それが彼女の答え
……結局昨日はちゃんと寝れなかった。由美さんのあの言葉がどうしても頭の中を過ぎってしまって、気になってしかたがなかった。
あれはいったい、どういう意味なんだろう?
取り方によっては色々と取れる言葉だったけど、あのタイミングでいうんだから、そういうことなんだろうか?
いくら鈍いと言われている俺でも、さすがにそれくらいは気づける。ということは由美さんは……。
う~ん。俺はどうしたいんだろう? 由美さんは好きだ。普通に可愛いし、守ってやりたいとも思う。それに由美さんは真澄の友達だし、これからも仲良くしたい。
一階のソファの上に寝転がりながら、顔を腕で覆って考える。
でもそれとこれとは話が違うんじゃないか? ようするに、俺が由美さんとそういう関係になりたいのかどうかなんじゃないか? 俺は由美さんを……本当の意味でどう思っているんだ?
友達か……それとも異性として好きなのか……。
「……わからないもんだな」
今までモテた経験もないし、人を好きになった経験もない。だからこの感情が、好意なのかそうでないのかがわからない。
由美さんことを、俺は大切にできるのだろうか?
体を起こして、凝り固まった腰や肩をほぐしながら立ち上がる。
大切にできるかと言われたら、できると思う。だがそれは……きっと彼女だけに限った話ではない。俺にとって一番大事なやつはすでに決まっている。俺はそいつのためなら何を置いても飛んでいけると思う。
そんなやつに……彼女と一緒にいる権利なんてあるのだろうか?
「いや……」
そうだな。そういうことだ。
気持ちが固まったところで、顔でも洗おうかと洗面所に向かおうと廊下に出ると、ばったりと二階から降りてくる由美さんとはちあう。お互い目が合ってから、気まずそうに視線を逸らした。
なんとなく足が止まって、お互い無言で立ちつくす。
昨日のことをどう切り出そうかと悩んでいると、由美さんが階段を下りてきた。そして俺の前までくると、少し俯きながら「昨日のことだけど」と話し始めた。
「……うん」
「あれ、深い意味はないからね?」
「……えっ?」
そうなの?
予想外なことだったので驚いたが、由美さんは笑いながら続けた。
「それにあれ、私じゃなくて、真澄ちゃんのことだから」
「……そっか」
真澄なら確かに、俺のことをよく見ているし、いつも目の前にいる。言われて納得もできる。だけど……どうして……。
「先に洗面所使っていい?」
「うん」
「ありがと」
道を開けて由美さんを通す。表情は笑っていたけど、なんだからその笑顔が、俺の気持ちを不安にさせるのだった。
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