久し振りの大学
夏休みが終わり、俺達大学生もようやく講義が再開する。しかし休み開けということもあり、真面目に来ている学生はそこまで多くなかった。いつもはそれなりに埋まる座席が、前の時間も、その前の時間も多くの空席を残している。
まあ休み開けなんてこんなもんか。みんな生活習慣乱れてるんだろうな。
後ろの方の座席に鞄を置いて、講義の準備をする。
俺は普段から家事をする関係上、朝は早めに起きて夜はそれなりに早く眠るので、休みとはいえ昼過ぎまで寝てるということが存在しない。自分で言うのもなんだが、なかなか優秀な方だと思っている。
とはいえ、眠くなるものはなるんだけどな。
夏休みの間についてしまった習慣が一つあり、それは昼寝だった。
朝に掃除洗濯を済ませ、朝ご飯を食べてまったりしていると、いつのまにかソファに横になって眠っている。そんな日々を何日か過ごしていると、いつの間にかその時間になると眠くなってしまう。
それが丁度2時~3時の間。絶賛この時間だ。
ねっみ……気を抜いたらすぐに夢の中にダイブしそうだ。講義が始まるまでまだ少し時間がある。この時間は出席確認がないから別に寝てしまっても問題はないんだけど、そのぶん課題があるから講義はちゃんと聞かないといけない。
とはいえ眠い。どうしたもんかな……。
今日は、普段なら持ち歩いているボイスレコーダーを忘れてしまった。先生の説明を録音して聞き直すことができないので、起きないといけない。
「綴君、隣いいかな?」
「……」
「綴君? 起きてる~?」
目の前で手をひらひらとされて、漸く誰かが隣に来ていることに気が付いた。顔を上げると、同じ講義を受けている由美さんが立っていた。
「ああ、由美さん」
「なんか眠そうだけど、大丈夫?」
「ああ、うん。いつもだったらこの時間昼寝してるから」
「まだ夏休み気分が抜けないんだね」
「そんなところ」
しかし、俺はこんななのに由美さんは普段通りとなんら変わりがない。休み開けだというのに凄いな。
「眠いなら寝ちゃえば?」
由美さんがそう提案してくれるが、「いや、ボイスレコーダー忘れちゃって」と寝れない理由を伝える。
「私がノート取ってあげるから。大丈夫だよ」
「でも……それはなんだかもし訳が」
「別にいいよそれくらい。次からちゃんと起きてくれれば」
甘えてしまいたいという欲求と、それはいけないという理性が拮抗している。どうしよう。でも眠いな……。
欲求の方が勝り始め思考が疎かになって行く中、「まあ、納得しないっているなら……」と由美さんの話しが続く。
「一つお願い聞いてくれてもいい?」
「ん?」
由美さんは頬を赤らめさせ、視線を泳がせる。
「こないだの続きといいますか。二人で出かけたいかな。なんて」
「……ん。わかった」
「えっ?」
あかん……もう無理。
二つ返事をしてしまい、欠伸をする。机に突っ伏して瞼を下ろす。
「じゃあ。二人だけで、どっか行こう」
「ん。そうだね」
それがデートの約束だったということも理解しないまま、そうしていつの間にか、俺は夢の中に落ちて行った。
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