とりあえず
「えっと……真澄ちゃん?」
「親友になればちーちゃんみたいに来てくれるでしょ?」
「だからそれはその子だけだから。私はそんなことできないからね?」
どうしよう。話がややこしい方向に進んできちゃった……。進んだ先に死地が待っている感じしかしないけど、というか既に殺されそうな雰囲気が隣のお友達から発生されてるけど……そもそもあの子本当に誰なの?
「あのね、真澄ちゃん。たぶん色々勘違いしてるような気がするんだけど、親友の定義ってそうじゃないと思うよ?」
真澄ちゃんは頭を傾げて、ちーちゃんに「そうなの?」と尋ねる。
「親友というのは常傍にいる愛する者のことです。なので間違ってません」
「ごめんちょっと黙っててくれる!?」
たぶんこの子の偏った友達知識はこのお友達から植え付けられたもの。なら私が、正しい知識を教えてあげれば、こんなことが間違っていることがわかるはず。
「あのね真澄ちゃん。友達っていうのは……」
私が話し始めたその時、ちーちゃんと呼ばれるお友達は真澄ちゃんの後ろに回って、静かに真澄ちゃんの耳を塞いでいた。
「……」
「………~~」
何か呟いたように聞こえた。何?
「余計なことすんなよ?」
「…………」
そしてちーちゃんは静かに真澄ちゃんの耳から手を退かす。
「どうしたのちーちゃん?」
「なんでもありませんわ♡ それより……お話しの続きでも……」
もしも私が違うことを言えば殺される。でも真澄ちゃんのことを思うのなら、ちゃんと正しく伝えてあげるべき。大丈夫、そう簡単に人を殺せる人なんていないんだから、大丈夫なは……ず……。
彼女の手元がチラついた。何かが店の照明に反射して光ったのだ。彼女が手に持っている、果物ナイフが。
「由美ちゃん?」
「……とりあえず友達から始めよっか!!」
ごめんなさい綴君。私は弱い人間です。
~~~
結局あの後、真澄ちゃんとアドレスを交換して、真澄ちゃんはショートケーキを買って帰った。ただ帰り際のあの友達の眼光を思い出すと、ちょっと竦んでしまう。
部屋に戻り、ベットに体を預けて、スマフォのアドレス帳に新規に追加された、佐藤真澄の文字に溜め息が出た。
「はぁ~」
あんな子と付き合ってて、真澄ちゃんは大丈夫なのかな? 綴君はどう思ってるんだろう……割りと放任主義なのかな……? というか私、なんで友達の妹さんのことでこんなに悩んでるの?
いや、確かに好き人の妹さんだから気になるけど……私がそこまでしてあげる義理はないというか……。
その時、手元もスマフォがブブブッ! っと震えた。
綴君からのライン!?
起き上ってラインを開く。
『真澄から色々と話聞いた。迷惑かけてごめん。俺の方から謝まる。
ケーキ美味しかったです。また買いにいくね』
「……」
よし。絶対真澄ちゃんは、まともな道に連れ出して見せる!
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