田中さんと鈴木

「用事が無いのなら帰ってはどうですか? 私に構わずに、帰っては?」

「なんだか言葉の節々に棘を感じるんだけど、用が無くても今帰る必要はないでしょ? それに一度、田中さんとは話して見たいって思ってたから?」

「気持ち悪いので止めてください。お願いします」

「俺、なんでここまで嫌われてるのかわからないんだけど……」


 まあその点に関して言えば、私もなんでここまでいけ好かないのかはわからない。ただ何となく、生理的に受けつけないのだ。

 顔はいい、顔はいいんだけど……なんでだろう? 何がこんなに受けつけないのだろう。


 ふと考えて視線を下に向けたところ、鈴木さんの手にレジ袋が握られていた。それは駅前いあるゲーム屋さんのロゴの入ったレジ袋だ。


「お買いものだったんですね」

「ああこれ? うん、新作のゲームが出てさ~」


 そう言いながら、レジ袋の中身を見せてくる鈴木さん。ゲームはあまり好んではやらないが、真澄が結構好きなので嗜む程度にはやり始めた。なので偏見がある訳ではないのだが、鈴木さんが取りだしたパッケージを見て、気持ち悪さに身を引いてしまった。


「パステルカラーズ ~虹色の花嫁~。今作はかなり泣けるって話だったから、急いで買ってきちゃったよ」

「……それは、なんですか?」

「何って、パステルカラーズ?」

「そうではなくて……」

「ああ、ジャンルの話し。恋愛シュミレーションゲームだよ。仮想の女の子とイチャイチャするゲーム」

「それは見ればわかります。そうではなくて、それ……18禁ですよね?」

「うん。それが?」


 ああ、そういうことか。なんで私がこの人のことを生理的に受けつけないのかが、今理解できた。

 こういうところが無理なんだ!

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