第19話 家宅捜査 ~リョウの場合③
二階に上がった俺は侯爵探しを続けるために気配を探る。
「おー、結構人がいるな。外に出てきた奴らよりも多い感じかな」
俺は感じ取った気配の数を見てうんざりした様にそう呟いた。さて、一番人が多いところに向かうかな。そう決めた俺は人が一番集まってる部屋に向けて歩く。やがて俺はその部屋の扉の前に到着した。
「ここかな」
そう言いながら扉をノックする。
「だ、誰だっ!!」
扉の奥の方から怯えたような誰何が聞こえてくる。さらに気配の方も声を出したのとは別に五人ほど感じられた。他の部屋は三人ずつくらいしか感じられない。さらに扉にはカギがかかっているのか扉を押しても開かなかった。
「国王陛下からの使いです」
俺はとりあえずそう返事を返す。嘘はついていないしな。
「国王陛下からの使いだと?」
中から戸惑ったような声が聞こえる。
「とりあえず開けてもらってもいいですかね?」
俺はそう言いながら意味もなくガチャガチャしてみる。
「待て、勝手に開けようとするんじゃない。今は緊急事態なのだ」
中からそんなことを言ってくる。
「緊急事態ですか?」
俺は何も知らないかのようにそう聞き返す。
「そうだ。何者かに襲撃を受けているのだ。屋敷の門や屋根がやられている」
あ、それやったの俺だわ。てか、何も報告受けてないのかな。もういいかな。俺はそう考え魔法を使って扉を壊した。ガシャンという音と共に扉が砕け散り中が言えるようになる。
「何をするっ!!」
奥に見えるでっぷりと太ったおっさんが叫んでいる。その周りに盗賊のような護衛が剣を抜いて待機していた。
「ああ、言い忘れていたけど門や屋根ををやったのも玄関を吹き飛ばしたのも俺だよ」
そう言いながら電撃の魔法を護衛に飛ばして気絶させる。護衛たちは驚きに目を見開きながらも何もできずに倒れていった。
「ひぃ!」
おっさんが悲鳴を上げて震えているが見ていて面白いものでもないし早く終わらせようかな。
「あんたがデルマ侯爵か?」
「そ、そうだ。お前っ! 何をしているのかわかっているのか!?」
何言ってんだこいつ。俺は首をかしげて言葉を待ってみる。
「侯爵である私の屋敷を襲撃してただで済むと思うなよ!」
「はぁ、そうですか」
俺は続いて出たデルマ侯爵の発言に呆れて適当に返事を返した後に護衛たちと同じように気絶させたのだった。
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「終わったぞ」
俺はそう言いながら一回を慎重に家宅捜査しているウォリック達騎士のところに、気絶している侯爵を引き釣りながらやって来た。
「おお、リョウ。そろそろ二階にも向かおうとしていたところだったのだ。デルマ侯爵を捕まえてくれたのだな」
「ああ、簡単な仕事ではあったな」
俺はデルマ侯爵との短いやり取りを思い出し、苦笑いでしながらそう答えた。
「一応聞いておくが殺してないよな?」
「当たり前だ。俺を何だと思ってるんだ」
「歩く非常識?」
「おい」
笑いながらそう言ったウォリックに対し俺は苦虫を噛みつぶしたような表情になり突っ込みを入れる。酷い言様である。
「はは、冗談だよ」
ウォリックは笑い声をあげてそう言った。
「ところで隠し部屋とかがないか探せないか?」
一変して真面目な表情になったウォリックは雰囲気を変えて俺にそう聞いてくる。
「……少し時間をもらってもいいなら探すが?」
ウォリックの雰囲気に会わせて俺も真面目に考えて返事をする。
「じゃあ、頼む」
「わかった。見つけたら声をかける」
そう答えた俺は気配の探知を全開にして周囲に魔力を充満させる。そして魔力を建物全体まで行き渡らせて、不自然な空間がないかを探す。
「おっと、これかな」
俺はそう独り言ちると不自然な空間まで歩いて行く。感じた魔力を頼りに歩いて行くとやがて物置のような部屋にたどり着いた。
「失礼しますよーっと」
そう言いながら中に入り様子をうかがう。床を見ると不自然な場所で足跡がなくなっている所を見つけた。さらに足跡が途切れている場所の少し奥から床板が不自然に浮いているように見える。
「隠し方へたくそかよ」
俺は思わず呆れてそう呟くと床板を外した。予想通り床板を外すと地下へと降りれる階段を発見する。さて、ウォリックを呼ぶかな。そう考えた俺はその場を放置して元居た場所に戻っていく。
俺はウォリックを呼び、先ほどの地下への階段のある所まで連れてきた。
「こんな場所に入り口があったのか」
「ああ、でもここにたどり着きさえすれば足跡見れば一発だよ。あまり隠す気はなかったのかと思ってしまったよ」
「違いない」
ウォリックは俺の言葉にククッと笑いながらそう言って地下を覗き込む。
「……下に何があると思う?」
少し考えたウォリックはこちらを見てそう聞いてきた。
「……わからん。だけど結構この下の空間広いぞ」
俺も少し考えてから結論と下の様子を伝える。
「どのくらいの広さかわかるか」
「んー、おそらく街の半分」
「なんだと? 本当か?」
「ここで嘘言ってもしょうがないだろ」
なんと、壁伝いに魔力を這わせてみるとそれくらい広がっていったのだ。
「そうか、これは騎士の増員を頼んだ方がいいかもしれんな」
考え込んだウォリックはそう言ってこちらを見る。
「はぁ、わかった。連れてくるから待ってってくれ。それまではここは閉鎖してほかの場所を探しててくれ」
「わかった。ありがとう」
俺はため息を吐くとウォリックのその返事を聞いた後、王都に向かって転移したのだった。
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