妹の友人Z

「真澄、ここはなんですの?」

「ああ~これ? えっとね~、レ点でこうなるじゃん、そしたら……」

「なるほど……さすが真澄ですね♡」

 先程のことにより勉強は数学から国語に移動した。あの後の田中さんの人を殺しそうなオーラに耐え、俺はソファに体を埋めていた。

「真澄。次は現代文で分からないのがあるのですが、まずこれを読んでもらえますか?」

「これ? え~っと……あ! 駄目! そこは!」

 唐突に始まった朗読。なんだか出だしから不穏でしかない。

「へっへっへっ。諦めな嬢ちゃん、泣いたって助けはこないぜ」

 最近の教材はなかなか過激な描写をするんだな。ただ真澄の棒読みで全く頭に情景が浮かんでこないが。

「いや! 駄目! おねがい! ……私は体をくねらせ抵抗するも、男はその太く鍛えられた腕で私の体を押さえつけた。そして下卑た笑みを向けながら、ブラウスのボタンを一気に全て引きちぎる」

 いや、それは酷いのでは? てかまて。これ本当に教材でやるような内容か?

「良いからだしてるじゃねぇ~か。それになんだ? 興奮して立ってるぞ?

 駄目! あっ! 男は私のブラの中の」

「ストーップ!」

 叫んだと同時に立ちあがったが、軽い貧血で倒れかけた。久々に叫ぶからこんなことに。

「まて真澄。それは現代文の教科書でやっていいような内容じゃない。具体的には、青年誌向けの本だ」

「そうなの?」

 真澄の問いに田中さんは笑顔でいるが、オーラが完全に真っ黒だ。しかし、真澄になんてものを読ませてるんだこの変態は。

「そんなことはありませんけど、お義兄さんの前で読むようなものでは無かったですわね」

 今不穏な呼ばれ方をされた気がする。具体的には、兄が義兄だったようなそんな感じ。

「ふ~ん。まあお兄ちゃんも読んで欲しくないみたいだし、現代文はこれくらいにしょうか」

「はい!(あの野郎余計なことしやがって!)」

 小声で何か呟いたように見えたが、追求するは恐いのでやめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る