綴君とデート
まさか自分から、彼をデートに誘うなんて思ってもみなかった。
入場券を財布の中にしまい、小学校以来なかなか来ることのなかった水族館の中に入って行く。暗く光度調節された室内に水族館特有の水の香りが漂っている。
彼の隣を歩くというだけで、きっと気が気じゃないのかと自分でも思っていた。けれど実際はそこまで緊張していない。むしろ至って平穏というか、嬉しい以上の安心感のような物が自分の中にあった。
不思議な気持ち。まえは気持ちがバレないようにしないといけないと思ってたけど、今は自分から積極的にアピールしてる。自分の気持ちを、少なからず伝えることができたから、気持ちが開き直ってるのかな。
自覚することで、整理をつけているのかもしれない。これなら私は、たぶん綴君に告白まで出来る気がする。それだけ落ち着いていた。
けれどそれは出来ない。彼には最愛の妹がいる。そして私は彼女に、彼女の許可なく自分からは決して告白はしないと約束している。もし綴君から告白をされたら、たぶんその限りじゃないとは思うけど、少なからず私からはありえない。
そのことに、少しだけ胸につかえを感じてしまう。もどかしいと思ってしまう。
だけれどそれなら、私は私のことを、もっと綴君に知ってもらう。そしてそれを踏まえた上で、私自身を選んでもらう。
今日は、そのためにここに連れて来たんだから。
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