第3話 アデオナ王国の情報
「やあ」
王城についた俺は門番に軽く挨拶をする。門番も俺の扱いに慣れてきたのか、軽く声をかけて通してくれる。
そうして王城の中に入った俺はそのまま国王さんがいるであろう場所へと向かった。俺は扉の前に立ち、ノックする。
「入れ」
中からそう声がする。俺はその声に従って扉を開けた。
「リョウか」
国王さんは俺を見るやため息を吐きつつそう言った。
「おいおい。随分とご挨拶だな」
「リョウが来て何もないことがなかったからな」
俺の言葉に臆することなく国王さんはそう言い切る。
「そんなことはないだろう? ない、よな?」
俺はそう言って国王さんの隣にいた宰相さんに問いかけた。宰相さんは目を泳がせてから視線を逸らした。
「はぁ。まあいいや」
俺はその様子を見て諦めのため息を吐きつつそう言った。
「それで? どうしたんだ? 何も用事がなければお前はここにはこないだろう?」
国王さんは俺を見てそう聞いてきた。
「そうだな。アデオナ王国って知っているか?」
「そりゃ、知ってはいるが」
「今度そこに行くことにしてな―――」
俺はそう言ってアデオナ王国に行くことになった経緯を説明する。
「なるほど。それでアデオナ王国の情報が欲しいと?」
「そう言うことだ」
俺がそう言うと国王さんは少し考え込むような顔をして黙った。隣の宰相さんも難しい顔をしている。
「なんかあるのか?」
俺は二人の様子にそう尋ねる。
「逆だ。最低限の付き合いはあるが、それ以上のものはないのだ」
国王さんがそう答える。
「どんな国だとか地図とかわからないのか?」
「どんな国かは伝聞ではあるがわかる。地図はさすがにな。軍事機密だ。それ以前に私たちは持っていない」
「じゃあ、どんな国かだけでも教えてくれ」
俺がそう言うと国王さんと宰相さんの二人が目を合わせて頷いた。それから宰相さんは部屋を出て行く。何か取りに行ったのだろう。
「宰相が戻ってくるまで待っていてくれ。アデオナ王国関連の情報が書いてある過去の報告書を取りに行ってもらっている」
「そうか。わかった」
俺は国王さんにそう返事をして、手近にあった椅子に座る。
「そう言えば元デルマ侯爵領に送った騎士たちのことを教えてくれないか?」
俺が座ったのを見ていた国王さんがそう言った。
「ウォリック達のことか? それなら最近会ってないからよく知らないぞ?」
俺はそう答える。
「なぜだ?」
「そりゃ、途中から俺が動きずらくなってきて会わないようにしていたんだ」
俺がそう答えると国王さんはため息を吐いた。
「話がしたいなら後で連れてくるが?」
「頼めるか?」
「ああ」
国王さんの疲れたような頼みに、二つ返事で了承する。
「ついでに代官とその部下たちも連れて行ってもらえないか?」
「ん? いいぞ」
俺がそう返事をしたところで宰相さんが戻ってくる。手には書類の束が抱えられていた。
「アデオナ王国の情報をお持ちしました」
「ご苦労」
国王さんが報告書の束を受け取って、宰相さんを労う。そして報告書に目を通し始める。すると国王さんの顔色が少しずつ悪くなっていった。
「そんなに悪いことが書いてあるのか?」
俺は気になってそう尋ねた。
「古い方は前に読んでいるから知っていたんだがな。まだ読んでいなかった最新のものがあった。それでもまあ数か月前なんだが……」
そう言って国王さんが俺にその報告書を渡す。俺はそれを受け取って目を通す。
「こりゃ、ひでぇな」
俺はそう呟いた。内容が特にひどかった。
「圧政、差別、貴族たちが好き放題らしい」
国王さんはため息を吐きながらそう言った。
「よくこれで民衆が反乱しないな」
「している。その都度弾圧されているが」
俺の感想に国王さんが別の書類を見せた。なるほど。これは酷い。
「よくこんな国が今まで持っているな」
「あの国は鉱山資源が豊富でな。貴族が搾り取って他国に売っている。民衆は鉱山で働くか、農業をするか、だな」
「それにしてもここまでになるか?」
「実際なっているのだから仕方ない」
お互いあまりの酷さに言葉がなくなった。
「行くんだとしたら、気を付けて行くといい。あそこは行動しずらいと思うが」
国王さんが俺を見てそう言った。そこでアデオナ王国については一旦置いておくことにした。
「まあ、情報ありがとさん。とりあえずウォリックを迎えに行ってくるが、代官たちはすぐに来れるのか?」
「ちょっと待ってくれ。これから呼んでくる」
「わかった。待ってるよ」
俺はそう言って国王さんが宰相さんに指示を出すのを見守る。
まもなくして宰相さんが10人の人を連れてきた。
「あれ? エディ王子か?」
「そうだ。領地の経営を経験させておこうと思ってな」
「ふーん」
俺はそう言って王子の連れを見る。半分が護衛で残りは文官系の人たちだな。護衛の人たちはみんなが大きい荷物を持っていた。
「もういいのか?」
俺は王子にそう問いかける。
「はい。よろしくお願いするよ」
王子がそう言うのを聞き届けてから、俺はみんなを連れてその場を転移するのだった。
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