遺跡探索
第1話 ウッドを迎えに
ウカの持ってきた地図を見ていた俺たちだが、ふと視線を窓の方向へと向ける。結構な時間が立つほど地図を見ながら話し込んでいたようで、外は大分日が傾き、夕焼け空になっていた。
「おっと、俺は一旦ウッドを迎えに行ってくる」
「分かったわ」
「分かりました」
俺の言葉にティアとウカは頷いて返事を返す。俺はそれに一つ頷いて返すとウッドがいる村の少し離れた場所へと転移で移動する。一瞬で視点が変わった後、目に入って来たのはウッドがいる村のそばにある森の木々である。
「さてと、ウッドはどうしてるかね」
俺はそう独り言を言いながら村へ向かって足を進める。村の入り口の方まで進んで行くとそこ付近で作業をしていた村人が俺に気付き視線を向けた。
「あ、リョウさん……でしたよね?」
「ああ、ウッドはどうしてる?」
「ウッドならお墓参りが終わったあと、いろいろな人とお話してましたよ」
「わかった。どこにいるか分かるか?」
「今なら村長さんのところだと思います。ここからまっすぐ行って一番大きな家なのですぐわかると思います。もしわからなくても皆知っている家なので、誰かに聞いてもらえれば……」
「そうか、ありがとう」
「いえいえ」
親切に道まで教えてくれた村人にお礼を言うと、俺はウッドがいるという村長の所へと向かって歩いて行く。すると村人が言っていた通り、見えてきたのはこの村の中でも一番大きな建物であった。とは言っても、村の中で一番大きいと言うだけではあるが。そしてそこの入り口にウッドはいた。何やら立ち話をしている様子だ。
「あ、リョウさん」
俺が近づいてきたのに気付いたウッドが視線をこちらに向けて口を開いた。
「ああ、迎えに来たがもう大丈夫そうか?」
「はい、ありがとうございます。それと私の隣にいるのがこの村の村長さんです」
俺の言葉にウッドはそう言うとその隣の人物に目をやってそう紹介した。
「はじめまして、この村の村長をやっているものです。ウッドを助けてくれてありがとうございました」
「気にするな。成り行きだしな」
俺は村長にそう返事を返すと、ウッドに視線をやる。俺の視線の意味に気付いたのかウッドは頷くと、村長の方へと向きなおす。
「では、もう行こうと思います」
「そうか。また会えることを祈っている」
「はい、ありがとうございます」
村長の言葉にお礼を言ったウッドは頭を下げて返事を返す。俺はそれを見届けると二人に向けて背を向けて村の外に出る方向へ向けて足を進め始める。それを見たウッドは再度村長へ向けて軽く会釈をすると俺の後ろについてくる。そこで俺はふと思いウッドに視線を向けて口を開いた。
「そう言えばウッドの家ってまだあるのか?」
「え、はい。そうですね。ありますよ」
「そうか、どこだ?」
俺の言葉に不思議そうにしながらもウッドは自分の家の方を指さして説明する。
「ここから少し言ったところですけど。どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと思ったことがあってな。いつでもこの村に顔を出せるようにと思ってな」
「それって……、いえ、ありがとうございます」
俺の言葉にウッドはハッとなって視線をこちらに向け、そしてその言葉の意味に気付いてそう言った。俺はそんなウッドに苦笑しながらも気にしないように言って、ウッドの家へ少し寄り道し、転移用の細工をするとウッドをディール王国の家に送り届けるのだった。
(side ティア)
リョウがウッドを迎えに行くと出て行くのを見送った私は、再度地図に視線を戻す。そこに書かれている内容は何度見ても変わるわけではないが、それでもなぜだか気になってしまう。そしてあることを思い出した。
「ティアさん、どうかしたんですか?」
「ええ、少し気になってね」
私の様子にウカが疑問に思ってか声をかけてくる。そう言えばと思いウカに視線をやって口を開く。
「ウカ、他の紙も全部地図なのかしら?」
「あ、そう言えば言ってませんでしたね。全部地図とそれの説明書きみたいですよ」
「それを少し見せてもらえる?」
「はい、勿論です」
私の言葉にウカは笑って返事を返し、腕に抱えていた紙の束を渡してくれる。私はそれを受け取って一枚一枚広げて確認していく。それはすべてワトスが書いた地図と説明書きであった。
「なるほど……」
それを見た私はそうひとり呟く。
「何かわかったんですか?」
「ええ、少しは、って所かしら」
ウカの言葉に私はそう返すと、その説明書きの一つを手に取ってウカに見せる。ウカの視線が私が持つ紙に行ったのを確認した私はそこに向けて魔法を使う。それは久しく使うことのなかった魔法でもあった。
「何をするんですか?」
「これにはある魔法を使うとさらに情報が出てくるように細工してあるのよ」
「へぇー、そんな魔法があるんですね」
私の言葉を証明するようにその説明書きにはなかった空白の場所に新たに文字が浮き出てくる。そこに書かれている文字を見た私は、その文字を読もうとする。
「ああ、やっぱり、ね」
「へ?」
納得する私と同じく出てきた文字を呼んだウカが間の抜けた声を出すのであった。
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