第35話 ディール王国動乱①・リョウの戦い
俺たちは一旦国王達のところから離れてルシルの案内で客間の一つに向かった。そこで国王達からもらった報告書を呼んだのだった。
国王に渡された報告書にはこう書かれていた。
・民衆の暴動が発生。
・対処に間に合わず、商店や衛兵の詰め所の襲撃が発生。
・被害多数。
ぐらいしか書かれていない。これ口頭でよかったんじゃない? それくらい焦っていたのかな。
「とりあえず、リョウ様たちは外の様子を民衆に紛れてみてきてくれませんか? 直接見ればわかることもあるかもしれないですし」
ルシルはこちらにそう提案してくる。
「わかった。リースは消えた状態で俺たちについてこれるか?」
俺はルシルの提案に頷くとリースに向かってそう言った。
「......うん。できる」
少し考えてからそう返事したリースはスーッと消えていくと見えなくなった。
「この状態でいい?」
リースが声だけを伝えてくる。俺はそれに笑って
「大丈夫。ありがとう」
と伝えるとティアの方を向いて目を合わす。ティアが頷くと、俺たちは転移で王城の外に出たのだった。
王城の外は酷いものだった。誰もが表情を怒りに染めて武器を手にして暴れまわっている。
「うわぁ。これは酷いな」
俺は思わずそう呟く。
「ねぇ、リョウ。なんかこの人たちに違和感がない?」
うわぁという感想しか感じてなかった俺だが、ティアは何か考えていたようで俺にそう聞いてくる。
「違和感ねぇ」
俺はそう言いながら暴れている民衆を見る。民衆をよく見ると何やら魔術的なつながりが見えてくる。
「これは......」
俺はそう言いながらティアの方を見る。
「やっぱりリョウも気付くわよね」
「この魔術って、操る系のやつか?」
民衆たちには不自然に外部からの魔術の跡が確認できたのだ。
「そうね。これは術者を探すことから始めないといけないわね」
そう言ってため息を吐くティア。確かに何ともまぁ、ここまでめんどくさいことになったもんだ。
「じゃあ、まぁ、目についた人たちの魔術の不自然なつながりを切りながら探すか」
「そうね」
俺たちは二手に分かれて術者を探しながら民衆を魔術の回路から切り離して気絶させていったのだった。
_________________________________________________________________
<リョウ視点>
「数だけは多いな」
俺はそう呟きながら民衆を操っている魔術をつぶして回っていた。術者も俺の存在に気付いたのか民衆を俺に差し向けるようになっていた。
「ちっ! 切り飛ばすわけにはいかないのがまためんどくさいな。ティアのやつは問答無用で消し飛ばしそうだけどさすがにしないよな。大丈夫かな」
俺とティアの価値観はもちろん違うし、過激にやっていないか不安になってくる。
そんなことを考えながら三十分くらい術者を探して回っているとふと強い気配を感じた。
「お前は何者だ?」
俺の目の前に現れたのは屈強そうな見た目の大きな男だった。
「俺はただの一般市民だよ」
俺はとりあえず当たり障りのない答えを返す。
「それよりもこれは何が起こっているか知ってるか?」
俺はこのタイミングで声をかけてきたのには意味があるのだろうとあたりを付け、情報を引き出すために会話を続ける。
「さあな、私にもさっぱりだ。だが、今ここで民衆すべてを止められると困るのでな」
そう言いながら何らかの魔術を俺に向かって撃ってくる男。つーか、やっぱ犯人側じゃん。
「えぇ。帝国の諜報員ってこんなに大雑把なの?」
俺は煽るようにそう言う。一応確認のためのカマかけだ。
「貴様っ! どこでそれを!?」
「あっ。やっぱ帝国の諜報員さんなのね。情報をありがと」
俺はそう言ってさらに煽る。よかったらもっと情報を吐いてくれてもいいのよ?
「ちっ!」
しかし男はこれ以上の会話には応じてくれず、黙ってこちらに攻撃してくるのみとなってしまった。
男は剣を抜いてこちらに切りかかってくる。俺はそれを避けながら電撃の魔法を放った。
「ちっ! ちょこまかとよけやがって」
俺はそう吐き捨てて収納から剣を取り出した。魔法では避けられるので牽制に魔法を使う戦法に切り替える。
「てか、そろそろ何か言ってくれない? 俺だけ喋り続けてると馬鹿みたいじゃん」
そう言いながら俺は剣に魔法で電撃を付与して斬撃を飛ばす。
「貴様に話すことなどない」
そう言いながら俺の攻撃を避けて魔術を放つ男。これは風の魔術かな? 俺はそうあたりをつけてその魔術に含まれている魔力を自分の魔力を当てて霧散させる。
「貴様っ! 今何をした!?」
「馬鹿正直に話すわけないじゃん」
俺はそう言って自分の周りに小規模な旋風を発生させて男の方に向かわせる。てか、これ周りにも被害出そう。あとで起こられないようにごまかさなきゃ。
「クソッ!」
男はそう言いながら懐から何かを取り出そうとする。あれは以前戦った軽薄な笑みを浮かべていた男が使った転移の魔術道具かな?
「そう簡単に逃がすわけにはいかないんですよっと」
俺はそう言いながら土の魔法を使い銃弾を生み出すと、男の腕と手に向かって撃ち込んだ。男はそれに対応できずに撃ち抜かれ、転移の魔術具は砕かれた上に、片腕を吹き飛ばされたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます