第20話 王都のギルドへ

 国王との話も終わりしばらくするとアリスたちがやってきた。


「お待たせしました。リョウ様」


 そう言いながら申し訳なさそうにするアリス。


「ああ。こっちの話はちょうど終わったところだから気にしないで」


「お話ってどなたと......陛下っ!?」


 俺の返事を聞いて俺の前に座っていた人物に気付いたアリスが驚きの声を上げる。


「よい。気にするな。ここには俺たちしかいない」


 大急ぎで膝をつこうとしたアリスを国王が止める。ルシルはため息をつき、クレアは苦笑いだ。


「陛下。皆さんが探しておられましたよ? 特に私の父が」


 苦笑いをしていたクレアが思い出したように言う。


「なにっ!? もうさぼってるのがばれたのか?」


 おい、国王......。俺はジト目を国王に向ける。


「ごほん!! では、先ほどの件は頼んだぞ、リョウ。家には後で案内のものをよこすからな」


 ごまかすように咳払いをして、繕ったように言う国王。


「あ、はい。わかりました」


 俺は苦笑いして答える。それを聞いた国王は満足した様に頷いた後、部屋を出て行った。





「では、行きましょうか。リョウ様」


 話もひと段落付き、状況も落ち着いてきたころアリスがそう言った。


「どこに?」


 俺は疑問をそのまま口に出して言う。


「どこって私の家ですよ? そもそもの依頼もそこまでだったじゃないですか」


「そう言えばそうだったな」


 俺は思い出したようにそう言う。いろいろありすぎてすっかり忘れてたわ。


「そう言えば陛下とは何を話されていたんですか?」


 ルシルがそう聞いてくる。


「二人を助けたお礼を言われただけだよ」


 俺は簡単にだけ説明をした。


「そうですか。改めて助けてくださってありがとうございますね」


 そう言って微笑むルシル。


「ああ。あの時も言ったが気にするな」


 俺はそう言って手をひらひらさせる。まじめだな。


「さて、そろそろ行くか。ティアー、行くぞー」


 俺は国王が去って再度寝ようとしているティアに声をかける。ほんと自由だな。


「わかったわ」


 そう言って立ち上がるティア。


「じゃあなー」


「では、またお会いしましょう」


 軽く言うクレアと対照的なルシルに見送られ俺たちとアリスは王城を出たのだった。





_________________________________________________________________



「では、こちらの書類をギルドの受付にお渡ししてください。これで依頼は完了になります」


 アリスの家に着き、人心地着いた頃、アリスは書類をこちらに差し出しながらそう言った。


「ああ、ありがとう」


 俺はそれを受け取りながらお礼を言い、書類を仕舞う。


「じゃあ、俺たちはギルドに行くから。またな」


「はい。また会いに来てくださいね」


 そう言ってにっこりと笑うアリス。


 こうして俺たちはアリスの家を後にしてギルドに向かったのだった。


 それからギルドに到着し、受付に並ぶ。ティアが注目されているような気がするけど気にしない。また絡まれたりしたら嫌だなぁ。


 王都のギルドだけあってここは人がそれなりにいるようだった。しかし、商品が入ってきていないのがみんな分かっているのか道中の商店街は閑散としていた。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件ですか?」


「この依頼完了の書類とこれをここのギルドマスターに」


 俺はギルドカードを見せて、そう言いながら書類と手紙を受付に渡す。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう言った受付の人はギルドマスターがいるであろう奥の部屋に引っ込んでいった。それから受付で数分待っていると奥から受付の人が戻って


「すみませんがマスターがお呼びなのでついてきてもらってもいいでしょうか?」


 と、言った。俺はそれに「やっぱりか......」と思い了承する。


「わかった。案内してくれ」


 こうして案内された部屋はフローレス辺境伯領のギルドマスターの部屋と似たような作りの部屋で同じような場所に置いてあるソファーに座るよう促される。


「初めましてだね。私がここのギルドマスターのミリエラだよ。よろしくね」


 そう言って握手を求める女性。俺はその握手に答えながらも自己紹介をする。


「俺はリョウだ。こっちはティア。こちらこそよろしく」


 俺はその握手に答え、ミリエラの顔を見ながら自己紹介をする。紅い髪をロングにしてややキリっとした凛々しい顔立ちの女性だ。しかし、その顔に違和感を感じる。


「私はティアよ。よろしくね、エルフさん。それで隠しているつもり?」


「っ!?」


 ティアが珍しく自己紹介をしたと思ったら不思議な言葉を付け加えた。その言葉を聞いたミリエラも一瞬にして驚きと警戒の表情を浮かべる。俺はティアの言葉を聞いて違和感の正体を知った。顔に何らかの魔術をかけて認識を阻害していたようだ。


「あなた......何者なの?」


 辛うじてそう声を出したミリエラ。その表情には敵対も辞さない心情が表れているようだ。


「あら、ダニエルの手紙にはなんて書いてあったのかしら?」


 好戦的な笑みを見せるティア。なんなの? 吸血鬼とエルフって仲悪いの?


 俺は状況についていけずにおろおろするが、ミリエラとティアのにらみ合いは止まらない。


 こうして俺たちとミリエラ......というかエルフとの初の邂逅は始まったのだった。

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