宿題をしよう

「じゃあ真澄。俺たちは部屋でやるから、何かあったら呼べよ?」

 俺と鈴木は、二階にある俺の部屋に向かおうと階段に足をかけたが、真澄がきょとんとした顔で俺を見た。

「一緒にやらないの?」

 また俺をあの地獄に放り込む気か妹よ? ほら、隣の田中さんから殺すぞオーラがギンギンに立ってるじゃん。

「いや俺らは――」

「何々? 妹ちゃん、お兄ちゃん俺に取られて寂しいのかい?」

 鈴木の茶々に真澄は「それは当たり前だ」と胸を張った。なんて可愛らしいことを言うんだこいつは、隣に田中さんが居なかったら今すぐに頭を撫でに行くところだぞ。

「う~んじゃあ仕方ないな~。今回は一緒の部屋でやろうぜ、つづりん」

 妹に気を利かせてくれる鈴木は優しくて助かるのだが、これはそう言った次元の話ではないんだ。というか二人とも気付け、さっきから田中さんが何も言わずにただひたすら俺のことを笑いながら睨んでいるのを!

 どうする。面倒事はごめんだ。だが妹を悲しませたくはない。何か最善の手はないだろうか?

「………………まあいいよ」

 考えるのが面倒になった。

 もういいよ。多分大丈夫だよ。だって大学生と高校生じゃそもそも範囲が違うからそんな話すことないだろうし。それに俺らはリビングの方でやればいいだろうし。

 ふと田中さんの方を見ている。そこには、冷たい笑顔を張り付けて、口だけを動かして俺に何かを訴えていた。

「(いつか死なす)」

 もう。どうでもいいよ。

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