新たな趣味が目覚めた

「あ、もしかして興味あるの?」

「ないです」

「でもさすがにR-18は貸せないから」

「ですから興味ないです」

「こっちの全年齢版に貸してあげるよ」

「私の話を聞いてください!」


 鈴木さんは、まるで私が突然怒鳴ったかのように驚くので、私が悪いような気持ちにさせられた。それが無性に腹が立つ。


「もしかしてハードがないの?」

「そうではないです。持ってはいます。でもそのゲームがしたくないだけです」

「これ凄い名作なんだよ~。まあ騙されたと思ってやってみなよ」

「ちょ!」


 強引に手渡されるので突っ返そうとするとが、鈴木さんはいい笑顔でそそくさと帰り始めました。


「あっ、帰すのはいつでもいいから。それ布教用だし、ぶっちゃけ貰っちゃってもいいよ?」

「ふざけないでください! ちょっと鈴木さん!?」

「俺も早く帰ってゲームしたいから、じゃあまた」

「待ちなさいよ!」


 速足のレベルでない速度で歩く鈴木さんは、本当に一瞬の内に姿が見えなくなってしまった。手に取った手前、捨てたり壊したりするのは気が引けるので、結局そのゲームは持ち帰った。


 ~~~


 家に戻り、いかにして早急に返すかを考えた。だが私はあの人の連絡先を知っている訳でもないし、わざわざ会うために綴さんを訪ねるのも嫌ですし……真澄に合うのはいいんですけど。どうしたものでしょう?


 パッケージを見ながら苦い顔になる。ただよく確認すると、メインになっている女の子が可愛いことに気付いた。


「……」


 一度だけ……やってみるか。気まぐれで、そう気まぐれでやるだけ……別にあの人の口車に乗る訳じゃ無い!

 psvを起動して、ソフトを入れる。ポップなOPが流れ、タイトルロゴが浮かぶ。


「ちょっとやって、すぐやめる。うん」


 自分にそう言い聞かせてから、ゲームを始めた。


 ~~~


「由利ちゃん……まさか……こんなことって」


 色々な詳細は省くが、その日私は初めて、ゲームで泣いた。

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