心中お察しします

 綴君がそういう反応するのは、うん、わかってたよ。綴君はラブコメ的展開が普通だもんね。普通の恋愛漫画のようにはいかないんだよね。


 考えててなんだか悲しくなってきた。そこまで私は異性として認識されてないのだろうか。


 乾いた笑みを浮かべていたら、「大丈夫?」と心配そうに私の顔を覗きこんできた。

 こうやって人のことはよく見ているくせに、感情には鈍感なんだよな~。


「大丈夫。それより、何かする? 綴君ゲームが好きでしょ? 何かやろうよ」

「そうだな。そうするか」


 事前にいくつか情報を集め、鈴木君に裏を取ってもらって買ったゲームソフトの成果が、ようやく日の目を見るときがきたのか。綴君の好みに合わせたこれなら、問題なく遊べる!


「大乱闘は?」

「そういえば、真澄がよくやってたな」

「それともモンハン?」

「真澄に無理矢理買わされたっけな」

「……レースゲーム」

「真澄これ上手いんだよ」


 全部真澄ちゃんだよ!!


 甘かった! 考えが甘かったよ私! 綴君がよく話すからって、それを綴君が好きとは限らないもんね! てか鈴木君これ知ってたんじゃない? もし知ってて面白がってたら殴ってやる!


 あまりのシスコンっぶりに、もはや呆れることしかできなかった。


「えっと……どうする?」

「由美さんは何がいい?」

「私? 私は……」


 綴君がよくやるっていうゲームしか知らないし、あんまり得意じゃないんだけど。

 数あるゲームソフトの中から、私は目の引いたのを選ぶ。ぼう配管工のおじさんが、黄色いメット帽を被っているパッケージのやつだ。


「これとか?」

「お! やろうやろう! これステージ作るの楽しいんだよな~」


 普段表情が変わらない綴君にしては珍しく、テンションがかなり上がっているようだった。


「前まで俺が作ったコースを真澄に遊んで貰ってたんだけど、いつしかやらなくなっちゃってさ。そっからあんまり作ってないんだ」

「そうなんだ……よし! やろう!」


 そういうことなら、今日は私がとことんまで付き合ってあげよう! けして真澄ちゃんと遊んでない作品だからとかじゃないからね!?

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