妹の友人X

「真澄~。私の真澄~。すーはー」

 ここまで聞こえる息遣いってなんだろうね? 正直怖いんだけど。

智恵ちえちゃんくすぐったいよ~」

「本当にいい匂いしますわよね真澄は、これで芳香剤を作りたいですわ」

 あいつの臭いが部屋中に……嫌だな。まあ、変な匂いではないと思うけど嫌だな。

「取りあえず上がってよ。今お兄ちゃんもいるけど、気にしないで~」

「私は真澄以外見えないから大丈夫です♡」

 眼下行った方がいいと思うな、それ。

「お兄ちゃん。友達」

 真澄がリビングに入って来るので、顔だけ入口に向ける。そこに立っていたのは、育ちのよさそうなお嬢さんだった。

 服装は制服だったが、真澄にないオーラのお陰か凄く綺麗に見える。

 さすがに挨拶するのに寝たまんまってのもあれだったので、取りあえず立ち上がる。

「初めまして。真澄の兄の―――」

佐藤綴さとうつづりさんですよね。真澄からよく窺っています。優しいお兄さんだと。(死ねばいいのに)」

 最後の方に何か言われた気がするけど、まあいいか。

「申し遅れました。私は真澄の田中智恵たなかちえと申します」

 ご丁寧に頭を下げてくれたので、こちらも頭を下げる。

「いつも真澄がお世話になっています」

「はい、お世話しています。お兄さん以上にお世話してます!」

 何のはり合い?

「……真澄。邪魔そうなら俺は上に行くけど?」

 なんだかここにいるのが居た堪れなくなった俺は、真澄そう提案するも、「え~。大丈夫だよ~」と逃がしてはくれなかった。

「(チッ)」

 なんだか田中さんから舌打ちが聞こえた気がしたけど、気のせいだよね?

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