続・おバカな妹return´

「……」

 俺の目の前に居るのは佐藤真澄。俺の妹だ。真澄は物欲しそうに俺のシュークリームを眺めている。

 真澄のシュークリームはと言うと、つい先ほど自分で食べ終えたのだ。

 つまり、こいつは既にシュークリームを一つ食べているのだ。

 ジーッと俺のシュークリームを凝視する真澄。なんだか獲物を前にした猫のようだ。

「……真澄」

「何お兄ちゃん?」

「これを見ていろ」

 そう言って指先を真澄に向ける。真澄は素直に従い、その点をジッと見つめた。

 ゆっくり徐々に指先を上に持って行く。それに釣られて真澄の視線も上に行く。

 俺はその隙に開いた方の手でシュークリームを持ち、パクパクと食べ進める。

 その間、上に持って行った指を左右に振ったり。小刻みに振動させたりして、真澄の反応を楽しむ。

 食べ終えた俺は指をゆっくり下げていき、真澄もそれに合わせて視線をさげる。

「……あっちむいてほい」

 最後に適当に指を左に向けると、釣られて真澄は顔を指を同じ方向に向けてしまった。

「真澄の負けな」

「そんなバナナ」

 お前はいつの時代の人間だ。

「そろそろ寝ろ」

「あれ? シュークリームは?」

「消した」

 てか、食べた。お前が指で遊んでる内にな。

「お兄ちゃんはマジシャンだったのか……」

「……」

 マジな顔で言うこいつの将来が心配になった瞬間だった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る