第40話 ディール王国動乱⑤・終結

 帝国の襲撃を退け、落ち着きを見せた日の翌日。俺とティア、そしてリースはまた王城に来て、国王さん達と会っていた。


「今回はありがとう。本当に助かった」


 そう言って国王は俺たちに大量に金貨が入った木箱を渡そうとする。結構あるな。


「王都の復興に必要だろ? そんなにいらないよ」


 俺はそう言って箱の中にある金貨を人数分、つまり三枚ほど取って木箱を返した。


「一人一枚あれば十分うまいもの食えるしな。これでちょっといいもの食いに行こうぜ、ティア」


「そうね」


 そう言って俺たちは何を食べるかで国王そっちのけで相談を始めた。それを見ていた宰相さんは不思議なものを見るような目で見てきて、アリスとルシルは「わかっていましたよ」と言わんばかりの目で優しく笑っていた。


 その視線に気づいた俺は少し気恥しくなり、それには気が付かないふりをしたのだった。それからも国王が爵位やらなにやら渡そうとしてくるのをすべて辞退した俺は、この国の観光地の情報をもらい、それを報酬と言い張ったのだった。


 報酬の話がひと段落着いた後、俺はアリスに話しかけた。


「そう言えばアリス。アリスの家の騎士たちを家に帰してやらないとな。どうする?」


「そうですね。リョウ様の都合はどうなっていますか?」


「俺なら一週間くらいならいつでもいいぞ。なぁ、ティア」


「そうね。しばらく復興を眺めながらのんびりするのもいいかもしれないわね。ちょっと忙しかったし」


「というわけだ。しばらくのんびりしてるからいつでも言ってくれ」


 今後数日の予定に結論を出した俺はそう言った。


「わかりました。騎士たちにはに三日の休暇を出してから変える準備をさせますので四日後くらいでお願いします。また連絡を入れますね」


「了解」


 アリスの家の騎士たちの予定も決まり、用事がなくなった俺達は王城を後にした。






 王城を出て、市場の方に向かうとそこには前よりは活気が出ていた。道を行きかう人たちはまだ何が起こったのかは知らないようで操られていた時の記憶は、その期間ごときれいさっぱりなくなっていたようだ。しかし、戦闘や帝国が攻めてきていたという事実はきちんと壊れている建物などが証明しており、様々なうわさという形で徐々に人々に伝わっているようだった。まあ、殺しはしなかったが殴りつけたりした人はそこが痣になったりしてるはずだしね。それに正確な情報の発表も素実のうちに行われるはずだ。


「もうしばらくしたら、もうちょっと活気が出てきていろいろ買い物もできるかな?」


「そうなったらおいしいものを探しましょ?」


「そうだな。リースはどんなの食べたい?」


「リースはね。おいしいものがいい! おいしかったらなんでもいいの!」


「そっか。一緒に探そうな」


「うん!」


 リースの元気な返事にほんわかしつつ俺たちは襲撃の爪痕が残る王都の中を家に向かって進んでいく。途中、屋台が出ていたのでそこで昼飯を購入した。その屋台が売っていたのは見たことのない肉の串焼きだった。


「なんだろこれ」


「これは蛇の魔獣ね」


「へぇ......。へ?」


 蛇を食べる習慣がなかった俺は驚きの声を上げる。


「何に驚いているの?」


「蛇って食べるの?」


「そりゃ、いたら食べるわよ。さっぱりしてておいしいわよ?」


「そうなんだ」

 地球でも食べる人はいるのは知っていたし、なんなら日本でも食べれる場所はあったはずだ。蛇自体は見る分には抵抗のない俺だったが食べるのはちょっとな。そう考えた俺は自分の分は普通のイノシシの魔獣の肉の串焼きにして注文したのだった。リースは普通に蛇の方を食べていたので完全に習慣の違いだろう。俺はそう思うことにした。


「あ、でもこの串焼きもうまいな」


「そうね。それにしてもリョウは蛇が苦手だったのね」


「完全に食わず嫌いだけどな」


「そう」


 そんな会話をしながら俺たちは襲撃の傷跡が残っている王都の中を家に向かって歩いていくのだった。







 それから家に着いた俺たちは、リビングでくつろいでいた。


「ティア。しばらくゆっくりここで過ごした後はどこ行きたい?」


「そうね......。あ、隣の国に商業国だっけ? あそこならいろんなおいしいものがありそうね」


 ティアは先ほど国王たちから聞いた情報を思い出したのかそう言った。そうですか、第一に食べ物ですか。ぶれませんねぇ。まあ、ぜんぜん構わないのだが。


「じゃあ、そこにするか」


「ええ。そうしましょ」


「そう言えばこの家はどうするの?」


 次にどこ行くかの相談をっティアとしていると、ふとリースからそう声がかかる。


「この家か。そうだな、国王さんに頼んで管理だけやってもらうか。この国は内陸の中心の方の国みたいだし、ここに拠点があれば移動しやすいだろ」


 俺は少し考えながらそう提案する。


「いいと思うわよ」


 それにティアも賛同してくれた。


「じゃ、決定で」


 こうして俺たちはリビングでくつろぎながら、これからのことを相談したり、雑談をしながらこの日を過ごしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る