気だるい兄β

「お兄ちゃん。何やってるの?」

「…………光合成」

 リビングで大の字になって寝転がっている俺を見下ろしながら、妹の真澄は何かを考えている。

「……緑になるの?」

「緑にはならない。そもそも光合成が必要なのは植物だけじゃない。人間にだって光合成は必要なんだ。色んな意味で」

 俺の言っていることは全くの出鱈目。そもそも光合成をするための細胞が備わってないし、人間が太陽の光を浴びるだけならたんなる日向ぼっこだ。

 真澄は何かを考え付いたのか、俺の腕を枕に横になった。

「……」

「……真澄?」

「私はここに根をはります」

 どうやら気に入ったらしい。だが残念なことに、腕が痺れてくるからここに根をはられると俺が困る。

 腕をずらそうとすると、真澄がガッシリとホールドして離さない。

「真澄……それは痛い」

「お兄ちゃん。それは酷い」

 酷いことをされているのは俺の方だと思うのだが。

「真澄……腕が痺れてきた」

 そう言うと、真澄はさらに頭に体重を乗せる。俺は何は癇に障るようなことでもしたのだろうか?

 諦めて腕の力を弱める。するよ真澄も手の力を弱めた。一瞬の隙をついて腕を引き抜くと、ガン! と真澄は頭を打つ。

 視線が痛い。

「……正直すまんかった」

 その日の食事当番は変わってやった。

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