスを避けながら消えたり出てきたりとゴーストらしいことをしながらワイバーンを弄びながら効率よく細かな攻撃を加えて落としていた。


 リースはなんか予想できない方向に成長していっているな。まあ、いいんだけどさ。


 そうしてばらばらにワイバーンと交戦していきそれぞれが数を減らしていった。


「これで終わりかな?」


 俺は最後の一体だと思われる個体を地面にたたき落とし周りを見渡した。


「もう終わりみたいね」


「たのしかったー」


 ティアとリースも周りを見ながらそう言って、こちらに近づいてくる。


「地面に落としたのを回収に行くか。そう言えばワイバーンって食えるのか?」


 俺はふと思ったことをティアに聞く。


「食べられるわよ」


 ティアがそう答える。


「へぇ。じゃあ、今日はワイバーンを夕飯に調理するか」


 俺は夕飯の献立を考えながら回収を始めたのだった。










 夕方。野営地を決めてテントを張り、夕食の準備をする。結局、地面に落としたワイバーンの回収と解体でそこそこの時間を使ってしまい、あまり進むことはできなかった。完全に行き当たりばったりである。予定などはないから構わないのだが。


 本日の夕飯のメニューはワイバーン尽くし。とりあえずどんな味か見るために切れ端の方をそのまま焼いてみる。ジュウっと音が鳴りほどほどの油としっかりした赤身が目立つ肉が焼けていく。ちょうどいいくらいに焼けたところを味見する。


「うまいな」


 俺は一言そう感想を漏らす。ティアたちは昨日と同じように風呂に入っているため俺一人での味見だ。


「とりあえず、メインはステーキだな。数はたくさんあるし」


 俺はそう呟いてステーキ用にワイバーンの肉の塊を切り分けていく。その後、別の部位を薄切りにしてニンジンやピーマン、キャベツ(異世界産かつそれっぽい見た目のもの)などと一緒に炒めた野菜炒めも作っていく。


 そしてスープにもワイバーンの肉を入れて出汁を取り、野菜なども入れてのワイバーンスープを作った。


 出来上がったものを並べて準備し、ステーキも焼き始めた頃、ティアたちが風呂から戻ってくる。


「ちょうどできたぞ」


「それはよかったわ」


「わーい」


 それぞれが席について食べ始める。


 俺たちは、こうしてまた一日を終えるのだった。

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