修学旅行シーズン

「お兄ちゃん。私明日から修学旅行に行ってまいります」

「ああ、うん聞いてる」


 というかそれ、つい昨日も聞いたんだけど。


 二年生に上がった真澄に待っていたのは、春先に行う親交を深めるための修学旅行。二年生の後半は受験シーズンになってしまう人も多いので、学校としてもこの時期にやってしまおうという魂胆なのだろう。

 俺も高校二年生の時は、広島に修学旅行に行ったものだ。なつかしいな。


「真澄はどこにいくんだっけか?」


 そういえば、行く行くとは聞いていたのだが、どこにとは聞いていなかった。真澄は俺と同じ高校に通っているので、行くところはやっぱり広島なのだろうか?


「北海道!」

「北海道!?」


 まさかの北日本!

 こころなしかうきうきとしているように真澄。北海道には行ったことがないので、かなり楽しみにしているのだろう。しかし北海道か……ちょっと羨ましいな。


「まあ楽しんで来いよ。お土産もよろしくな」

「北海道って、どんなお土産があるかな?」

「ん? さあ……なんだろうな?」


 俺の行ったことないからわかないし。


「でも五日間もお兄ちゃんと離れるのは寂しい」

「なに子供みたいなこと言ってるんだよ」

「お兄ちゃんも一緒に来ようそうしよう」

「どこに俺が行く金があるというのか」


 真澄の修学旅行費だって親父がだしたんだぞ。

 それでもふて腐れたように頬を膨らましている真澄に(表情が変わらないとシュールだな)、俺は頭を撫でてやる。


「別に俺がいなくなる訳じゃないんだから」

「うん。寂しくなったら電話する」

「ほどほどにな」


 兄離れの出来ていない妹に、少々困ったものだと思いながらも、慕われているのに悪い気はしなかった。

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