第38話 再度、王城へ
鬱陶しかった警備兵の隊長をリースが片付けて合流した後、俺たちはそのまま王城へと向かっている。俺たちを追ってきているのもいるが、先ほど忠告した警備兵の隊長の部下たちは俺たちを恐れてか追ってきていない。
そして王城に向かっている最中にウカが不思議そうに俺に声をかけた。
「リースちゃんあんなとこにいたんですね。知ってたんですか?」
「いや、知らなかったぞ。てか、リースが本気で隠れたら俺には分からん」
「え、じゃあなんであそこで指示が出せたんですか?」
俺の言葉にウカは本気で不思議そうな表情になり、聞いてくる。
「そりゃ、ティアとリースを残して俺たちは王城に向かったんだからどこかにはいるだろう?」
「それはそうですけど」
「後は勘だ」
俺の適当な言葉にウカは本気で呆れたような表情になりため息を吐く。そんなやり取りをしている間も、警備兵たちがついてきているのを感じる。俺はその気配の方向に魔法で電撃を作って放ちながらウカやティアに向かって口を開く。
「それよりもまだ何か追ってきてるぞ? 別動隊か?」
「そうだと思います。それにしても王城の方からも来てません?」
ウカが俺の疑問に答えながらも狐耳を震わせてそう口にする。ウカに言われた通りに気配を探ると確かに王城の方からも集団が出てくる気配を感じる。
「ほんとだな。もしそうだったら向こうは俺たちと本気で戦うつもりなのか?」
「アデオナ王国が本気で私たちに向けて兵を動かしたのだとすれば、何人出てくるんでしょうね?」
「嫌な質問だなそれ。ティアがいるし何とかはなると思うが面倒だぞ」
俺はそう言いながら振り向いて新たな警備兵の集団を気絶させる。こうなってくるともはや作業と言っても過言ではない。そこで俺の作業のような動きを呆れたように見ていたティアが口を開いた。
「ねぇ、リョウ。転移じゃダメなのかしら?」
「だめじゃないが?」
「じゃあ、なんで転移しないの?」
「そう言えばなんでだろうな。そう簡単にポンポン転移してたら、なんかダメ人間になる気がして使ってなかったが……」
ティアの言葉に俺はハッと気付かされる。確かにさっさと転移してしまえばいい。こんな面倒なことにいつまでも時間を作るよりもそうした方が効率的だ。
「じゃあ、転移してしまうか。さっさと王城に向かってこのバカ騒ぎを終わらせてしまおう」
「それがいいですね」
俺の言葉にウカが同意して頷く。俺はそれを見て、皆を連れて王城の前に転移の魔法を使う。そして俺たちが出てくると、今にも王城から出撃しようとしている警備兵と鉢合わせになった。
「なっ!?!!??」
俺たちが急に目の前に現れて、驚いて固まる警備兵や門番たち。門番たちは俺たちが王城から出て行ったのを見ていたので余計に驚いただろうし、警備兵も今まさに対処しに行こうとしているティアが目の前に現れたので動揺を見せている。
「通らしてもらうぞ」
俺は門番に視線をやり、城門を通ろうとする。俺の言葉にハッとなった門番があわてて俺を止めようとした。
「いや、ちょっと待て。なんで入ろうとしている!?」
「この国の国王が約束を破ったんだ。それに抗議しに行くだけだが?」
「ちょっと待て、待ってくれ。それで入れるわけがないだろう?」
俺の言葉に門番は呆れたように返事を返す。しかし、街中での戦闘といい、もう穏便に済むレベルの話ではなくなっている。
「悪いが俺たちは押し通る。とりあえず寝ててくれ」
俺はそう言って俺たちを通さないように立ちふさがっていた門番を気絶させた。俺の一瞬の攻撃に気付かず、そのまま崩れ落ちる門番を見た警備兵達にもどよめきが走る。
「さっさとハシームやハラハンの所に行くぞ」
俺はそう言って皆を連れて王城の中に入っていく。それに慌てるのが、俺たちを見ていた警備兵たちだ。
「ちょ、待て!!」
「侵入者だ!!!」
俺たちに向かって口々に叫ぶ警備兵は何とも鬱陶しい。俺だけじゃなくウカやティアまでもが嫌そうな表情になる。
「こいつらをいちいち相手にしていたらキリがないな。リース、適当に蹴散らせるか? 相手を混乱させるんだ」
「分かったの!! 行ってくるの!!」
俺の指示に嬉しそうに返事をして警備兵たちの方向へと引き返していくリース。リースの動きを少し見てみると、警備兵の集団の中で消えたり現れたりとゴーストの特性を生かした動きをして、集団を上手く混乱させていた。
「適当に散らしたら戻って来いよ」
俺はリースにそう声をかけて先を急ぐ。俺たちがいざ王城の中に入ろうとすると今度は別の集団が俺たちに立ちふさがった。俺はその集団を見て呟く。
「今度はなんだ?」
「あれは……。近衛兵みたいですね。私たちの言った内容を完全に無視して抵抗してくるつもりのようです」
俺の呟きにウカがそう言って答える。確かに俺たちの邪魔はするなとハシームには伝えたはずだ。それに対してこんな形で向かって来るということは完全に俺の忠告を聞く気がない、と言うことであろう。
俺はそんな近衛兵の集団が近づいてくるのを見て、ため息を吐くのだった。
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