第23話 革命の問題点
俺の話を聞いたウカは俺に対して呆れた眼差しのままカナリーの方へ視線を戻し、声をかける。
「私たちは特に何かをしようとしているわけじゃないんです。でも、何も知らないのも問題だと思ってあなたから話を聞くためにリョウさんにあなたを連れてきてもらいました。だから安心してください。私たちからあなたたちを攻撃するつもりはありませんよ」
「それは本当ですか?」
「ええ、勿論。実際、私たちを監視してた鳥を操っていた子とかも殺していないですし、他の人もです。そうですよね?」
ウカは俺に確認するように話を振る。それに対して俺は頷いて返事を返した。
「ああ。襲ってきた相手にしても気絶させるだけにとどめておいた。今回は誰も殺していないな」
俺の言葉にカナリーはほっとしたような息を吐いた。俺たちが絡んできた貴族に対する対応を見ていたために不安もあったのだろう。そして何かを考えるようにしたカナリーは、やがて意を決したように目を開いてこちらを見る。
「わかりました。私が分かることなら答えます」
「それは助かります」
カナリーの決意のような宣言を聞いて、ウカも嬉しそうに微笑む。それからはウカ主導で話が進んで行った。
「ではいくつか質問させてください。まず、あなたたちはアデオナ王国の王家に対して攻撃しようとしているんですよね? それも革命のような手段で。とりあえず始まりの方を教えてもらえますか?」
「はい。そのために私たちも準備をしています。そしてそもそもの始まりは、この国の圧政ですね。重税もそうですし、貴族の理不尽な行いも目立ちます。それらの被害に合った人たちが集まったのがことの始まりです」
「なるほど。では、王家を倒した後はどのように国を運営するつもりでしたか?」
「それは……。具体的には決まってませんね。私たちで話し合って国を運営していくことになるとは思いますが……」
カナリーにも革命後の動きのイメージがついていなかったようで、ウカの質問にあいまいな言葉を返している。そして、それに対して俺たちの言葉が重なった。
「そこですね」
「そこだな」
「そこね」
そろった俺たちの指摘にカナリーが困ったような顔をする。何が問題か、それが分かっていない様子だ。俺はウカに一度視線を向け、ウカが頷いたのを見てから言葉を発した。
「まず、俺たちとしては革命を起こそうがテロを起こそうが、俺たちに何か影響を及ぼそうとしたり、弱い立場の人、この場合は一般市民か? まぁ、その辺が必要以上に死んだり被害を受けなかったら特に何かをするつもりはない。その前提で話を聞いてくれ」
「わ、分かりました」
俺が話始めると、カナリーは緊張した顔で返事を返す。それを確認した俺は話を続ける。
「とりあえず、お前たちはなんのためにその行動を起こそうとしているかだが、それはこの国の圧政を何とかしたい。そうだな?」
「はい」
「そのためには王家や勘違いしている貴族を何とかしないといけなくなった。そのための動きもしている。そこまではいい。だが現状、例え王家や貴族が何とかなってもその後のイメージができていないように感じた。違うか?」
「それは……、そうですね。具体的に何か決まっているわけじゃないですね。みんなが目の前のことでいっぱいいっぱいですし」
「俺たちが問題だと思っていることはそこだ。別に俺たちは、革命後に君主制になろうが、共和制になろうが、それこそ民主制になろうが気にするつもりはない。だけど、今のまま突っ走ると、この国を……、まぁ褒められたやり方は一切していないが運営している王家を倒して、その後のことに手が回るようになるとは思えない。可能性としては、上手く回せずに現状よりも酷い生活になる未来もあり得る」
「く、んしゅ? きょうわ? それと何故そんなことになると予想したか聞いてもいいですか?」
俺の説明の中で聞きなれない単語があったのか、カナリーは首をかしげていた。そして俺の予想に対して、純粋に疑問を持ったようだ。
「そうだな。分からなかった言葉は後で説明するが、俺の予想に対しては簡単だ。お前たちが何かしら動こうとすれば、賛同する奴は確かに多いだろう。それは貴族よりも虐げられている平民が多いからだ。しかし、貴族も自分がやられたらどうなるか、それが分かっていないほど馬鹿ではないはずだ。そうなると必死に抵抗もする。そうなったら立派に内戦状態だ」
「っ!?」
俺の言葉が伝わったのかカナリーは息を飲んで目を見開く。俺はそれに言葉を続けた。
「それに加えて、普段農作業しているような人たちが戦いなれているとは思わない。そうなると、例え勝てても戦後の被害は大きいはずだ。それに加えて内戦中は商人も巻き込まれるのを恐れて来る数も減る。そうなると補給も大変になるし、食料も足りなくなるだろうな。そして一番厄介なのが、他国が干渉してくる可能性だ」
「? なぜ、他の国が干渉しようとするのですか?」
「そりゃ、国が混乱している間に領土を取ろうとする国がいてもおかしくはないだろう。そうじゃなくても、何かしらの利益を得ようと動く国がいるはずだ。もともとあまりいい噂の聞かない国でもある。そうなると情報を集めようとして諜報員も入り込んでいるだろうし、内戦になればその情報は速く伝わるだろうな」
俺の説明にカナリーは衝撃を受けたような表情を浮かべて言葉を失っている。そんな様子を見た俺たちは、顔を見合わせてそろって溜息をつくのだった。
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