第19話 王都へ

 翌日の朝。みんなそれぞれが朝食を食べ終えてから出発の準備をして、そろって野営した場所を出たのだった。現在いる場所から王都までは少なくとも八日ちょっとかかるらしいし、そんなに急いでもしょうがないということで馬車の速度はそこまで出していないみたいだ。自動車を知ってるとずいぶん遅く感じるけどな。今度、魔法で車作ろうかな。


 ちなみに昨日助けた騎士二名も朝に目を覚まし、準備していたところでずいぶんとお礼を言われた。そこまで恐縮されるとこちらも困ってしまうが。


「あー、暇だ」


 俺はアリスの馬車の上に座りながらボーっと前方を見つめて、つぶやく。今、何故かルシルとクレアまでもがアリスの馬車に乗り話に花を咲かせている。俺はなんとなく居心地が悪くなり、ティアを置いて出てきたのだ。


 そんなこんなで王都までの残りの数日間は何事もなく過ぎていったのだった。









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 さらに何事もなく日は過ぎ、ついに王都に到着した。王都はかなり広い範囲に外壁を設け、門のところにも厳重な身分確認や犯罪歴の有無の確認などがなされていて、普通なら入るのにも時間がかかるそうだ。しかし俺たちは、王族と公爵家、辺境伯家を連れ立っているため待ち時間なしで王都に入れたのだった。


「王都ってこんなもんなのか?」


 王都に入りしばらく進んでいたのだが、ふと、馬車の中から見える周囲が閑散としすぎているのに気づき、たまたま隣にいたクレアに聞く。


「いや、そんなことないはずなんだが。なんかおかしいな」


 クレアも不思議そうな様子で首をかしげる。


「これは何かあったのですかね?」


 そう言いながら王城の方を見つめるルシル。


「また、めんどうごとかなぁ」


 俺はボソッとそうつぶやく。しかし、そのつぶやきはティアに聞こえていたようで


「やーい、巻き込まれ体質ー」


 と、からかってくる。


「もしかしたらティアのほうかもしれないだろ。ギルドの時とかみたいに」


 そう言って反撃を試みるがティアはどこ吹く風だ。俺は抗議を諦めアリスの方を見る。


「俺たちってどこまでついていけばいいんだっけ」


 早いとこ離脱を図ろうとした俺だった。


「もちろん王城で私の挨拶が終わり、私の王城での住まいに着くまでですよ?」


 そう言いにっこりと笑うアリス。「ですよねー」となり、うなだれる俺。


「諦めてついて来いって。な?」


 そう言いながら肩をバシバシと笑いながら叩いてくるクレア。豪快だなぁ。


 そうやって会話をしながら進んでいき、しばらく経った頃。ついに王城に到着したのであった。





 今現在、アリスたちは国王に挨拶があるとかで先の部屋に進んでいき、俺たちは客間で休んでいるように言われたため、王城のメイドさんに案内された客間でくつろいでいるところだった。ティアなんかは寝てるしな。


コンコン


「はーい」


「失礼しますよ」


 ノックと共にそう言い入ってきたのは豪華な服を来たイケメンのおっさんだった。


「えー、と。どちら様で?」

 

 俺は戸惑いと共にそう質問する。


「俺か? 俺はこの国の国王だ」


 豪快な笑みと共にそう言い放つ国王。えぇ。何しに来たんだよ、この人。


「えーと、それでどのような御用で?」


「おお。そうだった。ルシルから聞いたが助けてくれたそうだな。お礼を言おうと思ってたんだ。それとは別に個人的に話もしたかったのでな」


 ふむ。お礼はわからなくもないが、個人的な話とは何だろう。


「お前のことはギースからの手紙で知っていた。だからこそ少し話したかったのだ」


 なるほど。俺は特に口止めとかしてなかったからなぁ。めんどくさくなったら逃げようかな。


「そう、嫌そうな顔をするな。とくにどうこうしようということではない」


 あっりゃ。顔に出てたか。まあ、いいか。


「なるほど。まあ、わかりました。それでどんなことをお話すればいいんでしょう?」


 こうして俺たちは、しばらくの間会話に興じたのであった。







「そう言えば、最近、王都に向かう馬車がだれかれ構わず魔獣に襲われているのを知っているか?」


 会話の中で唐突に国王が話題を振る。


「では王女様たちの馬車が襲われたのはそのためですかね?」


 心当たりがあるとしたらその程度だ。


「おそらくな。そこでお願いがあるんじゃが......」


 国王からのお願いって、断れなさそう。嫌な予感がする。


「では、失礼しm「待ってくれ」......なんでしょう?」


 俺は離脱を図った。しかし回り込まれてしまった。国王からは逃げられない。


「王都に向かう馬車が襲われていると聞いて、商人たちまでも王都に来るのを渋り始めた状況なのだ。なので今、王都はいろいろな物資が不足し始めている。なので原因の解明を頼みたいのだ」


「なぜ俺なんです? ただの冒険者であり、旅人ですよ?」


「Bランクだろう? それに実力に関してもルシルの護衛をしていた騎士から聞いている。そしてギースのやつも信用しているようだしな」


 これは断っても面倒になるかな。


「無論、報酬も用意しよう。先払いでこの王都に家を一軒と活動資金。原因を取り除けたらさらに上乗せだ。無理でも先払いのものは返さなくていい。どうだ?」


 うわぁ。破格の報酬じゃないですか。断らせる気ない奴だ。


「はぁ。わかりました。ティアもいいだろ?」


「ええ。かまわないわ」


 先ほどまで寝ていたティアは淀みなく答える。国王が来る直前から、寝たふりしてるの気付いてんだからな。


「起きていたのか......」


 国王が思ってもみなかったところからの返事に少し驚きながらつぶやいた。


「まあ。何にせよ、話は分かりました。できる限りのことはしますが、あまり期待はしないでくださいね」


 こうして俺たちと国王との話は終わったのだった。

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