第12話 ウッドを連れて一時帰宅
ウッドから話を聞いた翌日、俺は早くに起きて今日一日の準備と朝食の用意をしていた。すると、寝室の方から起きだしてくる気配を感じる。なるほど、もうそんな時間か。気が付けばそろそろみんなも起きてもいい時間になっていた。
「おはようございます」
寝室から最初に出てきたのはウカの部下であるキコだった。それに遅れてキコの部下であるヨウも出てくる。
「おはよう。朝食はできているから好きに食べていてくれ」
「ありがとうございます」
キコとヨウの返事を聞きつつ、俺はそろそろ良いかと思いティア達を起こしに向かう。
「ティア、入るぞ」
俺はそう言いながらティアが寝ている寝室に入る。そこにはリースとラピスがティアに引っ付いて寝ている状態だった。
「あ、リョウ様」
それとは別のベッドで寝ていたらしいウルラは目をこすりながら起きだしてきた。
「おう、おはようさん」
俺はウルラに返事をしつつティアの方へ向かう。ティアは二人に引っ付かれて若干寝苦しそうにも見える。
「ティア、朝だぞ」
俺はティアを優しくゆすりながら起こしにかかる。しかし少し唸っただけでティアは起きようとしない。
「仕方ないか」
俺はそう呟くとナイフを取り出し指を軽く傷つける。そこからたらりと血が垂れてくる。俺はその指をそのままティアの口に突っ込んだ。
「ん、うん?」
口に指を突っ込まれたティアは寝ぼけ眼のままゆっくりと起き上がる。そして俺の血が付いた指をゆっくりと舐めて味わうと、ティアはこちらを見ていった。
「ご馳走様」
「おう。起きたようで何よりだ」
俺がティアの口から指を引き抜きながらそう言うと、ティアはもう少しと言わんばかりの目でこちらを見てくる。
「後でな」
俺はティアにそう言って部屋を後にする。着替えとか準備とかもあるだろうしな。後は……ウカか。
「ウカ、起きてるか?」
部屋の外からウカに声をかける。するとほどなくして返事が返って来た。
「はーぃ。起きてますぅ」
実に眠そうな返事に脱力感を感じながらも、俺は言葉を続ける。
「朝食ができてるから食べに来てきてくれ」
「分かりましたぁ」
気の抜けるような返事のウカを後にして、俺は最後にウッドのところに向かう。恐らくだが緊張状態から解放されて気が抜けている頃だろう。声を掛けなければ起きないことは分かり切っていた。
「ウッド。朝だから起きてくれ。今日は忙しいぞ」
「は、はい! 起きてます」
以外にも、ウッドは気を抜かず起きていたようだ。それほど間を置かずに部屋から出てきたウッドは機能よりも元気そうに見える。
「よく眠れたか?」
「はい、おかげさまで久しぶりにゆっくりと眠れました」
「それはよかった」
こうして全員を起こし終えた俺は、自分も朝食を取りに向かうのだった。
それぞれが朝食を取り終えてしばらくすると、それぞれが出発の用意を始める。ついでに今日の予定もみんなと共有しておく。
「俺は途中でウッドをディール王国の家に送ってくる。その間はティアにいろいろ任せるぞ」
「わかったわ」
ティアの返事を聞いて頷いた俺は、ウカにも話を向けた。
「ウカ、今日はまだ街に入る予定はなかったよな?」
「はい、今のペースだと一番近い街には明日の午後に到着できそうです。なので今日はまだですね」
「わかった。何かあれば連絡してくれれば来るからな。大抵のことは俺よりもティアが何とかしてくれると思うが……」
ここで俺は言葉を濁す。ティアなら問題があれば解決してくれることだろう。だがその場合、その結果は問題の根本的な消滅だ。基本的には力押しのティアだから穏便にだとか話し合いだとかは行われないはずだ。
俺の言いたいことを察してくれたのか、ウカはちらりとティアを見ると頷いて返事をした。
「じゃあ、俺はさっそくウッドをディール王国に送ってくる。普通に合流できると思うから先に行っててくれ」
「分かりました」
こうして俺とウッドだけがその場に残り、ティアたちは先へと進む。それを見送った後、ウッドが不思議そうに尋ねてくる。
「あのー、リョウさん」
「どうした?」
「ここからディール王国にはどうやって向かうつもりなんでしょうか?」
「ああ、そのことか」
俺はウッドの疑問に答えるべく、転移の魔法を使ってディール王国の家に飛んだ。急に目の前の景色が変わり、ウッドは目を白黒させている。ここは既にディール王国だ。
「りょ、リョウさん!?!?!!!??」
「着いたぞ」
俺は窓の外を指しながらウッドにそう伝える。
「え!?」
俺の言葉にウッドはポカンとしながら窓から外を見る。ここからだと王城くらいは見えるんじゃないかな。
「あれは王城、ですか?」
ウッドは窓から見える、この国で一番大きい建物を指さして聞いてきた。
「そうだな。あれがディール王国の王城だな」
「え、なんで!?」
「落ち着けよ」
俺は混乱しているウッドに対して苦笑しながら説明する。
「俺は転移が使えるからな。一度来た場所だったらどこへでも行けるんだ。便利だぞ?」
「そうは言っても……。えぇ……」
ウッドはまだ混乱から立ち直れないらしく、言葉に困って固まっている。
「まあ、気にするな。しばらくはこの家でゆっくりしていると良い。それとも何か仕事をしたいか?」
「それは、はい。流石に何もしないのは落ち着かないと思います」
「それもそうか」
ウッドの言葉に俺は納得し頷くと、ひとまずは家に残っている面子に紹介しようと部屋を出た。
「あれ、リョウ様! 戻ってらしたんですか?」
部屋から出るとそこには犬耳の姉妹、マイアとエレクトラが掃除をしている所に遭遇した。
「ああ、ちょっとあってな。ウッド、この子たちはマイアとエレクトラだ。この家の管理を手伝ってもらっている」
「あ、はい。私はウッドと言います。リョウさんに助けてもらってここに連れてきてもらいました。よろしくお願いします」
俺が声をかけると、ウッドは少し慌てながらも自己紹介を始めた。その流れで、俺はしばらくウッドたちの会話を見守る。
「大丈夫そうだな。マイア、エレクトラ。しばらく家の管理を手伝わせてやってくれ。ウッドはしばらく家で保護しようと思ってるんだ」
「わかりました。よろしくお願いしますね、ウッドさん」
「はい、よろしくお願いします」
見た感じ、大丈夫そうだな。これならしばらく二人にウッドを任せても問題は起きないだろう。
「あ、そうだ。スピカとリグリアは今日は商業国の家の方にいるか?」
俺は残りの二人である、猫耳の少女、スピカとエルフのリグリアの所在を尋ねる。
「はい、今日は商業国にあるリョウ様のお家の方にいってます」
「わかった。こっちは任せるな。俺は商業国の方の様子を見に行って、そのままティアたちの方へ合流する」
「わかりました。行ってらっしゃいませ」
マイアとエレクトラ、そしてウッドに見送られた俺は、そのまま商業国の家へと向かって転移するのだった。
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