妹の友人Y
「はい真澄。今日作ったクッキーを持ってきましたわ♡」
「お~。ありがとうね~」
「真澄。美味しいですか?」
「ん~。めっちゃ美味い」
「本当ですか! それじゃあ毎日作ってきますね♡」
こいつら勉強しに来たんじゃなかったか?
ソファに寝転びながら、テーブルに並んで座っている二人を見やる。テーブルに教材が置かれてはいるが、今はそれより手前にあるクッキーの入ったバスケットに夢中のようだ。
「智恵ちゃんはいいお嫁さんになるよね~」
「もう真澄ったら♡ もうあなたのお嫁さんですよ♡」
目で分かるくらいハートが飛び交っている。おもに田中さんから。これで普通と言うのだから、真澄の感性はわからない。
「でもそろそろ勉強しようか」
「はい。初めての共同作業ですね。そのまま保険体育の実技に突入してもいいんですからね?」
「保体? ごめん、教科書学校なんだ~。また今度学校で勉強しよ?」
「がががっ! 学校でなんて! ま……真澄ったら大胆ですわ♡ でもそんなところもす・て・き♡」
会話が噛み合っていないと思うのは俺だけだろうか?
「あ、ここの公式何使うんだっけ?」
「そこはこうやって、こうして、こうです♡」
無駄に胸を真澄に押し付けて教えている。なんだろう、意味ないようにしか思えない。
「いや~数学だけはどうしても肌に合わなくてね~」
「真澄はそれ以外だと100点ですからね♡」
家の妹は何故かハイスペックだった。え? 100点? あいつそんなに成績よかったのか? 人はみかけによらないな。
「そうなんだよね~。あ、ここも何かな?」
「あ、これは……え~っと」
どうやら二人して分からない部分があるらしい。うんうん唸ってる田中さんを横目に、真澄は俺を見た。アイコンタクトで「わかる?」と言ってきたので、渋々真澄の後ろから問題を覗く。
「これはこの公式を代用すればいいよ。それで解ける」
「さすがお兄ちゃん。ありがとね」
「これくらいならな」
そう言って頭にポンと手を置くと、隣から背景に嫉妬の炎が見えるくらい燃え上がらせた田中さんが、連続で舌打ちをしながら俺を睨んでいた。
すみません。軽率な行動をとりました。
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