第13話 初依頼
「今日の午前中は試しに依頼を受けてみよう」
翌日、俺は朝食を食べた後にティアにそう告げる。
「ええ。構わないわよ。午後はどうするの?」
「一回ここに戻ってきてアリスを連れて昨日の散策の続きだな。どうだ?」
約束を守るのは早い方がいいだろうと思いティアに提案する。
「いいんじゃないかしら」
「よし。じゃあ、このことをアリスに伝えてくるな。そのあと出発しよう」
こうしてひとまずアリスに会いに行き、今日の予定を告げた後俺たちは冒険者ギルドへ向かったのだった。
「よっと。これでおわりかな?」
俺はそう言いながら袈裟懸けに猿のような魔獣を切り裂いた。
冒険者ギルドに向かった俺達は、近くの村で魔獣によって畑や家畜に被害を与える魔獣の討伐の依頼を受けた。
「そうね。周りにはいなさそうよ」
そう言ってこちらに向かってきたティアさん。でもね、あなたほとんど何もしてないじゃないじゃ。
「少しは魔法の威力落とせないのか? それに別に剣が使えないわけじゃないだろう?」
そうなのだ。ティアは最初は参加しようとして魔法を使ったのだが、威力が強すぎて環境破壊者と化してしまう。そのため最初の一発以降は俺が魔獣をすべて倒していた。
「剣を使うのは面倒だからいやよ。それに魔法だってあれでも抑えているのよ」
「さいですか」
俺はこれ以上抗議するのは諦めて魔獣の死体を回収し、村がある方へ向かう。
「早く帰って依頼を完了させよう。そしたらアリスを連れて観光の続きだな」
「そうね。昨日の串焼きをまた食べたいわ」
気持ちはわかる。
「それはアリスの希望次第だな」
「むぅ」
そんな会話をしながら村に到着。その入り口には村長の爺さんとそのお孫さんの女の子が立っていた。
「村長さん。終わりましたよ」
「リョウさん。ありがとうございます。これで少しは安心して生活できそうじゃ。これが依頼達成の証明書じゃ。どうぞ持って行っとくれ」
そう言いながら村長さんのサインが書かれた紙を渡される。
「はい確かに。では俺たちはこれで」
証明書を受け取った俺が帰ろうとすると
「リョウおにいちゃん。またきてね」
村長さんのお孫さんが腰に抱き着いてきてそう言った。なぜか無茶苦茶気に入られてるんだけど......。お菓子あげたからかな。
「また何かあったら来るよ。じゃあね」
そう言いながら俺は手を振ってその村を後にした。
「はい。依頼達成お疲れさまでした」
俺たちは村からフローレス辺境伯領の街に帰ってきて、まずギルドに依頼を達成した報告をしていた。
「初依頼はどうでしたか?」
受付にいたのは昨日と同じでミーナだった。
「そうだな。畑とかを荒らしていたのは猿とかイノシシの魔獣だったし大して強くもなかったしな。まあ、簡単だったんじゃないかな」
俺は依頼をしてみた感想を伝える。
「......。ちなみに何体ぐらい討伐されたんですか?」
ミーナが不安げな表情で聞いてきた。
「ティア。何体だっけ?」
「確か、猿が二十体くらいの群れ二つでイノシシの親子が三グループぐらいじゃなかったかしら」
「だってさ」
「普通もっと大人数でする依頼になりますね......。それ」
ミーナさんの笑顔が引きつる。
「まあ、気にするな☆」
俺はミーナさんに現実逃避をおすすめした。
「じゃあ、素材だして帰るな。また来るよ」
報告は終わったのであとは素材を買い取ってもらうだけである。
「はい。またお願いしますね」
そして俺たちはそのまま奥のカウンターへ
「どういったご用件ですか?」
受付に着くなりそう問われる。昨日はガルだったけど臨時だって言っていたしな。受付にはきりっとした感じのお姉さんがいた。
「魔獣素材を買い取ってもらいたい。それとガルいるかな?」
「少々お待ちください」
そう言って受付のお姉さんは奥に入っていった。体感時間で三分ほどたったころ、先ほどのお姉さんはガルを連れて戻ってきた。
「おう。お前さんらか。じゃあ奥行くか」
そう言って俺たちは昨日も入った部屋に向かう。
「で、今日はなんだ?」
警戒した様にそう聞いてくるガルに
「依頼で討伐したやつだよ。森のやつじゃないからそう警戒すんなって」
と、安心するよう言っておく。「よかった」っと安心した様に胸をなでおろしたガルに
「とりあえず猿の魔獣とイノシシの魔獣なんだがそれぞれ群れが二~三個分だな」
と告げる俺。
「数がおかしい!!」
「うおっ?」
俺はいきなり叫ぶガルに驚いき、耳をふさいだ。
「急にどうしたんだよ」
抗議の声を上げる俺に対しガルは
「普通にできねぇのか?」
と、呆れの表情を見せる。
「そう言われても向かってきたやつらを駆除しただけなんだがなぁ」
なんだかんだ言ってしっかり買い取ってくれました。
_________________________________________________________________
「こっちです!」
アリスがそう言いながら嬉しそうに俺の手を引いて先に進む。
ギルドで魔獣を買い取ってもらった後、俺たちは一度辺境伯邸に戻り、アリスを連れて再度街へ繰り出した。今はアリスのおすすめだという屋台に向かっているところだ。何だろう。この後の展開がなんだか読めるぞ。
「ここです!」
若干のどや顔を見せながら連れてこられた屋台はまあ皆さんの想像通り、昨日きた串焼きの屋台であった。
「確かにここの屋台の串焼きはうまかったな」
「そうね。ほら、リョウ。私は二十本ね」
「あら。もう昨日こられてたんですね」
「気にするな。ティアのお気に入りだからどうせ来るつもりだったしな」
すでに俺たちが知っていたと知りちょっと残念そうなアリスを慰める。あとティア。ナチュラルにパシるなよ。まあ、買うんだけれども。「兄ちゃん、今日も来たのか?」と言いたげな店主に串焼きを俺とティア、アリスの分も含めて三十本購入。昨日と同じベンチに座って舌鼓を打つ。
そのあとまた別のアリスのおすすめの屋台やティアが興味を持ったお店を見て回ったりして過ごしたのだった。そしてアクセサリーショップでちょっとした髪飾りを二人にプレゼントしたり、服を見て回ったりしているとだんだんと日が落ち始めてきたので家路につく。
こうして初依頼を終えた俺たちは、またその日一日も楽しく終えるのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます