高橋君って……

 試合が始まって10分ちょっと。A組はそこそこリードしていた。ただ気を抜けば、すぐに追い抜かれてしまうような点差ではあるので、頑張んないといけないと思う。

 もしも本当に、試合に勝つつもりならね。


「真澄」

「ん?」

「男子のほうなんか見てどうしたんですか? 何か気になります?」

「ん~まあね~」


 気になっているのは、高橋君が言ってた試合に勝ったら話があるってことだけど。


「もしや! 綴さん以外に気になる殿方ができたんですか?」

「なんでそこでお兄ちゃん?」

「真澄は綴さん以外の男性とは、あまり話さないでしょ?」

「それもそうか」


 そう思うと。高橋君と喋ったのは珍しいのか。でもそれならなんで、高橋君は私に話しかけてくれたんだろう?


「それで……誰ですの?」

「ちーちゃん近いよ。まあ気になってるのは、高橋君かな」

「高橋? ああ、あの高橋弘樹たかはしひろきさんですね。綴さんに勝るとも劣らない優男で、何気に人気の高い高橋くんですね」

「そうなんだ」


 弘樹っていうんだあの人。言われてみれば確かに優しい。初めて話すはずの私に、飲み物くれたし。きっと他の人にもそうなんだろうな。


「もしかしなくとも、その飲み物は高橋さんが?」

「ああ、うん。なんかくれた」

「優しい顔して肉食獣なんですねあのクソ――いえ、優男は」

「え?」

「なんでもありませんわ♡」


 肉食獣ってなんのことだろう?


「それで、なんで高橋さんなのですか? そもそも何が気になって……」

「それは……」


 そう言えば、ちーちゃんは連れて来るなって言ってたし、知られて欲しくないのかな? それなら、ちーちゃんには悪いけど。


「秘密かな?」

「真澄のその表情が可愛すぎますわ!」

「そう? ありがと」


 笑った気はなかったんだけどね。


「試合終了!」


 男子の試合も終わり。A組の勝利で幕を閉じた。試合が終わった後の高橋君と目があったが、何故か視線を逸らされてしまった。

 なんか……よくわかんないな。

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