第52話 ウカ、活躍する!?

 俺は外の気配に向かってウカを置いて先に出た。そしてその気配の方に向かって声をかける。

 

「何の用だ?」


 外に出ると警備兵がたくさんいてその奥に私兵かと思われる武装した男たちに守られていたジョイたちがいた。会議所を襲撃した時に気絶させたからよく覚えている。


 つまらないことばかり言って俺をイラつかせてくれた奴だしな。


「決まっているだろう。会議所襲撃の罪人だ。捕まらないと思っていたのか?」


 ジョイがそんなことをどや顔で言い放つ。


「こいつはそう言っているが、そこの二人も同意見と言うことでいいのか?」


 俺はジョイの隣に同じようにまとまっている会議所で見た奴らの中の残り二人(名前は知らない)に声をかける。


「当たり前だ」


「わ、私もです」


 俺に声をかけられた二人がそれぞれ返事をする。こいつらはアホなのか? あの時もろくに動けなかった奴らが今更来たってどうするつもりなんだろう。


「ジョイさん、アントさん、プラギさん!! 何してるんですか!?」


 そして遅ればせながら後ろについてきたウカが怒ったようにそう言った。気配は分かっても誰かは分かっていなかったようだ。


「ウカ、お前も同罪だ!」


 ジョイはお友達をたくさん連れて安心しきったのか、ウカにまでそう叫ぶ。これ以上ないほどどや顔だ。見ていて痛々しい。


「いったいどういうつもりです?」


 ウカは冷静になろうとしてるのか怒りを抑えているような表情で尋ねる。狐耳と尻尾が逆立っている。見てるだけなら小動物が威嚇しているようで和むんだけどなぁ。


「どういうも何もない。我が国の会議所を襲撃した罪人をかばうお前たちも同罪と言うだけのことだ。それに―――」


 ジョイは朗々とそう語る。ウカはその語りに怒りを通り越して呆れたような表情になる。


「で、ついてきている警備兵たちも同意見でいいのか? それとも上からの指示にいやいや従っているだけか?」


 俺はジョイの語りを無視して警備兵にも問いかけた。無視される形となったジョイは憤怒の表情でこちらを睨みつけてくる。


「当たり前だ」


 警備兵の隊長っぽい人がそう宣言する。


「そうか……」


 俺はため息とともにそう言った。こりゃ、いくらか金をもらっているな。警備兵あたりには真相をプタハが説明しているはずだからだ。


「これだけの人数だ。抵抗するのは無駄だ」


 警備兵の隊長はそう言って近づいてくる。


「こっちくんな」


 俺はそう言って警備兵の隊長の首を飛ばした。


「「「「「!?」」」」」


 この場にいる誰もが俺の一瞬の攻撃に目を見張る。やったことは警備兵の隊長に向かってかまいたちを魔法で飛ばしただけである。


「おい、ウカ。もういいだろ?」


 俺はウカの方に振り向いてそう言う。


「はい。しょうがないです。もういいです」


 ウカのあれだけころころ変わっていた表情がなくなった。完全に見切りをつけたような顔である。


「さて、お前たちは俺が見逃してやったのにあえて来たんだ。覚悟はできてるんだろうな?」


「何を言う! さっきのも不意打ちだろうが!! この人数に本気で勝てると思っているのか!?」


 俺の問いかけに対してジョイがそう叫ぶ。確かに人数だけなら数十人はいるためめんどくさい。だが、それだけだ。こいつらはティアほど強くないだろう。


「もういいです、リョウさん。問答するだけ無駄です」


「ウカ?」


 突然ウカがそう言う。ウカのいきなりの発言に俺が呼びかけると、ウカは答えず前に進み出た。


「せっかくリョウさんはチャンスをくれたのに……」


 ウカは表情を消したままいきなり警備兵の中に突っ込んでいった。そしていつの間に取り出したのか手には短剣が握られている。


「おお」


 俺は思わず感嘆の言葉を吐いた。突っ込んでいったウカが流れるような動きで確実に首の動脈を切り裂いていったからだ。


「なっ!?」


 ウカの動きを見て、ジョイが驚いたような声を発している。それにしてウカってあんな動きができたんだな。


「ジョイさんたちも覚悟してくださいね」


 ウカは途中で立ち止まってそう言った。それを聞いたジョイたちは驚きと怒りがないまぜになったような表情をする。


「俺も奴らが逃げる前に処理するか」


 俺はそう呟いてジョイたちの私兵と思わしき者たちから処理していった。積極的に殺そうとは思わないが、敵対するなら致し方なし、だろう。


 こうしてウカと協力しながら敵になった者たちを倒していくと、思いの他早くに残りはジョイたちだけになった。ウカが想像以上に強くて楽ができた。


「ウカ。そんなに強かったんだな」


 俺は返り血にまみれているウカにそう言った。


「だてに200年以上も生きてませんよ」


 ウカは俺に対して悲しそうに見えながらも苦笑してそう答えた。


「さて、あとはあいつらだけだ」


「そうですね」


 こうして俺とウカは、連れてきた者たちを全滅させられたジョイたちと対峙する。俺たちと目が合ったジョイたちはひるんだように後ろに下がる。


「どこに行くつもりだ?」


 俺は三人を逃がさないように後ろに魔法で壁を作った。地面をせりあがらせる形で壁ができ、ジョイたちの退路がなくなる。


「さあ、どういうつもりか話してもらおうか? 納得ができる話を聞かせてくれたら生きて帰れるかもな?」


 俺はにやりと笑ってそう言うのだった。

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