第55話 後処理
ウカが喜んでいるのをしり目に俺とプタハは話を続ける。
「この辺に転がっているのはいるか?」
俺は自分の周りにある死体の山を見てそう言った。
「いや、いらないな」
プタハも俺の視線の方向に目を向けてそう答える。しかしこの世界は死人の扱いもそんなに良くないな。
「叩けば埃が出るような奴らばかりに見える。そう言うのを集めたんだろう」
死体の顔を見ていたディドがそう言ってくる。
「知っている奴なのか?」
「悪い意味でな」
俺の問いに肩をすくめてディドが答えた。
「そう言うことならこの死体の山はこっちで片付けていいな?」
「できるのか?」
「もちろん」
俺はディドの質問に答えながら、魔法を行使する。使うのは炎だ。火葬だな。
「おお」
誰かからは分からないが感嘆の声が聞こえる。骨も残さないように高温で焼き切るようにと、かなり高温にした。そのため、普通の魔術師が使うような火を使う魔術の色とは違う。色の違う火なんてのは初めて見たのだろう。ついでに地面が熱でガラス化するのを防ぐために、俺は地面にも魔力を通して保護する。その魔力の流れを感じたのか、ウカが身構えた。
「どうしたんだ、ウカ?」
プタハが身構えたウカにそう問いかける。
「いえ、地面にもたくさんの魔力が通ったので、一瞬身構えてしまいました」
ウカは苦笑しながらそう答える。
「気付いたのか?」
「もちろん」
俺がウカに問いかけると、そう返事が返ってくる。そんなやり取りをしているうちに、この場にあった亡骸はすべて燃え尽き、無事に火葬を終えた。
「はぁー、終了。今日はもう終わり」
俺はため息を吐きつつそう言った。
「お疲れ様です、リョウさん」
ウカも苦笑しながら俺に声をかけた。
「手伝ってくれてもよかったんだぞ?」
「いや、そんなに魔力はありませんよ」
俺がウカに向かってそう言うと、すぐに否定される。何をしていたかはわかってるんだな。
「あとの処理は任せてもいいか?」
俺はウカに苦笑を向けると、プタハにそう言った。
「ああ、これだけリョウに手間をかけさせたんだ。残りのことは任せろ」
プタハそう言って連れてきていた部下に指示を出し始める。
「じゃあ、俺は今日は帰るわ」
「おう」
「「はい」」
「じゃあな」
それぞれの返事を聞きながら俺とウカは家に入っていった。
ふと、横を見ると狐耳の少女が視界に入る。
「なんでいるの?」
俺は思わずそう聞いてしまった。
「え?」
ウカは何を聞かれているかわからない、というような表情を見せる。
「いや、え? じゃなくてな。あれ、お前は仕事はないのか?」
「そんなのありませんよ?」
「そ、そうか」
俺はウカにこれ以上何かを聞くのをやめた。存外、自由な奴である。
そして俺たちはリビングに戻ると、俺はお茶を入れてウカにも出してやる。
「あ、ありがとうございます」
ウカは俺からお茶を受け取り一口飲むと「ふぅ」と吐息を吐き出した。狐耳と尻尾も垂れてリラックスした状態だ。
「そう言えば昼飯を食べそびれたな。何か食べるか?」
俺はふとそう思いだしてウカに尋ねた。
「そうですね。何があるんです?」
「材料なら一通り。すでにできた物だったらさっきの串焼きとか屋台のものが大半だな。あとは食べに出るか、かな」
俺はウカの質問に答える。
「リョウさんって料理できるんですか?」
ウカは俺にそう聞いた。
「できるぞ。一応はってレベルだが。旅をしている間とかは俺が料理を担当しているしな」
俺はウカの質問に答えながら、ウカにも俺の質問の答えを促す。
「じゃあ、リョウさんの料理を食べてみたいです」
ウカは俺にそう答えた。
「了解」
俺はそう答えながら料理の準備をしていく。
「もう、簡単なものでいいだろ?」
「構いませんよ」
俺は準備しながらウカにそう聞いた。ウカもそんなに凝ったものを希望せずそう答える。
準備したものは簡単だ。小麦粉や塩コショウ、そしてバターや野菜の出汁と牛乳を使ってホワイトソースを作り、ちぎったパンにかけて上にチーズを乗っける。そして魔法で焼き上げる。超簡単なグラタン風だ。
「できたぞ」
俺はそう言ってウカの前に作った料理を出す。
「わあ」
ウカは思ったよりも嬉しそうに反応した。超簡単な手抜きなのにな。
それぞれが食べ終わり、再度一息入れた頃、俺はウカに問いかける。
「今日はもう向こうに戻るつもりだがウカはどうする?」
「ついていきますよ? 明日、またこっちに送ってください」
ウカはそう答えて笑う。初対面の頃よりも自由にふるまっているウカを見て、俺も笑った。
「わかった」
俺はそう言ってディール王国の王都にある、家に向かってウカを連れて転移したのだった。ウカに何も言わず、いきなり転移したのでウカは目を白黒させている。
「え。ここどこですか?」
ウカはそのまま疑問を口にする。
「ディール王国の王都だな」
俺は簡潔に答えた。
「え、そんな一瞬で……」
驚きで固まったウカは、きょろきょろと周りを見渡していた。
「ボーっとしてないで中に入るぞ」
俺はウカの方へ視線だけ向けて、そう言って先に進む。そして玄関を開け、中に入ろうとした段階でウカは慌ててついてきた。
「あ、待ってくださいよー」
ウカも中に入ったのを確認した俺は玄関を閉める。そしてリビングへと案内するのだった。
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