兄妹、休日の朝

 あ……暑い……暑すぎる。背中が暑い。暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い。


「暑い……」


 夏休みもあと僅かに迫る今日。たまの休日ということもあり、早く起きず惰眠を貪っている最中なのだが、あまりの暑さに目が覚めた。

 扇風機の羽根の音がする中、この暑さは異常だった。特に背中。背中が熱い。

 背中に感じる異様な暑さに振り向こうとしたが、腰をがっちりつかまれて身動きが取れないことに気付く。

 腰を見るとそこには腕が。首を回して背後を見ると、こんなクソ暑いのに真澄が俺の背中に抱きついていた。


「ん……んん……」


 かなり汗をかいて寝苦しそうなのに、表情は意外にも幸せそうだ。背中の熱の正体はこいつだったか。

 このまま寝かせて置いてやりたい気持ちにもなくはないが、どうしてこいつがここにいるのかと問いただしたい。


 なのでこいつの顔をぺちぺちと叩いてやろうかと思ったのだが、本当に気持ちよさそうなので、叩くのが躊躇われる。ただ起こさない訳にもいかないので、こいつの鼻を摘まんでやった。


「……ふがっ」

「……」

「ん……ごっ……」

「…………」手を離す。

「…………すぅ」

「……」鼻を摘まむ。

「がっ……んん……」


 真澄は薄く目を開けた。なので鼻を離してやる。


「お兄ちゃん。おはよう」

「おはよう。そして腕を離せ」

「えっ? というかなんでお兄ちゃんが私の部屋に? もしかして……夜這い?」

「すでに朝だ。そしてここは俺の部屋だ」

「じゃあ……夜這いしに来ました」


 それはそれで問題だぞ。


「暑いんだからまず離せ。そして朝飯作るぞ」


 強引に腕を取っ払い、ベットから降りる。


「う~。ベーコン」譫言にように呟いてベットに倒れ込む真澄。

「はいはい。先に行ってるからな」

「お兄ちゃん抱っこ」

「甘えてないでさっさとしろ。今日は布団干すぞ」

「うい~」


 さて、ベーコンだったか。たしかブロックはあったと思うけど、使いたくないからウィンナーでいいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る