これはラブコメなんだよ……

 それから何時間か、綴君が作ったコースを遊んだり、他の人が作ったコースを代わる代わる遊んだりしたら、いつのまにか外が暗くなっていた。


「あ、もうこんな時間なんだ。そろそろ私」

「ああ、うん。そうだね。親御さん心配するよね」

「さすがにこの歳で、そこまで心配されることはないと思うけど……」


 苦笑いしつつも、綴君が私のことを心配してくれることが嬉しかった。頬が少しだけ熱くなる。


「今日は楽しかったよ。一人なのに、何やったいいのかわかんなかったから。由美さんが来てくれて嬉しかった」

「そ、そう!? それなら……よかった」


 そんなこと言ってくれるなんて。勝手に押しかけて迷惑じゃないかなって思ってたんだけど、大丈夫だったみたい。

 綴君はゲームの電源を落として、直ぐに片付けられるように作業を進めている。私は手提げのバックを手に取る。その時に、ふと思ってしまう。


 なんか……。


「帰りたくないな」

「えっ?」

「……えっ?」


 綴君が、普段よりも少しだけ、目を見開いたような表情をする。

 あれ、私今……声に出してた?


 顔が急激に熱くなるのを感じた。恥ずかしさのあまり顔を覆う。


「ごめん! なんか変なこと言っちゃって! 直ぐ帰るから!」


 慌てて立ち上がって、逃げるように帰ろうとした時に、手を握られて止められる。


「つ……綴君?」

「あっと……ごめん」


 手を離して、バツが悪そうに頭の後ろを掻く綴君。少しだけ、頬が赤い。


「ご飯、食べてかない? 一人だと寂しくって」


 私に気を使ってくれたのだろう。私はその優しさが嬉しくて、だけど申し訳なくて。断ろうとした。ただその時、インターフォンが鳴る。

 ビックリして、二人でカメラを確認すると、そこにはコンビニ袋を見せびらかす鈴木君がいた。

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