帰るまでが修学旅行です

 ふう。ようやく北海道から戻ってきましたね~。


 空港を出てそのまま現地解散となり、真澄と共に最寄りの駅まで一緒に帰ってきた私ですが、現在一人で駅前にいます。

 時間が15時過ぎということもあり、お茶でもと誘いましたがあえなく撃沈。真澄は綴さんに会いたいがために、そそくさと家に帰って行きました。さすがにそこまで付いて行くのは邪道だと気を使って、この度は引かせて頂きましたが。次はないですよ綴さん!


「それにしても、この後どうしましょうか?」


 修学旅行の荷物は北海道から自宅に発送してしまったので、現在は最低限の荷物だけしか持っていない状態です。このままどこかに遊びに行っても、なんら問題ないのですが、一緒に回るお相手がいないと、どうも寂しいですね。ですが今から誰かをこっちに連れてくるのは難しいですし……。


 そんなことを悩んでいると「あれ? 田中さん?」と、私に声をかけて来る人がいました。振り返って見た私は、彼の顔を見た瞬間に目から生気が零れ落ちたみたいに無心になったのです。


「いや~偶然だね~。そっか、今日修学旅行から帰って来たんだ。どうだった北海道? やっぱり春過ぎでも寒いの?」

「……何か御用ですか? えっと……海水魚さん」

「間違ってないけど、友人の妹の友達にもその認識でいられるのはちょっと嫌なんだが……」

「では両側回遊魚りょうそくかいゆうぎょさんとお呼びしましょうか?」

「それは魚のあゆであって、俺のあゆは歩くの歩だからね? ていうか、両側回遊魚なんてよく知ってたね」

「こう見えても博識なんですよ、私。それよりも何か用ですか?」


 彼、綴さんの友人にして、なんだかいけ好かない奴。鈴木歩さんは、澄ました顔で「特に用事はないよ?」と笑うので、心の底からイラッとしました。

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