第61話 ウカとみんなと
「で?」
俺の側まで来た王子がそう問いかけてくる。
「で? とは?」
俺はとぼけたように聞き返した。
「ここに来た理由だ。まさか私の騎士と戯れるために来たわけではあるまい」
俺のとぼけた態度に若干いら立ちを見せながら王子がそう言った。
「そりゃ、俺の家を出てここに来た子供たちの様子を見に来たに決まっているだろう? 入り口で止められたが」
俺は肩をすくめながらそう言った。それを聞いた王子もため息を吐く。
「それだけでよくこんな大騒ぎに発展できるものだ」
呆れた様子を見せた王子がそう嘆息した。
「まるで俺が意図的にやっているような言いがかりはやめて欲しいものだな」
「でも、リョウさん楽しんでもしたよね?」
ウカが俺の言葉にジト目付きでツッコミを入れる。俺は視線を泳がせた。楽しんでなかったとは言い切れないからである。
「そりゃ、絡まれて面倒なことになったら、少しは楽しまないと損だろう?」
俺はそう言う。若干慌ててしまったため、少し言い訳っぽくなってしまった。
「「はぁ」」
またも王子とウカの呆れたようなため息が重なる。実に心外である。
「まあ、そんなことより子供たちの様子を見て帰ろうか」
俺はそう言ってマリーに目をやる。マリーは頷いて先導する形で先に中に戻っていった。それに続いて俺たちも中に入る。
「あ! リョウ兄ちゃんだ!」
中に入ると子供たちが俺に気が付き嬉しそうに近寄って来た。
「おう。元気にしてるか?」
俺は子供たちにそう尋ねた。
「朝に会ったじゃん」
子供たちは嬉しそうに、そして楽しそうにけらけらと笑いながらそう言った。そんな子供たちと俺の会話をマリーはニコニコと見つめている。
「あ、リョウ様じゃないですか」
しばらく子供たちとの会話を楽しんでいると、部屋の奥からひょっこりと顔を出したティケがこちらに気が付いてそう言った。
「おう、ティケ。ちゃんとやってるか?」
俺は揶揄い交じりにそう尋ねる。
「もちろんじゃないですか」
ティケはしれっと表情を作ってそう言った。それを見ていたマリーがジト目になる。
「マリーがあんな表情で見ているが?」
俺はマリーにちらりと視線をやってからティケにそう言う。
「うっ」
ティケは短くそう声を発してから視線を逸らした。
「ま、さぼるのもほどほどにな」
俺は苦笑いしてからティケにそう言った。ティケはこれ以上の追及をされないことに安堵したのか「ほっ」っと、息を吐いていた。
こうして俺はしばらく子供たちやティケと話をして、様子を見て回った後マリーに辞することを伝える。
「えー、もう帰るの?」
保護した子供の一人、アル君が不満そうにそう言った。
「ああ、俺もティアやリースが待っているからな。また遊びに来るよ」
俺はそう言いながらアル君の頭を撫でた。
「わかった」
「いいこだ」
アル君は少し寂しそうに納得してくれる。俺はアル君やほかの子供たちに声をかけて孤児院を後にした。
「意外でした」
帰り道の途中、ウカがふとそう呟く。
「何がだ?」
俺はウカの呟きにそう返した。
「リョウさんって子供には優しいんですね」
ウカは心底意外そうにそう言った。
「ああ、だからウカにも優しくしてるだろう?」
クツクツと笑いながら答える俺にウカが不満そうにこちらを見る。
「私って子供枠なんですか?」
「おう。200歳児ってところか?」
俺の揶揄い交じりの発言に「不満です!」と主張するウカ。尻尾と耳も毛を逆立たせてピンと立っている。
「冗談だよ」
俺はウカの様子に笑いながら頭に手を置いてポンポンとしてやる。それだけでウカの逆立った毛が少し落ち着いてしまう。
「むぅ。なんだか誤魔化された気がします」
「気のせいだ」
「そんなことはないと思いますけど?」
そんなやり取りをしながら俺たちは家路についたのだった。
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家に着くとリビングにはティアとリース、そしてラピスがくつろいでいた。
「ウルラ達は?」
俺はティアにここに見えない面子について尋ねた。
「お風呂に行ったり、寝たり、かしらね。夕ご飯は勝手に済ましたわよ」
ティアはそう答えながら膝の上に座っているラピスを撫でている。
「そうか」
俺はそう短く答えて、夕食を食べ損ねていた俺とウカの夕食を用意する。そして二人で食べ始めると、こちらに感じる視線があった。
「どうした?」
俺はその視線の主に声をかける。
「……私も食べる」
「はいよ」
そう言ったのはティアだ。俺はこの展開を予測していた為、ティアの分も出してやる。そんなティアの様子がおかしかったのかウカがクスクスと笑い声をあげた。そんなウカの様子に俺とティアが顔を見合わせた。
「どうしたのかしら」
「いいえ。少し意外だっただけです」
ティアがウカに尋ねると、ウカも短く答えた。
「もっと怖い人だと思っていましたから」
ウカはそう言葉をつづけた。
「そう」
ティアはウカからそっぽを向くようにして、俺が作った夕食を頬張っていた。
そんなやり取りも俺たちは楽しく感じてみんなが笑顔になるのだった。
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