お祭りデート
台風のように阿子が去ってから、真澄の機嫌がよろしくない。
普段だったら出さないような不機嫌オーラを全開にされ、会話も素っ気ない。
だというのに、やっぱり腕は離そうとはしなかった。いまだにギュッと抱きついたままで、先程購入したリンゴ飴を食べている。
「真澄。焼きそばもあるんだけど……?」
「……だから? リンゴ飴食べたかっただけだし」
いい加減手に持った焼きそばをどうにかしたいのだが、真澄が腕を離さず引っ張るので、落ち着ける場所にすらいけない。
「真澄~。いい加減お腹空いたんだけど……」
「私はお腹空いてないです」
そりゃあリンゴ飴食べてますものね。
「俺は何も食べてないんですけど」
「じゃあ何か食べれじゃいいじゃない」
「いや、だから焼きそば……」
「駄目。まだ駄目だから」
どうしてそんなに頑ななのかわからないが、焼きそばはまだ駄目らしい。
「じゃあ手持ちで食べれるものが」
「はい」
屋台を見ていたら、顔の前の食べかけのリンゴ飴が出てきた。
「あ~ん」
「……真澄。俺はそこまでリンゴ飴は」
「あ~ん……」
有無を言わさず押し付けてくる。
正直そこまで好きなものではないが、いたしかたなし。
リンゴ飴にかぶり付く。甘くフルーティな味わいが口の中に広がり、いや甘すぎだろと心の中でツッコんだ。こういうのを食べると、しょっぱいものが欲しくなる。手に持ってる焼きそばを早く食べたい。
「美味しい?」
「うん……まあまあだな」
「え~。お兄ちゃんはこの味の良さがわからないのか。ダメダメだね」
「わるかったな」
しかし。言葉とは裏腹に、真澄の機嫌が直っている。
本当に意味がわからないが、不機嫌じゃないだけましだろう。こういう時は、あまり険悪にはなりたくないものな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます